5話「愛する彼が打ち明けた最低最悪」
家に帰宅した私は、家族との幸せな一時を過ごしていた。
「なんか今日はいつにも増して幸せそうだな!!それに!そのメイド服どうしたんだ?」
父親がいつもよりも上機嫌な私に喜んでいる。
見慣れないメイド服を着ている私に疑問を抱いているようだ。
「確かに、いつにも増して生き生きしてる感じがするわね!それにそのメイド服。なにか良いことでもあった?」
母も父に便乗する形で喜んでいる。
「いや~!!別に~。ふ~ん♪ふふ~ん♪」
私は、鼻唄を歌いながら反応する。
それもそのはず、今日は愛する彼からはじめてプレゼントを貰い、愛してるの言葉も言えたからだ。
そして、彼と罪悪感を共有した事で絆が深まった気がして、幸福だと思った。
罪すらも彼との愛の形な事が嬉しかった。
だから、いつにも増して上機嫌だ。
そうして、家族との幸せな一時を過ごしている。
すると突然、男性の声が聞こえてくる。
「ランス様とそのお連れの者が直々にまいったぞ~!!!皆の者集まれ~」
町民である私達に召集をかけるその声。
「ラ…ランス様が一体こんな時間に何事だろうな」
「そ、そうね!!何事かしら。いつもならセリアス王国殿下が見えになられるはずなのに」
突然、城下へ下りてきた事に慌てる両親
まさかのランスが自分の騎士達を連れて直々に商店街までくるとは、一体何事かと思った。
なぜならいつもは、王であるセリアス国王殿下が直々にお見えになられるからだ。
「と…とりあえず!!召集だから集まらないとな!」
「そ…そうね」
動揺している両親の姿からも緊迫した空気感が伝わる。
「わかった!!」
ひとまず、召集とあらば集まるのが礼儀なので私達は扉を開け、外に出る。
外に出た私達の目の前に広がる光景は、多くの家が建ち並ぶ道の真ん中で鎧を被り軍勢を率いて立っているランス。
そして、そのランスに跪く大勢の民達の姿。
私達も急いで近くに駆け寄り跪く。
駆け寄りながら見たランスの表情は、いつも通りの温厚な表情だった。
しばらく跪いているとランスが突然、口を開いた。
民達や私達も皆、顔を見上げながら彼の言葉に耳を傾ける。
「夜分遅くに集いし民たちよ…。わざわざこの場所へ足を運んでくれたこと、心より感謝する。」
そう言って、先ほどの温容な表情が嘘のように険しい面持ちになり、沈黙を破る衝撃的な一声を言った。
「それで、誠に突然で申し訳ないのだが。君達には今から"死んでもらう"」
民達に衝撃が走った…。
私や両親を始めとする民達がお互いの顔を見合わせながらざわついている。
「は?え?ラ…ランス様。ご冗談はお辞めください!!ちょっとさすがにそれは…」
「そ…そうです!!な…何かの冗談ですよね?」
グレイスとニア夫妻が始めに口を開く。
さすがの突然の出来事に焦りの表情を浮かべて何かの冗談だと思っているようだ。
「そうだ!!何かの間違いだよね。」
「そうに決まってるさ!だって、あの私達を想ってくれているセリアス殿下のご子息であるランス様が仰っている事だから。」
グレイスとニア夫妻に便乗する形で皆が口を開く。
かく言う私も同じ事を思っていた。
一回は人殺しをした身とは言えど、それは私を想っての事であり、民達に関しては何も関係がないからだ。
すると、ランスは民達の問いに対して不敵な笑みを溢し、私を指差しながらこう言った。
「あ~!!まだ冗談だと思ってるわけか。ならせめてもの償いとして、死んでもらう理由だけでも聞かせてやろう…。それはな、その娘の絶望する顔が見たいからだよ」
なんという理不尽で身勝手な理由だろうか。
民達の視線が一斉に私に向けられる。
その民達の表情は、絶望に満ちていた。
そんな彼と民達の表情に戸惑う私。
私は、その狂気に満ち溢れた彼の表情を一度見たことがあった。
その表情というのが、私をいじめていた上級生三人を殺した時の表情と一致したからだ。
ここで私は悟ってしまう。
あ…。本当に私のせいで皆が殺されるんだと。
でもそれと同時に、彼は殺されないんだとも思っている。
私は絶望の責任感と極限を抱き、言葉は何も言い出せなかった。
そして、そんな私に追い討ちをかけるかのように衝撃的な真実を打ち明ける。
「あ!!ごめん!長くなるけど君にも言い忘れてた事がいくつかあったよ!それだけ伝えるね!初恋の話あるだろ?実はあれ、半分が真実で半分が嘘なんだ。」
彼は一息ついてから、さらに言葉を重ねた
「確かに初恋相手は合ってるよ!好きだったともさ!でもね…。彼女は病じゃなくて!僕の手で殺したんだ!!」
彼の流した涙や切ない表情は嘘であり、演技だったのだ。
「最後の最後まで爽快だったよ!!彼女の幸せそうな表情から一変、無抵抗のまま何も出来ずに諦めるあの表情も、何度も刺して殺した瞬間のあの絶望と最後まで愛に溢れたあの瞳も…」
彼は、笑みを溢しながら話している。
「そして、そんな彼女がいつも言ってくれた"もえもえキュン"の言葉。あぁ。今でも思い出すな~。」
最悪で最低な真実だった。
民達もその情景の惨さからかを唇を噛み、顔を覆っている。
大衆の面前で晒される絶望。
幸せな言葉だと思っていた言葉が一変する真実。
それでもまだ私は、初恋の話が嘘だった事への安心感と何か理由があるんだと彼を信じる心を抱かせている。
絶望を味わいながらも彼を愛する自分の姿に、苦しさの中に見出す存在意義を感じている。
彼は、私の傷ついた心にトドメを刺す言葉を言う。
「ついでに一言だけ。最初は確かに、君を少しは愛していたさ!でもね。段々、君のような心の弱い女の子を幸福にさせてから絶望の淵に叩き落とした後の絶望に満ち溢れた表情を見ることに興味が湧いてきたんだ。」
そう言いつつ、彼は続けて話して来た。
「だから、君をいじめっこから助けたり、愛してるとも言ったりしたのさ。ほんと、君をみていると初恋相手を思い出すよ。名前は~。忘れちゃったけどね!」
苦渋にも彼の眼差しからは、私をようやく真実を打ち明けられた好奇心とサディスティックな嗜虐心を感じた。
例えそうだったとしても、彼が私の事を好きだったと信じたかった私は、現実を受け入れずに居たのだ。
「あぁ!!最後に君に重要な事を伝えないといけなかった!!僕の隣にいる人達いるだろ?」
確かに大勢の騎士達がいる中、彼の隣には唯一、六人の兜を脱いでいる者達が居た。
「実はこの人達はね!君が殺した。いじめっこの三人の両親なのさ!!あはははは!!衝撃的だろ?」
狂気に満ちた笑みを浮かべ、見下ろしているルイス
私はその顔をひたすら眺める事しかできない。
彼が容疑を私に着せたことも衝撃などなかった。
なぜなら、その歪んだ想いすらも愛しているから。それも含めて私への愛の形だと自分で納得していたからだ。
犯罪者だと知った時の両親の顔は当然、見れなかった。
もう…なにが何だか!わからない。
でも一つだけ言えることは私はそんな彼でも愛していることだけだった。
そんな私の愛は歪んでいる。




