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居眠り伯とオルドナ戦争  作者: 中里勇史
反撃

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終結

 戦況を見守っていたケルヴァーロは、南からまた音がすることに気付いて振り返った。

 背後から、約二万ほどの軍がゆっくりと迫ってきた。ファウフェレスもそれに気付いて目を見開いた。

「あれは……ニークリット公(ソルドマイエ二世)の軍旗ですな」

 ストルザイツが冷静に指摘した。

「ソルドマイエが!?」

 他のグライスがそのグライスの長官の要請なしに軍を派遣するのは帝国法で禁じられている。

 ガリトレイム・グライスのラフェルス伯とカーリルン公は、皇帝の命令によって皇帝軍を援護するために派遣された。その旨はケルヴァーロに事前に通知されていたので問題ないが、ニークリット公の参戦については何も知らされていない。

 もっとも、手続き上の問題に過ぎないとも言える。グライス長官のケルヴァーロが、「ニークリット公に援軍を要請した」と言えば済むことだった。


 ケルヴァーロは苦笑した。

「相変わらず何を考えているのか分からんやつだ。まあいい。クーデル王を逃がすと厄介だ」

「父上、よろしいのですか?」

「構わん。ソルドマイエが協力してくれるというなら好都合だ。活躍してもらおうじゃないか」

 ケルヴァーロは豪快に笑った。


 ニークリット公国軍はさらに接近し、ケルヴァーロらまで一〇〇メルというところで停止した。

「うん?」

 ケルヴァーロは違和感を覚えて再び振り向いた。ニークリット公国軍は、弓兵を前列に置いて左右に展開した。

「ソルドマイエ、一体何を……」

 ニークリット公国軍は、ケルヴァーロらに向かって一斉に矢を放った。大量の矢が降り注ぎ、グライス軍の騎兵たちが次々に倒される。

「ファウフェレス!」

 ケルヴァーロは剣を抜いて矢を払いのけながら、嫡男を見た。ストルザイツがファウフェレスを庇って背中に大量の矢を受けていた。

サンツァーツ(ストルザイツ)!」

 ストルザイツは、ケルヴァーロに向かってニッと笑い、口から血を吐き出した。

「わ、(ファウフェレス)は……」

「ファウフェレスは無事だ。よく守ってくれた」

 ケルヴァーロの言葉を聞くと、ストルザイツは再びほほ笑んで目を閉じた。

「俺ではなくファウフェレスを守るとは、最後の最後まで的確な判断をするヤツだ」


 ケルヴァーロの左太ももに矢が突き刺さった。膝から崩れ落ちながらファウフェレスを見る。ストルザイツの献身もむなしく、ファウフェレスは額に矢を受けて絶命していた。

「ファウフェレス……親より先に死ぬヤツがあるか!」

 ケルヴァーロは強引に立ち上がると、ファウフェレスとストルザイツに近づいた。右胸を矢が貫いた。

「フェメテイエ……許せ。ファウフェレスを守ってやれなかった」

 ケルヴァーロはファウフェレスの頬をなでながら、涙をこぼした。泣くなど、何十年ぶりだろうか。

「なるほど、俺でも子を失うと泣くのだな」

 ケルヴァーロの背中にさらに二本の矢が突き刺さり、彼はファウフェレスとストルザイツを覆うように倒れた。


 グライス軍騎兵を殲滅したニークリット公国軍は、カルナックタイン公が指揮するグライス軍本隊を背後から強襲した。




 帝国歴二二七年二月五日、ナインバッフ・グライス軍は壊滅した。

 名もなき帝国の物語 第四章『居眠り伯とオルドナ戦争』は以上で完結です。お付き合いいただきありがとうございました。

 続編『居眠り伯と万能の天才公爵』は、初校は完成しているので全体的に見直しとリライトが完了次第公開したいと思います。

 短編『騎士の娘は公爵の「お手付き」を目指します』、その次の『居眠り卿と密室の死体』も週一(土曜日)公開を継続する予定です。

 もしよろしければお付き合いください。

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