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居眠り伯とオルドナ戦争  作者: 中里勇史
反撃

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グライス軍出陣

 ヌヴァロークノ軍出現の報がケルヴァーロの下にもたらされたのは2月4日だった。その前日の2月3日に、約2万の軍がミラロール南東30キメルほどに位置するゲルペソルから出陣したという。

 「2万? 少ないな」

 ヌヴァロークノ軍本隊は5万を超えるとみられていたので、ファウフェレスは首をかしげた。ストルザイツは顎を指で摘まんだまま考え込んでいる。ケルヴァーロは腕組みをして天井を見上げていた。

 観測から導き出された予想値、報告の信憑性、仮説、願望。これらをどう整合させるか。報告を願望と直接結び付けるのは最も悪手だ。「出現したのは2万だった。実はその程度の兵力だったのだ」という安易で魅力的な結論を出せば間違いなく敗北する。

 ケルヴァーロは顔を天井に向けたまま、横目でヨーレントを見た。

 「ヨーレント卿、ヌヴァロークノ軍はポルセアルに向かっているのか?」

 「いえ、ゲルペソルから5キメルほど南下したところに布陣しました」

 「5キメル南か……。サンツァーツ、どう見る?」

 「罠ですな」

 「やはりそう思うか」

 ファウフェレスはオルドナ伯領の地図を思い浮かべた。そこに各街を配置する。

 「トローフェイル、ポルセアル、アンネーメル……。我々がヌヴァロークノ軍に向かって北上すると、各街からもヌヴァロークノ軍が出陣してきて包囲される、ということか」

 ケルヴァーロは天井を見上げたままニヤリと笑った。嫡男も軍議に付いてきている。ストルザイツはファウフェレスに向き直り、「ガルトザーレ伯(ファウフェレス)の推測通りかと」と言って肯定した。

 ナインバッフ・グライス軍も5万強に達したが、各地の守備にも兵力を割かねばならない。会戦に投入できる兵力は4万程度だ。5万強の敵に包囲されれば勝ち目はない。

 ケルヴァーロは目を閉じて沈黙した。一同はそのケルヴァーロを見守っている。ケルヴァーロは頭の中で兵を動かし、戦っていた。無数の作戦、無数の敵の動きを作り出して、何度も戦いを想像した。


 「よし、決めた」

 ケルヴァーロは目を開くと、一同を見渡した。

 「小細工は面倒だ。ゲルペソルから出てきた敵を一気に殲滅する」

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