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居眠り伯とオルドナ戦争  作者: 中里勇史
反撃

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61/72

閉塞

 皇帝軍によってミラロールは完全に制圧された。

 ミラロールに住み着いていたヌヴァロークノ人2000人は全て捕らえられ、彼らの奴隷にされていた800人のミラロール市民は解放された。ミラロール市民はヌヴァロークノ人の処刑を要求したが、フォロブロンはそれを許さなかった。

 アークラスムは怪訝な表情を浮かべた。

 「けどよ、あいつらどうするんです? 伯爵」

 ウィンはアークラスムの方を見ずに答えた。「奴隷にして売る。帝国各地や周辺諸国に」

 先の戦いで捕虜にしたミラロール守備隊の生き残り3000人弱も同様である。

 「それしかないでしょうな……」とオルロンデムが言ったのが、アークラスムの癇に障った。「スカした顔しやがって」などと毒づいているが、フォロブロンの手前もあってその程度で抑えた。

 侵略者を待ち受けている運命は過酷だ。引き離される家族も出てくるだろう。

 「ヌヴァロークノには同情する。助けてあげられればよかった。だが、彼らは武力で解決しようとした。帝国人を殺し、奴隷にした。ヌヴァロークノ人は被害者だったが、自らその資格を放棄したんだ」

 少なくとも、ミラロールの元の住民がヌヴァロークノ人に何かしたわけではない。平和に暮らしていたのに一方的に攻撃され、殺され、犯され、追放され、奴隷にされた。ヌヴァロークノ人はその罪を負わなければならない。


 「フェリーニナ、本当にいいのかい?」

 「だって必要なんだろ?」

 「けど強制はできない」

 「水軍に二言はないよ。やると決めたらやる。それだけさ」

 フェリーニナはそう言って、不敵に笑った。

 ミラロール港の辺りの海はえぐれたように深いが、天然の堤防になっている入り江の出口付近は意外に浅い。そこに、オルドナ水軍やガロナ水軍の船、拿捕した敵の軍船を集めて自沈させた。焼け残った柱などもついでに放り込み、港を閉塞した。これで、大型船はミラロールに入れなくなった。

 「あれ撤去するの大変だぞ」と言って、ベルウェンはウィンを見た。

 戦争終了までは、とにかくヌヴァロークノからの増援を近づけないことが重要だ。平和になったら、沈めた船を除去すればいい。大変だが、不可能ではない。平和になりさえすれば、だ。


 太陽が西に傾き続ける中、フェリーニナは水軍の船が次々に沈んでいくのを見つめていた。夕日が彼女の美しい横顔を赤く染めていた。彼女は最後の船が沈むのを見送ってからつぶやいた。

 「これでガロナ水軍は消滅しちまった。もう何も残っていない。きれいさっぱりなくなっちまったよ」

 寂しそうに、空を見上げた。

 「そんなことはないよ、フェリーニナ。ニレもダレも、水軍のみんなもいるじゃないか。彼らがいれば大丈夫。きっとガロナ水軍はよみがえる。大切なものは何もなくなってなんかいない」

 「ウィン……」

 フェリーニナはウィンを見上げると、ニコリと笑ってこぶしをウィンのみぞおちに力いっぱいたたき込んだ。

 「ぐげぐっ」

 「いい感じの話にまとめてんじゃねえぞ、このスットコドッコイ! アタシらの船どうしてくれるんだこの野郎!」

 「また俺たちの名前間違えてるじゃねぇか!」

 「わ、分かった、分かったってば。再建費用を補償するように帝国に伝えるから、痛っ! 勘弁してよ。痛い!」


 フェリーニナは、ウィンを海に蹴り落とした。

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