ミラロール攻略 その3
港で火の手が上がったの見たベルウェンらも動き出した。この混乱に乗じて陸側の切り通しを制圧するのがベルウェン隊の役目である。
ウィンは体温が低下した影響で動けなくなっていたので、傭兵の一人が背負うことになった。足手まといなのだが、意外にも誰も怒っていなかった。自分たちと共に冬の海を歩いてきた伯爵様のことが気に入っていた。
先に到着したオルドナ水軍の船から傭兵と水軍の水夫たちが上陸して、街の制圧に取りかかった。ガロナ水軍の船も港に着こうとしていた。
逃げる住民、港の防衛に向かおうとするヌヴァロークノ兵で、ミラロール市全体が混乱に陥っていた。切り通しの守備兵も港に向かっていれば重畳だが……守備兵は残っていた。
「そううまくはいかねぇか」
ベルウェンは苦笑すると、傭兵たちに戦闘準備を命じた。切り通しを確保してフォロブロンを引き入れなければミラロールの完全掌握は不可能だ。ヌヴァロークノ兵と住民の数の方が多いのだ。混乱が収まればジリ貧に陥る。
切り通しの上に設けられた詰め所に居る守備兵は港に注意が向いていて、ベルウェンらが近づいていることに気付いていない。まさか市内側から敵に忍び寄られるとは思わなかったのだろう。港の炎が守備兵たちの顔をわずかに照らし、彼らの位置を浮き上がらせていた。
ベルウェンの合図で、傭兵たちが守備兵を次々に射倒した。守備兵たちは、矢がどこから放たれたのか分からず混乱した。さらに矢を射かけて守備兵を倒すと、傭兵たちは切り通しの上に通じる梯子を上った。
機先を制した傭兵たちによって、切り通しの上の詰め所に居たヌヴァロークノ兵は抵抗する間も与えられずに全滅した。
だが、切り通し防衛のための詰め所はそこだけではなかった。切り通しの脇の詰め所から300人ほどのヌヴァロークノ兵が出てきた。
「まだこんなに居やがったか。慎重な連中だな」
傭兵たちは軽口をたたいたが、状況は良くない。逆転の可能性はたった一つしかない。
「大丈夫だ。必ず来てる。門を開けろ!」
切り通しの上の詰め所を制圧した傭兵たちが、切り通しを閉ざしていた門を開けた。ほとんど間を置かず、地響きが近づいてくる。そして、騎兵が次々に切り通しを抜けてミラロール市内に突入してきた。騎兵たちは50メルほど駆け抜けると辺りを見回し、ヌヴァロークノ兵を見るや斬りかかった。
これで形勢は決した。
皇帝軍の突入を指揮したフォロブロンは、切り通しの脇に居たベルウェンを見つけて彼に近づいた。
「何とか勝ったな」
「さすがアレス副伯、ギリギリまで近づいていると思ったぜ」
「市内で火の手が上がったのが見えたからな。必ず切り通しを押さえてくれると信じていた」
そこでフォロブロンは言葉を切り、辺りを見回した。
「ところで、ラフェルス伯はどうした。水軍と一緒か?」
「大将なら、そこにいるぜ」
ウィンは、切り通しから少し離れたところでブルブル震えながらたき火に手をかざしていた。
「相変わらず寒さに弱い奴だな」
「まぁ、今回は寒中水泳までしたからな。大目に見てやってくれ」
「寒中水泳!?」




