ミラロール攻略 その2
夜陰に紛れて、無数の小舟が入り江に侵入した。船体には炭をこすりつけてある。
黒塗りの小舟の一隻に、ニムの姿があった。夜目が利くニムでも、他の船はほとんど見えない。左側を進む船のどれかにダルナが乗っているはずだ。
暗くても、ミラロールの所々に明かりが見えるので方向は分かる。入り江から明かりに向かって進めば、自然に港に着く
港には、侵略初期には無数にあった軍船は数隻しかなく、残りは漁民などが使う漁船だった。移住者を乗せるため、本国に戻っているのだろう。そのことは、日没直前に入り江の縁の岩に登って確認済みだった。配置もそのときに覚えた。
入り江から進んだ体感的な距離から、敵の船の手前20メルまで近づいたはずだ。ニムは懐から火打ち石を取り出すと、火をおこして小さな油壺の芯に点火した。これを船の先頭に置くと、そっと小舟から下りて海に入り、小舟を港に向けて押し出した。
「ニム!」
「ダルナか」
「ここまでは順調だな」
2人は入り江の出口に向かって泳ぎながら首尾を確認した。接近する前に発見されたらこの作戦は失敗してしまう。
「さあ、早くお嬢に合流しよう」
小舟たちは、ふらりふらりと漂いながら、波に乗って敵の船に衝突した。衝突した衝撃で、種火がついた油壺が転げ落ちる。すると、小舟にそそがれていた油に燃え移った。小舟は燃え上がり、波に押されて再び敵の船に衝突した。漁船と漁船の間に入り込んだ小舟もあった。桟橋の下に潜り込んだものもあった。
港で突然発生した火災によって、ミラロールの街は騒然となった。全ての小舟が延焼に成功したわけではなかったが、小舟の火災自体が街の混乱を助長する要素にはなった。
港の火災を合図に、入り江の外に待機していたガロナ水軍とオルドナ水軍の残党の船が一斉に突入した。
「野郎ども、死ぬ気で漕ぎな! 弔い合戦だ!」
フェリーニナの号令に漕ぎ手が雄叫びで応える。炎によって港が明るく照らされている。延焼を免れて港から離れようとしている軍船の様子も手に取るように見える。
「ノコノコ出てきた間抜けから片付けるよ! ガロナの船で取り囲め! オルドナは先に行きな!」
オルドナ水軍には、ミラロールに一番乗りする権利がある。ヌヴァロークノに復讐する権利がある。
港から出てきた軍船に、ガロナ水軍の船が左右から激突した。鉤針がついた縄を敵船に引っかけて、離れないように固定する。敵の軍船には、完全武装の歩兵が20人ほど乗っていた。
「やっと俺たちの出番がきたぜ」
フェリーニナの後ろから、甲冑を着込んだアークラスムが現れていひひと笑った。「あいつらの相手は任せてもらおう」と言うと、アークラスムは傭兵たちを引き連れて敵の軍船に乗り移った。ヌヴァロークノ兵は、甲冑を着た一団の出現に明らかに動揺した。その動揺が後れを取る原因になった。ヌヴァロークノ兵はアークラスムらによって全滅させられた。
ガロナ水軍たちも、敵船の水夫らを一掃していた。
軍船を完全制圧したとみたフェリーニナは、新たな命令を出した。
「アタシらも港に向かうよ!」




