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居眠り伯とオルドナ戦争  作者: 中里勇史
反撃

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ミラロール攻略 その1

 「ウガググ」

 「うるせえよ、大将。だからベンデ島で待ってろって言ったんだ」

 「いい一応う、かかか考えええたたのわっ私しし」

 「分かったから、もう口閉じてろ」


 ウィン以下、約200人のミラロール攻略部隊は夜の海岸を歩いていた。正確には、80セル程度の水深の浅瀬を歩いている。真冬の夜の水温は身体の芯まで差し込むような冷たさであった。ナルファストのときは逃げたのに、今回は震えながら付いてきたウィンを見て、ベルウェンは「足手まといなんだがな」と思った。本当に迷惑だった。

 ミラロールは切り立った崖に囲まれた入り江にある天然の良港である。陸から海に突き出た崖までをひとかたまりの地形として捉えると、ここはかつて山だったのではないかとベルウェンは想像した。それも、火山だ。

 はるか昔、その火山が爆発して海側の山麓が吹き飛んだ。そうするとこんな地形になるかもしれない。50年くらい前には北海の沖で海底噴火が起きて島ができたとも聞く。この辺りの海には火山ができやすい条件でもあるのだろう。

 ミラロール形成の特質からか、両側の崖は水面下も切り立った崖になっている。そのため陸づたいにこの崖を越えてミラロールに入ることはできない。入り江には船で侵入するしかない。そして、入り江内で上陸できる場所は、通常であれば港付近までない。


 通常であれば。

 オルドナ水軍の残党は、通常ではない場所を知っていた。それが、干潮時だけ何とか歩ける浅瀬だった。

 冬は夜に干潮になる。侵入には好都合だが、寒中水泳するはめになるのが欠点だった。

 ウィンが静かになったので、ベルウェンは地形や歴史について思いを巡らせる余裕ができた。

 実に静かだ。

 考えることに没頭してしまった。

 静か過ぎる。

 ベルウェンが振り向くと、ウィンがいない。

 「おい、大将がいねぇぞ。探せ」と小声で周囲の傭兵たちに声をかけて辺りを捜索すると、ウィンがうつ伏せの状態でぷかりと浮いていた。「幼児は水深が10セルでも溺死するって聞いたことがあるな」などと思いながら、ウィンを引き上げて仰向けにした。頬をたたくと、ウィンは意識を取り戻した。

 「ベ、ベルウェン……。私はもうだめだ。私を置いて……」

 「ふざけてる場合じゃねぇ。さっさと立て!」と言って、ベルウェンはウィンの脳天にこぶしをたたき込んだ。


 一行は、陸づたいに港に入れる地点まで辛うじて到達した。海から出ることはできたが、濡れた身体に冬の夜風が突き刺さる。ベルウェンたちでも、この状態が長く続けば体温が下がり過ぎて行動不能、最悪の場合は凍死する恐れがある。

 「後はフェリーニナの嬢ちゃん次第だな」


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