殺戮
「勝ちましたな」
ウィンの横で指揮を補佐していたレンテレテスがつぶやいた。
「トローフェイルの戦訓のおかげだね。ヌヴァロークノ軍の戦法を知らなかったら危なかった」
「後は、完勝を飾れるか否か」
「アレス副伯とポロウェス卿ならやってくれるでしょ」
「私に続け!」
皇帝軍の騎兵を指揮しているフォロブロンが叫んだ。
皇帝軍騎兵は最左翼の西側を大きく迂回してヌヴァロークノ軍の背後に出ようとしていた。バルエイン隊、ポロウェス隊、オルロンデム隊、アークラスム隊も敵陣を突破して敵の背後に展開した。
ウィンは後方の丘の上でその様子を見て、とても嫌そうに顔をしかめた。
「ミラロール攻略のためには、彼らをミラロールに入れる訳にはいかない」
降伏勧告はするが、拒否するなら殲滅するしかない。それはウィンが好まない結末だった。
背後から騎兵に攻め立てられ、前面からは歩兵に圧迫される。ヌヴァロークノ軍はもはや組織的な戦闘が不可能になり、自暴自棄になった個々人が戦いを継続しているという状態になっていた。短槍を投げ終えた傭兵たちは、騎兵突撃を受けて激しく動揺している敵陣に短剣で切り込んで着実に敵兵を減らしていった。
遠目にも、包囲網が狭まりヌヴァロークノ軍が減っていることが分かる。しかし戦闘が終わる気配がない。
「前線は、ちゃんと降伏を呼び掛けてるのかい?」
ウィンは不快そうな顔でレンテレテスに聞いた。
「ポロウェス卿にしてもアレス副伯にしても、殺戮を好む為人ではありません。しかし……」
あの様子では、ヌヴァロークノ軍は指揮系統を失って戦闘中止を命じる者もいないのだろう。ただ無我夢中で抵抗を続けている状態で、こちらの降伏勧告が耳に届くのか。レンテレテスも歯がゆい気持ちで眺めるしかなかった。
さらに時を経て、疲労と絶望感で戦意を失った一部のヌヴァロークノ兵が仲間に降伏を呼び掛け、それをきっかけにヌヴァロークノ兵たちは武器を捨てて跪いた。
こうして、ようやく戦闘が終了した。
ヌヴァロークノ軍は3000人以下に減っていた。




