ウィン、出陣
ニレロティスらとの協議の結果、騎兵500と歩兵1000をラフェルス伯、騎兵1500と歩兵5000をカーリルン公が出すことになった。騎兵は領主と騎士で構成し、歩兵は全て傭兵で賄うことにした。帝都に居るベルウェンに、早速募兵と編成を依頼した。
ラフェルス・カーリルン軍は、1月10日にトルトエン副伯領で合流することも取り決められた。ウィンを総大将として、レンテレテスが副将、ヴァル・バルエイン・ウーゼン、ヴァル・ポロウェス・ラーエンがカーリルン公軍、オルロンデムとアークラスムがラフェルス軍の騎兵を指揮する。
ニレロティスも出陣したがったが、ニレロティスとレンテレテスのどちらかはカーリルン公領に残さなければならない。カーリルン公領をがら空きにするわけにはいかないという理由だけでなく、両方が討ち死にするのを避けるという面もある。どちらかは生き残って、カーリルン公領の軍事面を統括しなければならない。もはや、2人には肩を並べて戦場に出ることは許されないのである。
「ドルトフェイム解放戦は卿に譲ったのだ。今回は私の番だ」とレンテレテスは主張し、ニレロティスの残留が決まった。
12月30日、カーリルン公軍の動員と編成が終わった。ウィンはこのままカーリルン公軍と一緒に出陣することにした。
「じゃ、行ってくるよリフィ」と、散歩にでも出かけるかのような調子で別れを告げると、ウィンは少し手間取りつつ愛馬ロレルに跨がった。馬に乗り降りするときの無様さだけはどうにも直らない。防寒着で着膨れして動きが制限されているという理由もあるにはあるのだが。
ウィンは、鼻水をすすり上げるとアルリフィーアとフェルティスの方を向いて笑った。相変わらず寒さに弱い。
「ウィン、早く帰ってくるのじゃぞ。ほれ、フェルティスも父上に挨拶せぬか」
「ちーうえ(父上)、いってらっしゃい」
ウィンは笑って手を振ると、するりと出発した。大仰な別れは苦手なのだ。
カーリルン公軍はオールデン川沿いに北上した。川沿いを北に進むと北風が顔に突き刺さる。ウィンは涙目と鼻水に難儀した。並んで歩くレンテレテスの顔を見ると、彼も似たようなものだった。普段は涼やかな表情を崩さないレンテレテスが鼻水を垂らしていることに満足して、ウィンはふふんと笑った。
オールデン川からラフェルス伯領に伸びる街道で、オルロンデムおよびアークラスムが率いてきたラフェルス伯軍と無事に合流。さらに川に沿って進み、トルトエン副伯領の境界付近で傭兵隊長ベルウェン・ストルムおよびベルウェンの片腕であるラゲルス・ユーストと合流した。
「久しぶりですな、旦那。8000の兵の総大将だって?」と言って、ラゲルスは愉快そうに笑った。ベルウェンは左眉を少し上げただけだった。それが彼流の挨拶なのである。
「さて、後はアレス副伯と合流するだけだね」




