表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
居眠り伯とオルドナ戦争  作者: 中里勇史
魔手

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/72

淫蕩の女神

 ウリセファは、客を舐めるような目で観察した。男はこういう目つきで見られると喜ぶことを彼女は知っていた。

 客の服は、汚れているが上質だ。胸には宮内伯の徽章を付けている。単なる貴族のお坊ちゃまではなく、任官された宮内伯なのだ。彼らは気位が高く、この徽章を見せびらかす者が多い。元公女の彼女から見れば、皇帝の使用人に過ぎないのだが。

 客の顔や手、服の所々に血が付いている。髪の毛や服が濡れているのは、どこかで血を落とそうとしたのだろう。刃傷沙汰でも起こしたのか。ひどくおびえた目をしていることも、それを裏付けている。金にものを言わせて女を買いに来たようには見えない。

 「店の者に洗濯させましょう。まずはお召し物をお脱ぎになって」と言って、客の服を脱がせた。脱がせながら、客の首筋に息を吹きかける。客は、びくっと体を震わせると彼女から逃れるように後ろに下がった。

 「どうかなさいまして?」

 「わ、私はこのようなことをしに来たのでは……」

 「では、お話を致しましょう」

 ウリセファは、客を敷物に座らせてぶどう酒を勧めた。

 エルエンゾは、勧められるがままに腰を下ろし、杯を受け取った。蝋燭の火に照らされたぶどう酒は何やらどろりとしており、血の色に見えた。父の胸に突き刺さった短剣、両手にべっとりと付いた父の血を思い出して、エルエンゾは嘔吐した。父殺しの恐怖がよみがえってきた。今頃屋敷は大騒ぎになっているはずだ。自分は父殺しの下手人として裁かれるだろう。エルエンゾは絶望した。

 ウリセファは、ぶるぶると震える客の背中を優しくさすり続けた。だが、彼女の目は獲物を値踏みする猛禽類のように鋭かった。

 「わ、私は……」

 「ご安心ください。ここにいるのは私だけ……。私だけは、旦那様のお味方でございます」

 「み、味方?」

 「はい。私だけは」

 「そなただけ……」

 エルエンゾは泣き出した。恐怖と安堵で何も考えられない。彼女に誘導されていることにも気付かず、目の前に居る女だけが自分の味方であると思い込み始めていた。

 ウリセファはエルエンゾを抱き締めて、耳元でささやいた。

 「女は……初めて?」

 エルエンゾはぶるぶると震えながら頷いた。

 「では私に全てお任せを。天国にお連れ致します……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ