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居眠り伯とオルドナ戦争  作者: 中里勇史
嵐の始まり

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23/75

即位

 葬儀の当日、選帝会議の結果を受けてロレンフスの即位が布告され、8カ月後の7月20日に戴冠式を挙行する旨が諸侯に通達された。

 侍従長には、新たにヴァル・インジョウ・トウエスエが就任した。この人事は波紋を呼んだ。序列的には、前侍従長の弟であるヴァル・マーティダ・ディーイエの方が上だったからである。ロレンフスとインジョウの関係が強固であればそれでも不思議ではないが、両者の関係が良好ではないことは公然の事実であった。「インジョウを侍従長にすることはあるまい」とみられていたから、皆不思議がって首をかしげた。

 インジョウの子、エルエンゾも正式に侍従の地位を得た。宮内伯の子弟といえども出仕の起点は文書庫の整理係などの下働きからであり、これまた異例である。


 ロレンフスの登極に伴い、カレナーティアの称号はスルヴァール王妃から「皇妃にしてスルヴァール王妃」に昇格した。

 彼女もまた、ロレンフスの変容に心を痛めていた。ロレンフスは皇帝の崩御以来、あからさまにカレナーティアを避けるようになった。単に妻として疎まれているだけなのであれば、仕方がないし、構わない。反省もしようし、失せろと言われるならどこかの離宮に隠棲してもよい。

 だが、原因はカレナーティアではなくロレンフスの内面にあるように感じる。ロレンフスは何かを恐れている。そこに、インジョウが何らかの形で関与していると推測した。彼の存在が明らかに不自然だからだ。しかし、ロレンフスに問いただしても答えてはくれないだろう。

 今はロレンフスに無理に関わろうとしても余計に心を閉ざすだけだ。彼女は、ロレンフスから距離を置いて彼の周辺を観察することにした。

 侍従長のインジョウは、増長が甚だしい。明らかに侍従職の分を超えた言動が目立つ。底が浅いのだろう。ゆえに、彼女は混乱した。この男が原因なら、ロレンフスは簡単にはねのけるだろう。そうしないというのは、この男の背後に本当の黒幕がいるということなのか。その黒幕を恐れてインジョウを排除できないのだとすると、現状の説明がつく。

 侍従長の子、エルエンゾは態度に変化はない。出仕当初と同じように、ロレンフスに仕えようとしている。不審な点はない。ただし侍従長との関係を思うと、警戒が必要だ。

 フォロブロン、テルメソーン、フィーンゾル、ゼルクロトファらは、やはりロレンフスに壁を作られて戸惑っているように見える。しかし、底が浅いインジョウを操っているのが彼らの中の一人だったら? どうすればカレナーティアの、否ロレンフスの味方だと確定できるのか。


 昔の、考え過ぎて自縄自縛に陥るクセが始まったと自覚できているが、思考の隘路から抜け出せない。どうすれば、誰を頼れば、ロレンフスを救えるだろうか。

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