表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
居眠り伯とオルドナ戦争  作者: 中里勇史
嵐の始まり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/73

喪失

 帝都にあるカーリルン公邸にウィンとアルリフィーアが戻って程なくして、雨が降ってきた。ウィンは喪服も脱がず、窓辺に座って雨を眺めていた。

 簡素な平服に着替えたアルリフィーアは、ウィンの頭をコツンと小突いて「いつまでそんな格好をしておる。さっさと着替えてこい」と促した。

 皇帝崩御の知らせを受けて以来、ウィンはほうけていることが多い。ウィンの心境は分からないが、葬儀が終わったことでもあるし一区切り付けるべきだろう。

 アルリフィーアはウィンの頭を抱き締めて、「いかがした?」と問い掛けた。燃えるような赤毛の上に、頬を載せた。

 「自分でも、よく分からない。これはどんな感情なんだろう」

 悲しんでいるのか。違う。10歳になるまで父親のことなど何も知らされず、親子として接したこともない。訃報を知ってから、ずっと考え続けたが、やはり悲しみの感情はない。

 ならば怒りか。皇帝が、母を弄び、捨てた男だ、と知ったのはさらに後のことである。だがその時点では、その意味を理解できなかった。理解できるようになった頃には、貴族社会についての知識も付いており、「まあそんなもんだろう」という感想にとどまった。怒りはない。恨みも、多分ない。

 もちろん、喜んでもいないし楽しくもない。

 「なら、私は何で落ち込んでいるんだろう」

 「そうじゃな。人の心というものは不可解じゃのう」

 アルリフィーアには、ウィンのとりとめもない吐露を聞きながら、胸にいだいたウィンの頭を優しくなで続けた。彼女が幼い頃、母にこうして頭をなでてもらうのが好きだった。なでられるととても落ち着き、安らいだ。母が死んだとき、もう頭をなでてもらえないのだと思うととても悲しかった。

 「あ……」。アルリフィーアの心の中に何かが浮かんだ。

 「ウィン、もしお父上がこの先もご健在であれば、どうした? 何がしたかった?」

 「皇帝が生きてたら? そうだね……諸侯としてちゃんと領国を統治して、一回くらいは『よくやった』と……」

 「うん」

 「そうか。私は、父上に認めてもらいたかったんだ」

 そう言って、ウィンは一筋だけ涙を流した。ウィンの頭を抱き締めていたアルリフィーアにはそれは見えなかったが、ウィンの感情は伝わっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ