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追放された元宮廷魔術師、辺境で育てた弟子と共に王都を滅ぼすか救うか選ぶことになる  作者: マルコ


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第15章 第1話 瘴気の地より

 炎に包まれた都市から数日後。

 私たちのもとに、南方からの急報が届いた。


「瘴気が……再び溢れ出しています! 村々は次々と飲まれ、異形が跋扈して……!」


 報せを告げた兵の顔は蒼白だった。

 彼の背には、黒い靄がまとわりつき、皮膚に裂け目が浮かんでいた。

 それは、瘴気に触れた者が見せる異様な兆候だった。


 私は凍りつくような感覚に襲われた。

「瘴気は、あの北方だけじゃなかった……大陸全てに広がり始めている」


 南へ進む街道。

 そこに広がっていたのは、人の形をした何か――いや、人の皮を纏った異形だった。

 かつて人だった者が瘴気に蝕まれ、歪み、牙と爪を持つ怪物へと変わり果てていた。


「……人間が……」

 マリアが震える声を漏らした。


 異形たちは呻き声を上げながら群れをなし、私たちに襲いかかってきた。

 ラシードが血に濡れた剣を振り抜き、ライラが影のように斬り裂く。

 私は杖を掲げ、炎と水を交互に放ち、群れを押し返した。


 だが、倒しても倒しても、次々と現れては地を這いずる。

 瘴気は生き物そのものを「兵」として飲み込み続けていた。


 戦いの最中、闇の奥に黒衣の影が立っていた。

 典院長――書架院の頂点に座す存在。


 彼は一歩も動かず、ただ低い声を響かせた。

「封印が綻び始めた。

 これは始まりにすぎぬ。大陸の秩序はすべて壊れ、新しき世界が生まれる」


 私は叫んだ。

「こんなものが未来か! ただの破滅だ!」


 典院長は冷たく微笑む。

「破滅の上にしか真の未来は築けぬ。

 旧き秩序を捨て、再編に従う者だけが生き延びるのだ」


 その言葉は恐ろしく澄んでいて、しかし絶望そのものだった。


 ラシードは血に濡れた剣を握りしめ、苦しげに息を吐いた。

「……守りきれねぇ……俺たちだけじゃ……」


 マリアは泣きながら光を掲げ、呻いた。

「人が……人が異形に……どうしてこんな……!」


 ライラは短剣を振り抜きながら、震える声で呟いた。

「これが“世界の再編”……? なら……私たちに抗う意味なんて……」


 仲間の心に、確実に闇が入り込んでいた。


 典院長が片手を掲げると、瘴気が渦を巻き、地が裂けた。

 そこから現れたのは、異形の群れを遥かに凌ぐ存在――

 巨大な影の竜。

 その眼は赤く爛々と輝き、大地そのものを揺るがす咆哮を放った。


 私は杖を握りしめ、必死に声を張り上げた。

「まだだ……ここで立ち止まるわけにはいかない!」


 だが、心の奥に広がる恐怖は、これまでとは比べ物にならなかった。

 封印されし存在が――動き出している。

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