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追放された元宮廷魔術師、辺境で育てた弟子と共に王都を滅ぼすか救うか選ぶことになる  作者: マルコ


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第14章 第5話 燃え上がる都市

 大陸中央の要衝――エルダインの大都市。

 遠くからでも、街全体が炎に包まれているのが見えた。

 赤黒い煙が空を覆い、風に乗って焦げた肉の匂いが漂ってくる。


「……ひどい……」

 マリアが口元を覆い、震える声を漏らした。


 街門は破られ、広場には倒れた民が積み重なっていた。

 剣も持たぬ老人や子どもまでもが斬り伏せられ、血が石畳を川のように流れていた。


 ラシードが歯を食いしばり、剣を握り直した。

「これを……“秩序の再編”だと? ふざけるな!」


 市街地の中心で、黒衣の術師たちが陣を組んでいた。

 彼らは炎を操り、建物を次々と崩落させている。

 混乱に乗じ、反乱軍の一部と異民族兵をぶつけ合わせ、市民を巻き込ませていた。


「やめろ! お前たちが戦っている相手は敵じゃない、同じ人間だ!」

 私の叫びは届かず、血に染まった狂気の声が街を覆った。


 ライラが矢を払い落とし、短剣で敵を斬り捨てる。

「……誰も止まらない。もう、壊れるしかないの?」


 マリアは必死に光を掲げ、倒れた人々に癒しを施した。

 その姿は炎の中でひときわ輝いて見えた。

「お願い……生きて、立って……!」


 だが、その瞬間、瓦礫の山が崩れ、マリアの背後から巨大な梁が落ちてきた。


「マリア!」

 私は駆け出した――しかし、間に合わなかった。


 ラシードが叫び声を上げ、咄嗟に彼女を突き飛ばした。

 次の瞬間、梁が彼の背に直撃し、地面に叩きつけた。


「ぐっ……!」

 血が口から溢れ、彼の身体が動かなくなる。


「ラシード!」

 マリアが泣き叫び、私は必死に梁を押し退けた。

 ライラが敵を払いのけながら声を上げる。

「リディア、早く!」


 ようやくラシードを引き出すと、その背は潰され、鎧は無残に割れていた。

 彼は苦痛に顔を歪めながらも、微かに笑った。

「……守れた、だろ……?」


 私は彼の手を握りしめ、必死に叫んだ。

「生きろ! ここで死ぬな、ラシード!」


 だが炎と叫びの中で、私の声は掻き消されていった。

 マリアは涙で顔を濡らし、光を必死に注ぎ込む。

「お願い……死なないで!」


 ライラは背を向け、震える声で呟いた。

「……これ以上、失うなんて……」


 私は胸の奥で焼け付くような痛みに襲われながら、なお叫んだ。

「誰一人、失わせない! この地獄でも、必ず未来を繋ぐ!」


 その誓いは、炎の中でかすかに光を放った。


 戦火は収まらず、街は完全に崩壊していった。

 市民の大半は救えず、瓦礫と炎に呑まれていった。

 そしてラシードの命もまた、細い糸のように揺らいでいた。


 ――この都市は失われた。

 だが、失われた命の上に、必ず未来を築かなければならない。


 私は燃え盛る街を背に、杖を握り締めた。

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