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追放された元宮廷魔術師、辺境で育てた弟子と共に王都を滅ぼすか救うか選ぶことになる  作者: マルコ


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第2章 第1話 決断の夜

 その夜、村の空気は張り詰めていた。

 昼間から森の奥で不穏な鳴き声が聞こえ、村人たちは門を固く閉ざしていた。


 私は焚き火の前で、魔導書をめくりながら耳を澄ます。

 ――何か来る。

 魔力の流れが、ざわついている。


「リディア、眠れないの?」

 マリアが毛布を抱えてやってきた。

「今日はいやな予感がするの。……念のため、村の中で過ごしましょう」


 そう言った瞬間、遠くで犬の吠える声。

 続いて、何かが倒れる音。


 扉が破られる音と同時に、黒装束の影が飛び込んできた。


「王都の裏切り者め、ここで果てろ!」


 私は即座に杖を構える。

「マリア、下がって!」


 光の魔法陣が展開し、部屋に風が吹き荒れる。

「ウィンド・ブラスト!」


 突風に吹き飛ばされる刺客たち。

 だが一人が立ち上がり、マリアに短剣を向ける。


「やめて!」

 マリアがとっさに両手を突き出し、風刃が走った。

 刺客の腕が切り裂かれ、短剣が地面に落ちる。


「マリア、今の……」

「わ、わたし……」

「よくやったわ。でも、ここからは私が相手する」


 私は杖を高く掲げ、魔力を集中させる。

 光が走り、部屋の中を白く照らした。


 閃光が消え、刺客の一人が壁に叩きつけられて崩れ落ちた。

 息を荒げながら杖を構え続ける。

 残る一人は口元を歪めて笑った。


「……さすが宮廷魔術師。追放されたとはいえ、腕は鈍っていない」


「誰の差し金?」

 私は一歩踏み出した。

「言うわけが――ぐっ!」


 男の胸元に私の炎の槍が突き刺さった。

 燃え上がる光が、夜闇を赤く染める。


 地面に崩れた男の懐から、金の指輪が転がり出る。

 私はそれを拾い上げた。

 内側には、王宮宰相家の紋章が刻まれていた。


「やっぱり……宰相」


 拳を握る。

 あの日、私を断罪したとき王太子の背後に立っていた男の顔が、

 鮮明によみがえる。


 外に出ると、村人たちが駆け寄ってきた。

 マリアは泣きじゃくりながら私に飛びついた。


「怖かった……でも、わたし、ちゃんと魔法撃てた!」

「ええ、助かったわ」

 私はマリアの髪を撫でる。


 長老が唸るように言った。

「王都がここまで手を伸ばしてきたか。……もう避けられぬな」


 私は深く息を吐いた。

 ――そうだ、もう逃げてはいけない。


 夜遅く、焚き火の前。

 セシリアが膝をつき、真剣な眼差しで私を見つめる。


「リディア様……」

「行くわ、王都へ」


 自分の声が、驚くほど落ち着いて聞こえた。

 胸の奥で燃えていた怒りが、今は冷たい決意に変わっている。


「宰相の企みを暴く。あの日の断罪が間違いだったと証明して、

 王都を――国を変える」


 セシリアがほっと息を吐き、深く頭を下げた。


「ありがとう……。あなたなら、必ず」


 背後で小さな声がした。

「わたしも行く」


 マリアだった。

 涙の跡が残る頬で、真っ直ぐこちらを見ている。


「危険よ」

「分かってる。でも、逃げてたらずっと怖いままだから。

 リディアと一緒に戦いたい」


 私はしばらく黙ったあと、ゆっくりと頷いた。


「分かった。一緒に来なさい。

 でも、旅の途中で泣いても止めないから」


 マリアは力強くうなずいた。


「泣いてもやめない!」


 焚き火の火が大きくはぜる。

 星空の下、私は杖を握り直した。


 ――これは復讐だけの旅じゃない。

 王都を、そして国を変えるための旅だ。

 私の戦いは、ここからが本番だ。

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