第12章 第5話 王都炎上
夜明け前、王都の城壁の外から地鳴りのような音が響いた。
無数の松明が暗闇を赤く染め、反乱軍の旗が林立していた。
その数は数千。鍛えられた兵士というよりも、農民や傭兵、飢えた民が武器を手にしている。
城門を守る兵はわずかで、恐怖に顔を引きつらせていた。
「来るぞ……!」
誰かが叫んだ瞬間、大きな爆音が轟き、城門が破られた。
炎と煙が広がり、反乱軍が雪崩のように市街へ流れ込んでいった。
王都の大通りは一瞬で戦場と化した。
火矢が屋根を焼き、石畳には血が流れる。
泣き叫ぶ子ども、逃げ惑う市民。
盗賊まがいの者たちが略奪を始め、混乱は制御不能となった。
マリアは叫びながら人々を導いた。
「こっちへ! 逃げて!」
彼女の光の結界が矢を弾き、母子を守る。
ラシードは盾を構え、倒れた老人を担ぎ上げた。
「踏ん張れ! 生き延びろ!」
だが人々の悲鳴は止まらず、街全体が炎に呑まれていく。
混乱のただ中、宮殿前の広場に黒衣の術師が姿を現した。
その声は魔力を帯び、街中に響き渡った。
「見よ! 腐敗した王国は崩れ去った!
今ここに、新たな秩序の始まりを告げる!」
術師が杖を掲げると、黒い光が空に広がり、巨大な魔法陣が王都を覆った。
市民が跪き、恐怖に怯え、反乱軍すら息を呑んだ。
「これは“再編”の第一歩。血と炎こそ、新しい世界を育む土壌だ」
その宣言は、まるで勝利を告げる鐘の音のように響いた。
「ふざけるな……!」
私は杖を振りかざし、術師の光を切り裂いた。
「この街はお前たちのものじゃない!」
ライラが影のように敵陣へ飛び込み、短剣で術師の護衛を切り伏せる。
ラシードは市民を守りながら戦い、盾を血に染めた。
マリアは必死に治癒の光を広げ、倒れた者を救い続ける。
炎と煙の中で、私たちはただ一つの願いを胸に戦った。
――誰一人、これ以上奪わせない。
夜空を赤く染める炎。
王都は燃え、悲鳴と怒号が響き渡った。
その光景は、まるで大陸全体の崩壊の予兆のようだった。
私は血と煙の中で杖を握りしめ、心に誓った。
「どんなに大きな炎でも、必ず消してみせる。
人の未来を奪わせはしない」
王都の炎の中、戦いはさらに苛烈さを増していった。




