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追放された元宮廷魔術師、辺境で育てた弟子と共に王都を滅ぼすか救うか選ぶことになる  作者: マルコ


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第12章 第2話 王都の影

 高い城壁に囲まれた王都へ足を踏み入れた瞬間、私たちはかつて知っていた光景との違いに言葉を失った。

 石畳の大通りは人で溢れていたが、その多くは物乞いや疲れ果てた市民だった。

 屋台には商品が並ばず、値段は三倍に跳ね上がり、飢えた目がパンの欠片に群がる。


 その一方で、宮殿前の広場では絹の衣をまとった貴族が豪奢な宴を開いていた。

 煌びやかな馬車が並び、銀の食器に山盛りの料理が並べられている。

 飢える民の視線を意にも介さず、笑い声が空に響いていた。


「……酷い」

 マリアの声は震えていた。

 ラシードが拳を握り締める。

「民を餓えさせ、貴族は酒を飲むか。これが国かよ」


 市場を歩くと、人々の噂話が耳に飛び込んでくる。


「反乱軍がすぐそこまで来てるらしいぞ」

「貴族が金を握りしめて逃げ出したって聞いた」

「兵も給金が払われず、半分は裏切ったらしい」


 人々の顔には不安と怒りが入り混じり、街全体が火薬のように乾ききっていた。

 少しの火花で、爆発するのは明らかだった。


 夜。

 ライラは黒い外套に身を包み、路地の奥深くへと姿を消した。

 彼女はかつて暗殺者の一団にいた経験を持つ。

 地下の情報網は、まだ彼女を覚えていた。


 酒場の裏、燭台の揺れる地下室。

 そこには影の商人や傭兵が集まり、金で情報を売り買いしていた。

 ライラは短剣を机に突き立て、冷たい声で告げる。

「反乱軍に武器を流してるのは誰だ。吐け」


 沈黙の後、震える声が返った。

「……書を抱く者どもだ。あいつらが武器も術も全部持ち込んでる。

 反乱軍はただの駒にすぎねぇ」


 ライラが戻ってきたのは夜更けだった。

 目は鋭く、声は怒りを押し殺していた。

「やっぱり書架院よ。奴らが武器を与え、術を教え、反乱を煽ってる」


 私たちは沈黙した。

 南方で封印を揺るがした者たちが、今度は王国の中枢を壊そうとしている。

 彼らの目的は、やはり「大陸の再編」。


 マリアが唇を噛んだ。

「国を壊して、人を道具みたいに使って……そんなの、絶対に許せない!」

 私は彼女の肩に手を置き、静かに言った。

「許すか許さないかじゃない。止めなければならない」


 その夜、王都の空に黒煙が立ち上るのが見えた。

 遠くで火の手が上がり、鐘の音が鳴り響く。

 反乱軍の影が、ついに王都の外縁に迫っていた。


「……来るぞ」

 私は杖を握り、仲間を見渡した。

 王都の夜は、嵐の前の静けさに満ちていた。

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