表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された元宮廷魔術師、辺境で育てた弟子と共に王都を滅ぼすか救うか選ぶことになる  作者: マルコ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/96

第11章 第5話 封印の崩壊

 黒き神殿の広間に、黒杖を掲げた術師たちの声が響いた。

 低く、不気味な詠唱が重なり、空気そのものが黒い膜で覆われていく。

 壁に刻まれた古代文字が反転し、封印の光が次々と書き換えられていった。


「止めろ!」

 私は杖を振り下ろし、水の奔流を放った。

「アクア・インパクト!」


 奔流は術師たちを飲み込むが、魔法陣の光が盾となり、霧散していく。

 彼らは一斉にこちらを見て、声を揃えて言った。

「学習完了」


 以前の戦場と同じ、“適応”の術式。

 だが今回は、古代の封印そのものを利用して強化されていた。


 ラシードが雄叫びを上げ、盾で突撃した。

 黒い障壁が砕け、術師の一人がよろめいた。

 その隙を狙い、ライラが影のように滑り込み、短剣を喉元へ――


 しかし、術師の身体から黒い瘴気が溢れ出し、彼女を弾き飛ばした。

 床を転がりながら、ライラは歯を食いしばる。

「……まるで人間じゃない!」


 術師たちは封印の瘴気と同化し、肉体を犠牲にした“媒介”となっていたのだ。


 轟音が広間を揺らした。

 魔法陣の中心が裂け、光が爆ぜた。

 封印が破られ、黒い裂け目が大地に走った。


 そこから瘴気が吹き上がり、形を持ちはじめる。

 四足の獣のような影、翼を持つ異形、無数の手を持つ巨影――

 瘴気が魔物の姿をとり、咆哮を上げた。


 村で病をもたらしていたものの正体。

 それは瘴気そのものが命を喰らい、姿を変えた存在だった。


「わたしがやる!」

 マリアが杖を掲げ、必死に呪文を紡ぐ。

「セイクリッド・シェル!」


 光の結界が広間を覆い、村人を襲おうとする魔物を押し返す。

 だが瘴気の圧力は強く、結界は軋みを上げた。

 マリアの額に汗が滴り、膝が震えていた。


「リディア! 早く……!」

 彼女の叫びに応え、私は封印の裂け目へと走った。


 杖を構え、深く息を吸う。

「マリア、力を貸して!」

「うん!」


 二人の声が重なり、魔力が交わる。

 水と光が絡み合い、巨大な槍のような輝きとなった。


「アクア・レイ・ジャベリン!」


 放たれた光の槍が魔物を貫き、瘴気を裂いた。

 黒い霧が爆ぜ、悲鳴のような声を残して消えていく。


 だが封印の裂け目は閉じず、広間の床に黒い亀裂が残ったままだった。


 地鳴りが響き、天井から岩が落ちる。

 書架院の術師たちは後退しながらも、冷ややかに笑った。

「……成功だ。封印は完全には戻らない。裂け目は残った」

「大陸は再編される。英雄よ、抗ってみるがいい」


 彼らは瘴気に紛れて姿を消した。


 広間には私たちだけが残され、亀裂からなおも黒い風が吹き出していた。


 私は荒い息を吐き、杖を地に突いた。

「……止めきれなかった」

 マリアが膝をつき、涙を浮かべながらも首を振った。

「でも……人は守れたよ。村もまだ生きてる」


 ライラとラシードも傷だらけで戻ってきた。

 皆、生き延びた。それだけが救いだった。


 だが、封印の一部は崩れたまま。

 その裂け目は、大陸全体に広がる脅威の始まりにすぎなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ