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追放された元宮廷魔術師、辺境で育てた弟子と共に王都を滅ぼすか救うか選ぶことになる  作者: マルコ


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第6章 第1話 砂漠を越えて

 オアシス都市を出発したのは、夜明け前だった。

 空はまだ群青に染まり、東の地平線がわずかに赤く色づき始めている。

 ラクダに似た砂漠の獣に荷を積み、私たちは北へと歩き出した。


 後ろを振り返ると、オアシスの椰子が小さく揺れていた。

 もう振り返ることはない。

 私たちの行く先には、黒帆の本拠地が待っている。


 日が昇ると、砂漠はすぐに牙をむいた。

 太陽が容赦なく照りつけ、空気は炎のように熱くなる。

 水袋を口に当てても、すぐに喉が渇いた。


「ひゃあ……焼けそう……」

 マリアが額の汗をぬぐい、ぐったりと肩を落とす。

「杖が熱い……」


「愚痴を言う余裕があるうちは大丈夫よ」

 私は笑って励ましながら、彼女に水を渡した。


 ライラは布を深くかぶり、鋭い目で砂丘の彼方を見つめていた。

「気を抜くな。砂漠には盗賊も獣も出る」


 やがて、遠くに黒い点がいくつも見えた。

 蜃気楼のように揺れながら近づいてくる。


「……人影?」

 私は足を止めた。


 やがて、それが馬に乗った遊牧民の一団だと分かった。

 彼らは砂色の衣をまとい、背中には槍を背負っている。


「旅人か?」

 先頭の若い戦士が声をかけてきた。

 その目は鋭かったが、敵意はなかった。


「ええ。北へ向かっているの」

「北は危険だ。黒帆の奴らが、交易路を押さえている」


 遊牧民の長老がラクダに乗って現れ、静かに言った。

「昨夜も黒帆の襲撃があった。水場を荒らされ、仲間が傷を負った」


 その言葉に、マリアの顔が引き締まる。

「やっぱり……黒帆はここまで来てるんだね」


 私は頷き、長老に尋ねた。

「あなた方は戦わないの?」


「戦うさ。だが我らは砂漠の民、数も少ない。

 よそ者の力を借りられるなら心強い」


 焚き火を囲み、私たちは遊牧民と夜を共にした。

 砂漠の夜は昼とは別の世界だった。

 冷たい風が吹き抜け、空には満天の星が広がる。

 マリアは寝転がり、星々を数えていた。


「リディア、見て! 王都じゃこんなに星、見えなかったよ」

「そうね。世界は広いってことよ」


 私は星空を見上げながら思った。

 この先に待つのは、黒帆の砦。

 そしてザハルとの決着。


 その時、私は何を守れるのだろう。

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