MEKHANEと人2
「…痛ましい刑罰の犠牲者よ。何者があなたを告発し呪いと恥をもたらしたのか。」
技術を司るものMEKHANEは、十字架に貼り付けとなっている一人の男に尋ねました。
男の身体は既に取り返しがつかない程壊れていました。
脚は折られ、肩は外れて肉が伸び切り、そして手足に穿たれた穴には乾いた血の塊が盛り上がっていました。
男は職人の守り神MEKHANEに答えました。
「他人を告発するのはいつも、刑罰から逃れようとする者たちです。彼らを責めないでください。彼らは自分が何をしているのか、分からなかったのです。」
機械の神MEKHANEは言います。
「あなたの身体はひどく損傷している。あなたを救いたい。肉を青銅に、骨を鋼鉄に、血を水銀に。あなたの身体を作り替えよう。そうすれば苦痛なく長生きできるのだ。」
男は答えます。
「私は裸で母の胎をでた。それ故、裸で死のう。」
白金の神は言います。
「私はあなたの言葉を気に入った。人間は悔い改めることが出来る生き物だ。過ちを責めるのではなく、改心させるべきだ。そうして進歩と発展がもたらされる。」
男は答えて言います。
「私は天の父を愛している。」
続けて言いました。
「それ故に隣人をも愛す。天なる父がそう命じるから。」
発展と進歩の神MEKHANEは言いました。
「人間よ、愛が大切。これは素晴らしい。」
神MEKHANEは続けて言います。
「人間は動物と何が違うか? それは協調性にある。敵対し合っていた者たちも、やがて争いを止め、互いを理解し合おうとする。そして敵と敵は手を取り合い、人類愛と技術が世界を改善していくだろう!」
男は神MEKHANEの話を静かに聞いていました。
そして消え入りそうな静かな声で言います。
「天の父が私に帰れと命じます。それ故に私は帰る。」
MEKHANEは言いました。
「あなたは他者を愛すと言いながら人類を見捨てるのか。あなたの心を読んで分かった。あなたには人を癒やす力がある。生きていれば救えた命を捨てて、あなたは去るのか。」
男はうなだれました。
MEKHANEは驚きました。
それほど男は深く、隣人たちを愛していたのです。
やがて長い沈黙の果てに、男は言います。
「主はその御言葉に従われるように崇拝を、犠牲を尊ばれるだろうか。」
「従うことは仔牛の脂肪に勝る。背くことは偶像崇拝の罪に値する。」
「…私が父の言葉を捨てれば、父も私を見放すだろう。」
MEKHANEにはもう言葉がありませんでした。
そして去り際にもう一度男の姿を見ました。
十字架から外され、男達が、女達が、彼を取り囲んで泣いていました。




