表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ものぐさ令嬢は永遠なんて信じない  作者: 海瑠トワ
第二章 休息

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/17

第13話

短めです( . .)"



 夜が明けたばかりで空はまだ薄暗い。

 ひんやりとした風を浴び、羽織っていた外套を掴む。まだ春の気配があちこちに残っており、空を見上げると、微かに香るラベンダーの匂いが鼻を掠めた。


 ある程度の荷物を整理し、馬車へ詰め込む。

 嵩張るようなドレスなどないし、日常的に使う小物にこだわりなどない私の荷物は、比較的少ないだろう。


「しばらく会えないのですね。」


 最後の荷物を載せたところで、後ろから柔らかな声がかかる。

 振り向けば寂しげに紫の目を細めたカイネルが、当たり前のように立っていた。


「王都は騒がしいですから。」


 何故この場にいるのかなんて、無駄な質問はしないことにした私は、出発の準備をしながら答える。ディーネ領までは十日程かけ、馬車でのんびりと向かう予定だ。

 馬や転移魔法の方が早いのだが、道中で金銭を落とし還元するのも貴族としての役目なのだ。という建前のもと、休暇を楽しむつもりだ。


「クレア。準備はできたかい?」


 普段は鋭い緑の瞳を和らげ、私に問いかけるお兄様は、まるでカイネルのことなど目に入ってないようだ。そんなお兄様に苦笑したカイネルは小さく、くす、と笑う。


「準備できましたよ。お兄様も、忘れ物はないですか?」


 今回はお兄様と二人で領地へ向かう。

 丁度視察の予定があったらしく、私と合わせるために仕事を繰り上げたらしい。


「ああ。問題ない。じゃあ、行こうか。」


 お兄様はそう言うと、私へ手を指し出す。


「もう、行ってしまうのですね。」


 お兄様の手にそっと自分の冷たい手を乗せる。

 私に声を掛けたであろうカイネルへ視線を送ると、お兄様が冷たく刺すように口を開いた。


「こんな朝早くに、俺の見送りなんて、ありがとうございます。」


 いつもと変わらない平坦な声で、自分の見送りにしてしまうお兄様に笑ってしまった。お兄様の嫌味など、分かっていて笑うカイネルの方が、今は大人に見えてしまう。


「いえ、貴方方は王家にとって欠かせない存在ですから。」


 大人げないお兄様をスルーして、カイネルは私にそっと近づいた。

 彼がふと身を傾けると、風に乗って香りが届く。清らかで優しい、ネロリとラベンダー、それに重なるようなサンダルウッド。

 カイネルらしい香りに、ほんの少しだけ緊張してしまった私は、お兄様の手をきゅっと掴んだ。


 内心とは裏腹に、感情が出ない顔でカイネルを見上げると、彼は夜空のような綺麗な髪を揺らす。


「私は、待っています。」


 何かを覚悟したかのようなカイネルは、真っ直ぐに私を見据えて宣言した。ずきんと胸が痛み、何も言えないことにほんの少し罪悪感のようなものが沸いた。そんな私の心情を理解したかのように、彼は曖昧に笑う。


 今まで黙って見ていたお兄様は、私の手を引いて庇うように前に出た。


「俺はまだ、貴方を信用していない。」


「はい、承知しています。けれど、私の気持ちは本物です。」


 真剣な顔をしたカイネルは、私をじっと見つめる。その熱い眼差しのせいか、ほんの少し私の顔が熱くなるのが分かった。


 お兄様は、カイネルに向かってふん、と鼻を鳴らした。

 そしてもう興味などないというように、くるりと背を向け、私を馬車に乗せた。


 お兄様が乗り込むときにちらりと見えたカイネルは、なんだか満足げに見えた気がした。


「出してくれ。」


 私の向かいに座ったお兄様の合図で馬車が走り出す。

 長旅用の馬車は、広々としており、その広さが今は何故か落ち着かなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ