ep7 ゲームしてみた
今日が発売日だということで買って来てもらったゲーム。
しかし、そのゲームのパッケージに描かれていたのは魔王のときの俺の姿だった!
ゲームのことはよく分からん……が、
……試しに、やってみるか。
ジイさん、テツさん、ケンさん、シンさん、そして俺が揃ったところで食事の時間になった。誰一人欠けることなく、きちんと揃って食事をすることが当たり前になっているみたいだな。まさに家族って感じがして良いと思う。
そして……
「全ての命、恵みに感謝して……いただきます!」
「「「いただきます!」」」
「……いただきます……」
このジイさんの掛け声も何度も聞いていけば慣れてくる。食材にはそれぞれ命があって、食べられるようになるまでにはたくさんの人たちが苦労して育ててくれたことに感謝を、その気持ちをいつも欠かすことが無いように毎食食前に言っているようだ。
そして、今日も……美味そう!
匂いだけで分かる。すっげー美味そう!!
「若、ホントにいつものアレは……いらないんですかい?」
「今朝も飲んだヤツだろ?甘すぎてそんなに飲めないって」
『コーラ』を食事のときに、自分は飲んでいたようなのだが、とてもじゃないけれど俺の口には合わない。無駄に甘すぎる!こんなに甘い飲み物が世の中に存在するなんて信じられなかった。甘味って珍しいモノじゃないのか?この世界では当たり前のように飲み食いできるようなものなのかよ。……なんつーか、恵まれている世界っぽいな。でも、恵まれ過ぎていて、自分の体が怠けてしまっているのも分かるような気がした。毎日のように甘いモノばかり口にしていればそりゃあ体も弱くなる。だらしなくなる。そりゃあ体力だってつかねえはずだっつの。
だいたいめちゃくちゃ甘いモノを口にするとせっかくの美味い料理をしっかりと味わえなくなりそうだった。ただ美味いだけじゃない。なんつーか、温かい食事はじんわりと体に染み渡っていくような感じがして凄く落ち着くんだ。
だから食事前に甘いモノなんていらねーっつの。
汁物から口にしていくと、ちょっと味は違うような気がしたが、やっぱり美味い。温かさがじんわりと体中に伝わって美味い!この料理って、この中の誰かが作っているとは思うけれど……凄いな。えーっと、五人分だろ?それを毎食作るなんて凄いんだな。
「えーっと、この料理って誰が作ってる……んすかね?」
「今日の食事はケンが作りやしたよ!」
「へぃ!お味の方はどうですかね!?」
「……凄く美味い。料理、上手いんだな!」
「若!くぅ~っ、感激っす!ありがとうございまっす!」
美味い美味いと食事を平らげていくとケンさんは半泣きになりながらも嬉しそうに礼を返してくれた。いや、ホント美味い。時間があったら俺にも料理っていうのを教えてもらいたいぐらいだ。まあ、しばらく俺にはやらなくちゃならないことがたくさんあるんだけれどな。
「「「「ごちそうさまでした!」」」」
「ごちそうさま。今日も美味かったよ」
じゃっかん食いすぎたのか腹が苦しい。この状態だとさすがに走りに行くのは危なそうだな。この状態で走ると……下手をすると吐く恐れもある。せっかく美味い料理を食べたのに吐いたりしたら勿体無いだろ?と、すれば部屋に行って、気になるゲームでもしてみることにするか。
「さて、このゲーム……お、開いた。……コレを差し込むのか……」
部屋に戻った俺は片付いた部屋の隅で『ゲーム』の準備をはじめた。どうやらゲームソフトだけがあってもゲームはできないらしい。本体にセットしないとゲームがはじまらない。このゲームソフトを楽しむためには……あぁ、この機器を使うのか。
すっきりと片付いた部屋でのんびり過ごすのも悪くないが、今はずっと気になっているゲームをしてみよう。名前からして怪しいじゃねえか。なんだよ、この『残念魔王、心変わりをして勇者へ』って。明らかに魔王の存在を馬鹿にしてねえか?ったく……一体どんなヤツが作成したのか知らないが、きっと魔王に恨みでも抱いているのかもしれない。
「って、なんだこりゃ」
四苦八苦しながらゲームをスタートさせると、真っ先に飛び込んできた映像には魔王が勇者パーティーに倒される場面からのスタートとなった。そして、映像に映し出されている勇者パーティーというのが、俺がヤられることになった、あのへんてこりんなパーティーにそっくりだったものだからそれにもビックリすることに。
どうなってんだ、これは!?
そして物語を進めていくと、魔王は殺されるのではなく、勇者パーティーのご慈悲によって命を奪われることはなく、その勇者パーティーの優しさに心惹かれて自分も魔王という立場でありながら勇者になって人生をやり直していく……といった流れになっていくようだ。
つ、つまらん。
コレが……コイツのやりたがっていたゲームだったのだろうか。ゲームそのものに縁が無くて、今初めてプレイしている俺が言うのもなんだが、このゲームは面白いのだろうか?もしこの流れが分かっているのなら絶対に自分で欲しがったり、買ってみようとは思わないだろう。
「……つまらん。やめよ」
とてもじゃないが、最後までやろうとは思えないゲームにゲーム機器の電源も落としてしまった。さて、腹の具合もちょっと落ち着いてきたし、夜の走り込みにでも行くかな。あ、時間的に俺みたいなガキがフラフラしていても大丈夫なのだろうか?
一応、聞いてから外に出てみるかな。
「あ、いたいた。ジイさん。これからちょっと走ろうと思っているんだけれどこの時間帯に出歩いているのってどうなんだ?」
「夜も行くのか?随分と頑張ってるじゃないか。もちろんあまり遅くならないうちに帰ってくるなら走ってこい。くれぐれも事故には気を付けるんだぞ?」
「うん」
ジイさんからの許しも得たし、よし!走りに行こう!少しでも体力を付けるために!
……が、やはり一度や二度走ったからといってすぐに体力が上がるわけじゃない。なにしろコイツの体はぐうたら生活を送り続けていたらしいからな。くっそー、少しは運動でもしろよ!
「はぁっ、ぜぇっ……はぁっ!」
まだまだ体力アップには遠いようだ。少し走っただけで息が上がる。そして、額に浮かぶ汗の量も多い。これは普段体を動かしていない証拠だ。
少し走っては、止まり、そして徒歩で周りを散歩する……ということを繰り返していきながら、そろそろ帰るか、と家へと向かった。
それにしても、家の近くには多くの店が並んでいる。八百屋だとか、魚屋、肉屋、そして酒屋。医薬品などを取り扱っている店もあるようだ。なんか、なんでも揃っていて便利な世界だなあ。ちょっと欲しいものがあればちょこっと出かけるだけで手に入るなんて恵まれ過ぎだろ。
「あ!若!昼間はありがとうございました!良かったらこれ、お土産にしてください!」
「え、あ、ありがとう……ございます」
そう声をかけてきたのは、泥棒騒ぎにおいてバッグを捕り返してやった酒屋の娘さん。たまたま酒屋の近くを通ったら娘さんが俺の存在に気付いたらしい。少しバタバタしていたが、ジイさんたちへの土産ということで大きな酒瓶を持たされてしまった。お、重い……けれども、これも一種のトレーニングとでも思えば苦ではない!
「あら~、若!こんな時間に散歩?」
「こんばんは~若!この時間帯に出歩いているなんて珍しいね!」
俺ってあまり出かけないタイプだったのか?部屋にあれだけのゲームやら本やらがあったんだもんな。きっと必要以上には外に出掛けることはしていなかったんだろう。まったく、だからこんなに弱っちい体をしているんだ。
ゲームの準備をするだけでも四苦八苦。そしてプレイの仕方も分からないから四苦八苦していたんでしょうね。でも適応能力は高いから直ぐに楽しんじゃいそう!でも、今回出てきたゲームはつまらなそうでしたね……残念。
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