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ep6 元魔王、任侠を学ぶ

 テツさんが言ってた『任侠』って一体なんなんだ?

 つか、それが分かれば妙な家……強面連中が一緒に暮らしている理由も分かるんじゃねえか?

 よし、ここは……ジイさんに聞いてみるか!

「彰人が、泥棒を?はは、頑張ったじゃねえか」


 と言いながらなんとも嬉しそうに笑って俺の頭を撫でてくるジイさん。ジイさんの手は凄く大きく感じて、頭丸ごと包まれそうかも……って思った。


「いや、だって。目の前で泥棒だー!って騒がれたら追いかけるだろ。まだ近くにいたし」


 そういうことって当たり前なことじゃないのか?困っていたら、助けを求めているようだったら手を差し出す。そして助ける。……んー、俺の中だと普通なことだと思うけどなあ。


「あ、ジイさん。ちょっと聞きたいことがあったんだけれど……」


「おお、お爺ちゃんに何でも聞いてごらん。……どうした?」


「あー……えっと、なんつったかな……あぁ、そうだそうだ、『任侠』ってどういう意味なのか知りたくて……」


 何処かで何かが倒れたような落ちたような音が聞こえてきた気がしたが、テツさんが何かしたんだろうか。買い物してきた食料でも床に落としたか?

 ジイさんはジイさんで、目を丸くしてから『どう言うべきかな』と戸惑っているようだった。


「急に、どうした?いつもなら部屋に駆け込むかゲームばかりしているお前さんが……何かあったか?」


「いや、別に。気になったからどんなことなのかなって聞きたくなって……」


 そう話しているジイさんと俺は朝、食事をしていた低いテーブルにあちこちに『座布団』を敷いた上に座って話し込んでいた。すぐにテツさんがジイさんの分と俺の分までお茶を用意してきてくれて、なんて用意が良い人なんだと尊敬していた。


「イマイチ……『任侠』っていうのが分からん。だから教えてほしい」


 お茶を静かに口にしているジイさんをじっと見つめているとようやく口を開いてくれた。が、


「今日……彰人は何をしてきたんだ?」


「何って、走ろうと思ったけれど体力無くて歩いていたら泥棒騒ぎがあって捕まえた」


「はは、当たり前のようにお前は言うが、なんでお前は泥棒を捕まえようとしたんだ?」


「なんで?なんでって、あの女の人が困ってたし……」


「その行為も任侠の一つって言ったら正解だなぁ」


 は?

 泥棒を捕まえてバッグを捕り返したことが任侠?そうなのか?もっと堅苦しいような、頭が痛くなるような難しい話だとばかり思っていたけれど、そんな簡単なことなのか?


「基本的な考えとしては、弱者を助け、強者を挫く……この意味は分かるか?」


「あぁ。分かる」


 弱い立場にある者がそのままでいていいはずがねえ。自分より弱いからって無視したり、自分には関係無いものとしてなんかみられるわけがねえ。そして自分よりも強いと思っているからって勝負もせずに逃げ出していいわけがあるもんか。戦うときには戦うべきだ。そう、思ったから俺はあのとき……あの、へんてこりんなパーティーにいた修道女のことも無視することができなかったんだと思う。


「時には自分が犠牲になることがあったとしても義理や人情を大切にするって考えだ」


「えっと……その『義理』と『人情』っていうのは?」


「はは、簡単に言えばお前が酒屋さんの娘さんにしたことだ。人助けだよ」


 そ、そんなものなのか……。なんか、すげぇ言い方してる気がしたからもっと複雑な意味でもあるんじゃないかと思って緊張しながら聞いていた。でも、そういうものか。そんな簡単なことをしている家……なのか。

 でも、コイツは……彰人っつーヤツは、そんな簡単なことさえもできていなかった、情けないヤツだったんだろう。やっぱ腹が立ってきた。くそっ!


「彰人。お前さんが急にどうしたとか何かあったとか詳しいことは分からん。が、お爺ちゃんはいつでもお前さんの味方だからな?もちろんテツや『ケン』『シン』たちも味方だ」


 『ケン』さんと『シン』さんも今朝一緒に食事をした人たちだろう。つまり、この家の家族ってわけか。


「さっきテツさんが『組』がどうこうって言ってたんだけれど、それって明日の会合と関係あることなのか?」


「やけに質問が多いなぁ。組っていうのはウチで言えば八神家のことだ。人によっちゃあヤクザだとか暴力団だとかって思う輩もいるかもしれねえが、少し違う。お爺ちゃんたちは決してお天道様に顔向けできないような仕事をしているわけじゃねえよ?今日、お前の姿をみて挨拶してきてくれた人もいたんじゃないか?お爺ちゃんたちは人助けをしている。時には喧嘩するほどに揉める騒ぎが起こることもあるが、無意味に揉めているわけじゃねえんだ。何かを守るために、大切に思うがゆえに衝突することもあるってだけさ」


 ……ハッ!ついつい、ジイさんの言うことが凄いと思ってしまってついつい無言で聞き入ってしまっていたようだ。テツさんが用意してくれたお茶を慌てて口にしていくと、小さく咳払いし……


「凄えと、思う。えっと……何かって聞かれると難しいんだけれど……何かを守るとか、大切にしていく気持ちとか恰好良いんだな……」


「はは!ちょっと前のお前は、『こんな世界の跡継ぎなんて嫌だ!』って言っていたはずなんだがなぁ。学校でもいろいろあったようだし、嫌なら無理に学校に行かせるつもりも無かったんだが……吹っ切れたというか、考えでも変わったかのような言い分だなぁ」


 ぎくっ!

 だって、俺は彰人ってヤツじゃねえし。魔王アザゼルだし。その何かが起こったらしくて中身だけ俺が入っちまったみたいだし。俺は彰人じゃねえんだ……とは言えねぇしなあ……さて、どうしたもんか。


「ただいま、戻りやしたー!『若』!これ、やりたかったって言ってたゲームっすよね!ちょうど発売日だったんで買ってきましたよ!」


「え、ゲーム……あ、ありがとう……」


 『ケン』さんか『シン』さんのどっちかだろう。その人が取り出したのは朝、部屋中に散らばっていたモノだ。これが『ゲーム』だったのかよ!おもわず、そのゲームをまじまじと眺めていると『あれ?』と違和感を抱いた。

 このゲームの名前は『残念魔王、心変わりをして勇者に』。しかし、その描かれている絵は……コレは……『俺』じゃね?

 あ、魔王だった頃の俺の姿がゲームのパッケージに描かれている!毎日のように見ていた姿なんだから間違えるはずがねえ!これは俺だ!どういう内容のゲームなのかは全く分からんが、この絵は俺に間違いない。一体どういうことだ?俺……の、中身は今ここに彰人の中にあるはずなのに。


「あれ、もしかして間違えちゃいましたかね……?」


「あ、いや、ううん!ありがとう!」


 ゲームなんてやったことないが……時間があるときに、ちょっとやってみるとするか。つか、残念魔王ってなんだよ。まるで魔王っていう存在が弱っちいみたいな書き方しやがって!魔王舐めんじゃねえっつーの!

 さーて、任侠とやらもだいたい分かったことだし。取り敢えずやることが無い。このままお茶を片手にのんびり……っつーのは、なんとなく性に合わん。


「……あそこにある刀って……本物、だよな……」


「あぁ、もちろん真剣だ。彰人にはまだ早いだろうから持って遊んだりしちゃダメだからな」


「あ、遊んだりしねえって!ただ、あんなに飾っているなんて……凄いと思って。珍しいモノ……だよな?」


「まあ一般的な家庭には今の時代は置いてないだろうよ。だが、ウチはちょっとそこら辺が特殊だからなぁ……家の守り神みたいなモノ、か?」


 ご神体だとか、そういったシロモノか?

 揉め事とかもあるらしいから大怪我だとかを避けるためを考えれば、なるほど……と考えたくなる気持ちは分かるかも。

 なんとなくだが、任侠について知ることができた。それにジイさんって話上手なのか、俺が聞きたいことをきちんと説明してくれるのも有難い。しかし、ゲームか……俺の絵が描かれているのが微妙に気になるんだよなあ……。

 あくまでもヤクザだとか暴力団とかとは違った意味合いで今回登場するお家だったり、組だったりを書かせていただいています。つまり、いい人たちっていう意味で。

 ちょっと難しい言葉も飛び交うかもしれませんが、そこはお爺ちゃんが説明してくれるので!


 良ければ『ブックマーク』や『評価』などをしていただけると嬉しいです!もちろん全ての読者様には愛と感謝をお届けしていきますよ!

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