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ep5 泥棒捕らえたぜ

 外に散歩、もとい、ランニングをしたかったのだが、体力無さすぎのこの体でずっとランニングは無理だった……情けねえなぁ……。

 そんなとき、泥棒騒ぎを聞きつけた俺は泥棒野郎を捕まえることに成功したのだ!

「さっさとその盗んだバッグを返しやがれ!」


 泥棒野郎の腕を捻り上げてやると『いででで!』となんとも情けない悲鳴をあげつつ、やっとバッグから手を離したから二度とコイツの手に渡さないようにしっかりとバッグを手にした。よし、これでこのバッグをさっきの女に返してやれば一件落着ってな!


「ねえ、アレって……」

「そうだよね……八神さんとこの……」


 ん?やけにあちこちから視線と、ひそひそ話が聞こえる。今『八神』って聞こえたし、俺のことか?まあいいか。バッグさえ返ってくれば良し、とばかりに泥棒野郎を掴んでいた手を離すと意外にも泥棒野郎から弱弱しい声がかかった。


「け、警察には連れて行かねぇのか?」


「は?俺はコイツさえ返してもらえば良いんだっつーの。アンタが警察に行きたいなら別だけれど……」


 『警察』なんとなくだが、あんまり近付かない方が良い場所のように感じた。どういう所なのかはちょっと分からないけれど、この泥棒野郎のように悪いことをしているヤツが行くような場所なんだろう。本能的に俺は絶対に行きたくねえな。

 お。ゆっくりだが、このバッグの持ち主らしい女もこっちにやって来たみたいだ。バカだなあ……さっきの所でゆっくり待っていれば良かったのに。


「ほい。……もう二度と盗まれるんじゃねえぞ?」


「あ、ありがとうございます!……って、八神さんのところの『若』ですよね?凄い!泥棒からバッグを取り返してくれるなんて!感激しました!」


「は?はぁ……?」


 なんだ、コイツも俺のことは知っているってか?つか、さっきっから『若』『若』うるせえっつーんだよ。


「今度ウチの店に寄ってください!おまけ、させてもらいますから!」


「店?」


「ウチ、酒屋をやっているんです!『若』はまだ飲めませんけれど、お爺さんたちにもよろしく言っておいてくださいね!」


 酒ぐらいはいくらなんでも俺でも分かる。飲みすぎると体に悪いっていうアレだろ。前は、たまに仲の良いヤツらを集めて盛り上がってたときによく飲んだなぁ……つか、今のコイツはまだ飲めないのかよ。つまんねえ……。


「おいおい!あの『若』が泥棒を捕まえたんだってよ!」

「え、そんなことできたの、あの子!すっごーい!」

「『若』恰好良いじゃない!」


 いつの間にか人だかりができているし。しかも、誰か分からんヤツから背中をバシバシ叩かれている。『よくやったなぁ!』と一応褒めてくれているらしいが、背中が痛い。これも体が弱っちいせいだろうか。つか、コイツら、全員……俺と認識があるヤツなのか?一気に村人に囲まれた魔物の気持ちがよく分かるぜ。誰かも分からんのに囲まれると驚くし、どうして良いのか分からなくなるよな。


「ちょ、えっと……とにかく、そこを開けてくれ!」


 やっとの思いで人だかりから抜け出せると荒い息が再び襲ってくる。さっきまでは泥棒を捕まえることに必死だったせいか、自分の体力の無さなんて考えずに走ってきちまったもんなあ。一気にドッと疲れたぜ。


「あれ、『若』じゃないっすか!どうしたんです?こんな所で」


 あー……確か家にいたな。『テツ』とかって呼ばれていたヤツだったか。


「あー、ちょっとな。泥棒騒ぎがあったから……」


「は!?まさか『若』何か捕られたんすか!?」


「違う違う!俺じゃねえよ!女の人が……バッグ捕られたから捕り返してやってたんだよ」


「……『若』が?」


「俺が!」


 何度言わせるんだ、まったく。

 だいたい、俺はそんなに頼り無さそうに見えるのか!?あー……見えるかもしれん。体力も無えし。実際、今はかなりへとへとで膝に両手を付きながら必死に荒い呼吸を整えている途中だ。


「す、凄いじゃないっすか!こりゃあ、おやっさんが聞けば大喜びですぜ!」


「はぁ!?なんで?」


「だって今まで『若』が人助けなんてしたこと……ありませんでしたよ?」


 頼りない、体力無し、そして人助けの経験も無し、ときたか。コイツ……だらしねえ上に、人としてどうなんだ!?普通、困っているヤツがいたら何とかしよう!って考えるのが人間じゃねえのかよ!性格とかも根性無しなんじゃねえか!?


「つか、俺ってかなり根性無しだったか?今まで」


 つい、たずねてしまった。いてもたってもいられなくて、つい、な?


「あー……えっと、こう言うのもなんなんですが……」


「あ、うん。分かった。今の反応で、なんとなく分かった」


 体力無し、頼りない、根性無し……最悪じゃねえか。今までの俺ってどんな生活してたんだ?あの、ぐうたらなモノが散らかってばかりいる部屋で、甘いモノばっか口にしまくってて……これ、人として終わりじゃね?


「あー……そういや、さっき助けた女が酒屋だってよ。よろしく言っといてくれってさ」


「酒屋さんっすか!いつも贔屓にさせてもらってる所の娘さんっすね。『若』~、それにしても、やるときにはやるんすね!見直しましたぜ!」


「そりゃ、どうもー……」


 つか、今までがダメダメ過ぎたんじゃねえか?つか、俺が身内だったらシバく。徹底的にシバいて根性叩き直してやる。……コイツは、『テツ』は、きっと優しそうだから無理だな……とすれば、あのジイさんか。帰ったらちょっと頼んでみるか。


「つか、『テツ』さんは……こんなところで何してんだ?」


「買い物帰りですぜ。食事の」


 両手に袋を下げているから何が入っているかと思えば……食料を買い込んできたのか。

 ん、と俺が片手を差し出すと『どうしやした?』と不思議そうな顔をしている『テツ』。


「一つ、持つ。つか、持たせろ。……自分の体力の無さに呆れたから少しでも何か重いものを持って帰る」


「!!わ、『若』!……っ、ぐす……う、嬉しいっす!嬉しいっすけど!これは自分の仕事なんで!」


「はぁ!?渡せっつってんだから一つぐらい寄越せよ!だいたい同じ家に戻るんだろ。アンタが大荷物抱えてるのに俺は手ぶらって……おかしいじゃねえか」


 そう言うと、半泣きのテツはしぶしぶ……といった様子で、それでも荷物の中では一番軽そうな袋を持たせてくれた。いや、できれば重い荷物を持ちたかったんだがな。まあ、いいか。

 そして家までの道中、さりげなく気になっていたことを聞いてみることにした。


「あのさ……ジイさんとか俺たちのいる家って……」


「もしかして、『任侠』の家が嫌だったとか……すか?」


「『任侠』?」


「あー……組っつーか、なんと言うか……ちょっと変わった家なのは承知してやす!けれど、ご近所さんとは上手くやれてますし、八神のおやっさんも『若』も近場じゃあ結構人気だったりするんすよ?」


 分からん。

 『任侠』……にん、きょう?『組』がどうこうって話もしていたな。それが、俺が周りから『若』って呼ばれていることと関係があるんだろうか。それらしき読み物だとか資料だとか……見ることはできないだろうか。


「ただいま、戻りやしたー!」


「……ただいま……」


「おお、二人とも一緒だったのか。おかえり」


「あ、聞いてくださいよ!おやっさん!『若』が泥棒を捕まえたらしいですぜ!」


 また、その話を蒸し返すのかよ!このジイさんに言ったらなんて言われるか……でも、このなかだと唯一の血縁者ってこのジイさんだけなんだよな。……いろいろ、話を聞いてもらうなら適任か?

 八神家は世間、ご近所さんからは決して遠目に見られている存在なんかじゃなく、親しまれている……ことが希望!困ったときにはお互い様とか言いながらめっちゃ人助けもしちゃっているのが八神家です!


 さて、任侠って言葉が出てきましたが、魔王には理解できるのでしょうか!?

 良ければ『ブックマーク』や『評価』などをしていただけると嬉しいです!もちろん全ての読者様には愛と感謝をお届けしていきますよ!

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