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ep3 八神家

 どうやら俺の体の持ち主の両親は死んでいるらしい。

 そして、ジイさんと……何やら強面の人間たちに囲まれた生活を送っているようだ。


 取り敢えず……腹ごしらえでもするか。

「……いただきます……」


 ホカホカと湯気が立っている汁物を口にしてみると信じられないぐらい美味かった。

 思わず『うまっ!』って口に出して言いたくなったが、そこはなんとか堪えたのだが……ここの人間たちは毎日、毎食こんな美味いものを食べて過ごしているのか。みんな平然と食っているが、こんな美味い食事が当たり前なのだろうか。……かなりの金持ちなのだろうか……だが、普通の金持ちにしてはちょっと違和感があるというか……金持ちってキンキラキンの類が好きだろう?だが、コイツらを見てみろ。ゆったりとした衣服、動きやすそうな服装ばかりに身を包んでいて、とても高そうなモノを身に包んでいる感じがしない。

 が、さっき亡くなっているらしい両親とやらに顔を出したとき、俺の視界には飛んでもないものが目に入ってしまったので思わず見てしまった。

 アレは……刀、とかって言われている装備だよな。確か、東国辺りにいるヤツらが好き好んで装備しているという武器の一つだ。もちろん刀自体そうそう出回っているものではない。武器屋で取り扱っていたとしてもかなり高額な値段だったように思う。俺もそんなに『刀』については詳しい方ではないが、名刀やら妖刀やら、様々な呼ばれ方をしているモノもあったはずだ。そんな珍しい武器が、この家には何本も壁に飾られている。

 あ、有り得ないだろ、こんなの。


「あ、そう言えばおやっさん。次に会合が開かれるのは明日でしたっけ?何か入り用のモノはありやすか?」


「ああ、そう言えばそうだった。特には無かったはずだが。確かウチと同じく関東圏内の皆さんが集うんだったか。……彰人あきと。どうだ、少しお爺ちゃんと一緒に来てみるか?」


「おやっさん!?『若』は……『若』にはまだお早いのでは……」


「普段から付き合いのある人と顔を合わせるだけだ。何も遠慮するこたぁ無いさ。親戚同士の挨拶とでも思えばいい。……彰人?聞いているか?」


 は、え、俺!?


「あ、あぁ、聞いてる聞いてる!」


 俺って『彰人』っていう名前なのか。誰のことを呼ばれているか分からなくて黙々と食べていたぜ。『彰人って誰だ?』なんて言ってみろ。頭がおかしくなったヤツとでも思われてワケ分からん薬やら飲まされたり医師にみせられるに決まってる!

 俺は彰人、俺は彰人、俺は彰人……よし、理解完了!


「えーっと、その会合?俺みたいなガキが行っても大丈夫……なんすかね?」


 鏡で自分の姿を見たとき、かなり若そうだったよな、この体。何歳ぐらいだ?こうやって集団生活しているってことは自立できていないってことだ。つまり、まだまだ手のかかる十代ってところなんだろう。


「はは、どうした。今日は。やけによそよそしいじゃねぇか。もちろん普段から世話になっている人に挨拶することは悪いことじゃねぇよ?他の家の人たちだって跡取りであるお前のことを気にしてるんだ。確かにまだまだお前さんは手がかかる子どもかもしれないが、子どもは手がかかって当たり前だろう?遠慮なんかいらねぇよ」


 そ、そういうもの、なのか。

 ジイさんは俺を真っすぐに見ながら遠慮はいらない、明日が楽しみだ、と笑って食事を再開していった。

 強面……と思っていた人間たちも、このジイさんとのやり取りは楽しそうだし、もちろん俺とも楽しそうに話している。家族?なのか、コイツら。

 つか、跡取りって何だ?この家の?だったら、他に候補なんてコイツらがいるだろう。俺よりも年上そうだし、跡取りになる順番からいったら俺は一番低いんじゃねえか?


「彰人の母さん……あねさんがお亡くなりになったときはこの八神家も終わりかと思って残念に思っていたもんだが、お前がいたんだよな……やっとここまで成長してくれて……ぐすっ……天国の姉さん、兄さんもきっと笑ってくださっていることだろうよ!」


 涙ぐんでいると思っていたのに、途端に笑って、バシッと結構な勢いで背中を叩かれると思わずむせ返ってしまった。泣くか笑うか、どっちかにしろよ。


「……ごほっ!ちょ、背中!!」


「こ~ら、テツ!食事中に背中を叩くな叩くな。彰人が困ってるだろうに」


「あ、すんません!おやっさん、『若』!」


 げほげほっ、あ、あっぶねぇ……ホント食ったモンが逆流してくるかと思ったぜ。それにしても、こんな大の大人が涙ぐむほどに俺の両親っていうのは慕われていたんだな。さっきの写真の二人か。

 そして、だんだん……少しずつだが、この家のことが分かってきた気がする。

 八神やがみ。これが、俺の家の名前だ。つまり、八神彰人やがみ・あきと。これが俺の名前。

 会合だとかいろいろ言っているが、この強面の連中……血は繋がっていないが、きっと組織的な意味で身内のヤツらなんだろう。こうやって同じテーブルで食事をしているぐらいだ。仲……っていうか、信頼度は高そうだな。


 あ?魔王は頭が弱そうだと?なーに言ってやがる。魔王だって世の中の情勢のことは知っていなきゃならねえ。少しでも異変がありそうだと分かれば手を下すか、見守るか……って考えていくものなんだ。ずーっと玉座にふんぞり返って過ごしてばかりいると思うなよ!人間の中にも、そして魔物の中にも強い存在が生まれてきたとなれば情報を集める必要があるし、万が一敵対するようなことにでもなれば自分の身、そして大切にしている仲間たちを守るためにも実力を付け、高める必要があるんだ。

 森に出掛ければ知識を高めて役立ちそうな薬草を集めることもしていたし、時々魔王っていう身分を隠しながら人間の住む町まで買い物に行って、今はどんな武器や装備が流行っているのか、どれほど強力な武器があるのかっていう情報を知ることも大切だったんだ。あ?魔王らしくねえだと?それは、お前たちの魔王のイメージと違うだけだろう。少なくとも俺は、魔王のときにはいろいろな行動を起こしていたんだ。それに、戦うことも別に嫌いじゃなかったしな。別に人間を滅ぼす気なんて無かったし、腕試し程度に相手をしてやるぐらいだったらいつでもウェルカムだったんだ。

 あの、へんてこりんなパーティーが来るまでは、な。


 あー、くそっ!思い出したらまた腹が立ってきたぜ!つか、この体にもムカついてるんだよ、俺は!なんだよ、このひ弱の体!


「あのさー……コレ、食べたら……体力付けに……つか、軽くランニングでもしてきて良い……かな?」


 カタカタン……

 おい、誰だ。今、箸を落としたヤツ!


「わ、『若』?今日、なんか変ですぜ?」


「あ、あぁ……ランニングだなんて……どうしやした?」


「いや、なんか体が鈍ってるっていうか……とにかく、動かしたい……と思って」


 え、そんなに変なことなのか!?そう思われるぐらい、コイツは運動とは無縁に過ごしていたのか!?ちっくしょー……前の『彰人』がどんなヤツかなんて知らねえけど、ソイツにもむしゃくしゃしてきた!

 刀……日本刀ってヤツですな!

 すっげー恰好良く見えるのは自分だけでしょうか!?そういう組織が出てくる作品なんかを見ていても……あ、いや、見させていただいていても恰好良い!って思っています!!


 良ければ『ブックマーク』や『評価』などしていただけますと幸いです。そして全ての読者様には愛と感謝をお届けしていきますよ!

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