ep18 提案
ジイさんに俺の正体を打ち明けた。
さすが、というべきか……やっぱり俺の変化には感じているところがあったようで、いつから話を切り出そうか悩んでいたみたいだった。
俺が魔王だってことを打ち明けてもジイさんは変わらずにジイさんでいてくれた。は?意味が分からんだと?だから、ジイさんは俺の言ったことを信じて、受け止めてくれていたってことだよ。しかも……。
「今のお前さんからすればこの家っていうのは見るのも聞くのも初めてのモノばっかりだったんだろう?そりゃあ戸惑って当たり前だなぁ。苦労して当然だ……それにしても中身だけが他人のモノに入れ替わるなんてことが起こるとは……現実に起こるものなんだなぁ」
いろいろと苦労してきた俺のことを理解してくれて、そしてまるで何処かの物語のような現象に驚きながらも『ははは』と笑っていた。
ただ、さすがにウチのヤツら(ケンさんテツさんシンさん)には今しばらくは黙っておいた方が良いとジイさんから言われてしまった。ジイさんよりも歳の若いヤツらだからゲームのし過ぎで頭でも打ちました?とか、ゲームの世界と現実がごっちゃになってしまってませんか?とからかわれる可能性が高いとのことらしい。確かに、俺でももしも目の前でこんな話をされたら素直に信じることができるだろうか……そう考えるとジイさんって凄いんだなあ。いや、もちろん俺のことを信じていなきゃ言うことを信じてくれないだろうし、やっぱ家族のことは信じてくれているらしい。
「まあ、こんなことを知ったからには協力出来ることがあれば良いんだがなあ……」
「う~ん。俺的には彰人の中身が何処にあるのかが一番気になっているんだよ。俺が入ったことで何処かに行っちまったってことは確実だろう?それが幽霊みたいにそこら辺をフラフラしていたらいろいろな意味で危ないじゃねえか」
「!はは。お前さんは、そういう性格なのか?自分のことよりも他人のことを優先しているなあ。魔王っていう立場にいたようだが、それはそれは周りから慕われていたんじゃないか?」
「慕われていたかどうかは分からん。でも、困っているヤツがいたら助けようとはしていたかな……」
『そりゃあ凄いなあ』と穏やかに笑いながら感心しているジイさん。俺は今まで自然とそんな生き方をしていたものの、俺の生き方っていうのは誰もが出来るようなモノじゃないらしい。そうなのか?
「目の前に困っている人がいたら助ける。こりゃあ当たり前のことかもしれないが、そうそう誰にも出来ることじゃないんだぞ?もちろんウチみたいな家にいるからって誰もが人助けが出来るってワケでもないからなあ」
「ああ、任侠ってヤツだろ?」
「はは、お前さんからすれば任侠とかって言葉も初めてだったんだろうなあ。ちょいとした偏見を持っている人たちもいるかもしれないがお爺ちゃんたちは無駄な争いはしていないさ。でも、大切なモノを守るためだったら大喧嘩になるかもしれないなあ」
「大喧嘩!?……全然想像がつかん」
ジイさんも喧嘩ともなれば本気で手を上げたりするんだろうか。強硬なヤツらにも逃げずに真向から勝負することもあるんだろうか。最近は、抗争なんかも減ってきたし、周りとの付き合いも良くなってきているから滅多なことでは喧嘩らしい喧嘩に発展することは無くなってきているらしい。まあ平和でいられればそれが一番だよな。
「彰人の中身……こういう場合は魂って言うのが正しいか?もちろん心配だが、今はお前さんもウチの家族だから困ったことがあればお爺ちゃんを頼ると良い。もちろん他の家族にだって頼っても良いんだからな?」
「あ、うん。えっと……お世話に、なります……」
「はは!家族なんだからそうかしこまることは無ぇよ?でも、まあこちらこそお世話させていただきます……と、返さんとなぁ」
なんとなく改めて挨拶をしておきたくて軽く頭を下げるとジイさんの方も俺と同じように頭を下げて挨拶を返してくれた。はたから見ると『何をしているんだ?』って図になっているかもしれないが、俺とジイさんとの間に生まれた絆?だとか、縁?とかになるんだろうか。俺の本当の正体を知る重要な人物だ。これからも力を貸してもらおう。
「ただいま、戻りやしたー!!」
「ただいまーっす!!」
この声は、シンさんとテツさんか。夕方の買い出しの帰りだろうか。アレ、それにしては荷物が少ない。広間に来た二人は俺とジイさんがどんな話をしていたのか知らないはずだが、『相変わらず仲が良さそうっすね!』と笑っていた。もともと彰人とジイさんって仲が良かったりしたんだろうか。でも、彰人ってぐうたらで学校にも行かず、根性無しのようなヤツだったんだろう?ジイさんはそんな彰人を叱ったりしなかったんだろうか。
「お帰り、二人とも。何か変わったことは無かったかぃ?」
「そうですねぇ……あ。そう言えば小さなガキ……子どもに感謝されちまいましたけれど何か心当たりってありますかぃ?」
「子ども?」
「そう言えば!若にありがとう!って伝えておいてくれって言われましたねぇ。小学生の子どもでしたよ」
……子ども、子ども……小学生……あ!もしかして、アイツか!?
「そいつ、もしかして……」
「彰人。心当たりがあるのかぃ?」
「えーっと……イジメられてる感じの小学生に、なら会った。公園のゴミ箱に教科書が捨てられていて俺が拾いながらイジメられているのは心が弱いからだ、こんなことをしているヤツらには、はっきりと嫌だ!ってやめてくれ!って言ってやれって……確かそんなことを話したような……?」
「「若……小学生に、めっちゃ憧れられてましたよ!!」」
「はぁ!?」
「はは!彰人。偉いことをしたもんだなぁ。うんうん、お前はそれで良いさ。自分がしたいと思うことをそのまますると良い。きっと気持ちは相手に伝わるはずだからなぁ」
あのときのガキは、きちんと言い返したのか。俺とはたった一言二言言葉を交わしただけだっていうのに、素直に俺の言う通りにしたのか。それで解決しちまったのかよ。つか、あのガキにそこまでの勇気があったんだなあ。きっとあのときのガキはこれからイジメられるようなことにはならないと思う。良い感じでいけばそのイジメっこたちとも絆みたいなものが生まれて友達とかになれたりするんじゃないだろうか。そうなったら……良いなあ。俺は……彰人のヤられていたことも近々何とかするべきだろうなあ。ったく、何処のどいつだ。彰人をイジメていたヤツは。まあ同じ学校の連中だと思うし、学校に行けば自ずと分かるんだろう。
「……ジイさん。ジイさんって腕も立つのか?」
「お、いきなりどうした?」
「……俺の体を鍛えたい。こんな弱っちい体でいたくねえんだよ。心はもちろんのこと、体が弱いままじゃ何も出来ないからな」
シンさんとテツさんはいきなりの俺の発言に目を丸くするばかりだったが、ジイさんだけは違った。じっと俺の顔を見てから時間を掛けて『……よし』と大きく頷いてくれた。
「お爺ちゃんはいつでも良いぞ。今からやるか?ただ、家の中ではさすがになぁ……」
「公園……は、さすがに子どもたちがいるもんなぁ……河原みたいな所は?」
「「え、え!?マジですかぃ!?」」
「大マジだっつーの。なんだよ、俺がこういうこと言うのって変なのか?」
「いや、変って言いますか……ガラじゃないと言いますか……」
「いいや?別に変なんかじゃないさ。お前が決めたんだろう?だったらお爺ちゃんはとことん付き合うまでさ」
ジイさんと目が合うとお互いにニッて感じで笑みを浮かべ合っていた。するとシンさんとテツさんは二人して顔を見合わせては首を傾げていたものだからそれが面白くてついつい小さく噴き出して笑ってしまった。
いよいよ、お爺ちゃんに鍛えてもらうぞーっ!!!おーっ!!!
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