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ep1 魔王死す!

 魔王は勇者が倒すもの、なんて誰がいつから言い出したんだ?

 は?魔王は『悪』だと!?

 ふざけんな!

 俺は魔王だが、人様に迷惑なんて掛けたことは無ぇよ!

 それなのに……なんでか知らんが、俺の城に勇者ご一行が来ているって話が飛び込んできた。

「魔王アザゼル!やっとここまで来た……俺たちはお前を倒すために、ここにやって来たんだ!」


 なんだ、アイツ。

 つか、アイツが持っている武器って聖剣って呼ばれている類のモノじゃねえのか。えくす……えくすばかー?いや、違うな……えーっと、あ、そうそう!エクスカリバー!だが……今時、聖剣なんかで簡単に魔王が死ぬかよ。だいたいアイツの……勇者を名乗っている御一行様っつーのが、妙にへんてこりんだ。

 魔法使い?らしき女は、やけに布面積の少ない装備をしている。大きな盾を持っている防御専門らしき大男は、デカイ……っつーか、横にデカい!太り過ぎだろ!そんで、回復役だろうか……ヒーラーっぽい修道女は自分の装備している杖に頼りきっていて立っているのがやっとって状態じゃねえか。既にゼエゼエと息を荒げている。城の入り口から俺が今いる玉座に着くまでに、何かひと悶着あったんだろうか。


「食らえ!」


「っと、危ねぇじゃねえか!何しやがる!」


「何ってぇ~……魔王を倒しに来たんでしょぉ?そぉ~れ!炎よ~いっけぇ~!!」


 ブンッ!と大きく聖剣をなぎ払う男からひらりと避けていく。……遅くね?コイツ、腕の振り、遅過ぎだろ!!


 コイツらが、本当に勇者ご一行?

 確かに勇者風の男の勢いは強い。勢いはそこそこ褒めてやっても良い。力も強そうだ。が、所詮はそれだけだ。聖剣をただ持っているだけで基本的な身体能力が備わっていない。ごりごりの力押しでなんとかなると考えている男だ。聖剣の本来持っているはずの能力を何も発揮できていない。ただ力でぶん回しているだけだ。力で魔王を倒せるなら世界の勇者を目指す旅人たちはいくらでも筋トレしたり、力を付けるトレーニングをすれば誰だって魔王を倒せる実力を持つことができるだろう。

 魔法使いの女も……なんだ、その気合いの入っていない魔法は!魔法よりも色気に力を注いできたんだろうか。あんな程度の魔法なら直撃したところで俺の服すら燃やすことはできねえよ。魔法をきちんと扱う立場なら色気よりも魔力を鍛えろ!だいたい色気っつったって、全然俺には効かん!心惹かれる部分が何一つ備わっていない。その年代の年増がどんなに頑張ったって誰も目を奪われたりはしないだろ。

 大きな盾を持っている……デブは、まったく動く様子が無え!動けよ!そんでもって、少しはその無駄な贅肉を落とせ!お前だって一応は勇者ご一行の一員じゃねえのかよ!何もしてねえのに、その顔中から滴り落ちている汗はなんなんだ!?そんなに汗掻いてるくせに全然痩せねぇのは何なんだよ!おい、こら。勇者が戦ってるそばで何飲んでんだ!てめぇ、一人で休憩か!?好きなモン飲んで一人だけくつろいでんじゃねえよ!

 そして最後の……ヒーラー役の修道女。なーんか、さっきからコイツの様子がおかしい……気がする。特に何かしている様子は見られないのだが、どんどん顔色が悪くなってきている気がする。なんだ?何をしている?……って、おい!ちょっと待てよ。この修道女が持っている杖!確か、いばらの杖か!?


 いばらの杖っていうのは、仲間に攻撃力アップ、守備力アップ、敵に合わせた耐属性を与えることができる、いわば補助的な効果を与える装備の中では万能の装備だ。しかし、その反面。仲間のことは助けることに長けているが、その杖を持ち、使う術者にはいばらが纏わりつくのように全身に激痛をもたらすっていう最悪な杖だ。こんな呪われそうな杖なんて普通だったら誰も使うはずがない。せいぜい使うのは物好きなマゾ野郎だったり、自分が傷付いてでも仲間を優先に!って考えているヤツぐらいしか使わないだろう。


 よくよく見たら他の奴らの装備も、おかしい。初見で、へんてこりんと思ったのはそのせいだったのか。勇者もどきは見た目は確かに勇者だ。バランスの良い装備、手には聖剣。だが、聖剣はそんなにブンブン振り回して攻撃するようなもんじゃねえよ!聖剣には秘められている力がある。その力があれば例え俺でも無事では済まないだろう。が、コイツはその秘められた力そのものを知らないんじゃねえか?

 魔法使いの女は、確かに魔法は使える。が、しょぼい。やっぱり魔法に必要な魔力をきちんと鍛えてきていないんだろう。いやいや魔王が過ごしている城に乗り込んでくる前に、普通に、悪質な魔物退治でも繰り返して鍛えてから出直してこいよ……。試しに魔法使いの女が放った炎を片手で受けてみた。……が、手元が温かく感じる程度でしかない。もちろん俺の手の平は火傷なんてものは無し。見た目は炎としての形を出せているのに中身(魔力)がともなっていないようだ。


「そんなぁ~、私の炎がぁ~!」


 ひどく残念がっているところ悪いが、この程度の炎じゃ、そこら辺にうようよしているスライムだって焼き払うことはできねえんじゃねぇか?しょぼい魔法……しょぼ魔法で良いか。だいたい、コイツは本当に魔法使いなのか?それらしき魔力を全然感じねぇ。だいたい魔法使いっていえば目にははっきり見えなくても体中からあふれでてくる魔力のオーラってもんが感じられるものなんだ。なのに、この女……何しに来たんだ?


 デブが持っている大盾も本来の力が発揮できていねえじゃねえか!盾を持つモンは、もっと積極的に前に出て戦うもんだろうが!それを……このデブは、重い盾をただ後ろに控えて構えているだけ。おい、そんなデカイ盾を床に置いてんじゃねえよ!床が傷付くだろうが!ちゃんと持て!こういう役割を担うヤツは重装備がお約束ってモンだが……このデブに合う重装備を揃えることができなかったんだろう。装備屋もこのデブに合う装備を用意することに苦労したんだろうな。


「はぁー……はぁー……っ……わ、私が……頑張らないと!」


 どんどん顔色が悪くなっていく修道女。この中で一番戦っている感が強い。実際に荊の杖で仲間たちに攻撃や守備効果をもたらせているのかもしれないが、その前にコイツの方がバテそうだ。ったく、なんでこんなへんてこりんなパーティーなんだ?一番やる気に満ちているのがヒーラー役だなんて聞いたことねえっての。


「おい。そこの修道女。その杖で力を使うのもほどほどにしておけよ。そのままだと、お前……死ぬぞ」


「!おい、俺の仲間に向かってなにを!」


「うるせえな、勇者もどき!てめえら、何も分かってねえよ!自分の武器、自分の力!ちゃんと考えてこの俺に挑んできているんだろうな!?」


 ちょこちょこうるさい勇者もどきと魔法使いの女は放って置いて、先にこっちから何とかするか。


 俺は、修道女の前に移動すると悪質なオーラを放っている荊の杖を蹴り壊すことにした。


 バキバキバキッッッ


 すげぇ音がしたが、俺の蹴りに耐えられなかったようで荊の杖はものの見事に割れた。それを目の前で見ていた修道女は絶望、といった表情で俺を見ている。が、コイツをどうこうしようなんて考えは俺には無い。


「コレで、少しは楽になるだろ。アンタも自分が使う装備のことぐらいもう少し……」


「彼女を傷付けるなぁーっ!!!」


「は?」


 いや、俺がぶち壊したのは荊の杖。こんなひ弱そうな修道女には到底扱える代物じゃねえよ。って言い返してやるつもりだった。



 が。


 グサリ!!!


 背中から腹に突き抜けた聖剣。ほとんど、これ、馬鹿力で突いただけじゃねえか……っ!


「ガハッ!……ま、じか……こん、な……へんてこりんな、やつら……に……」


 俺は聖剣に貫かれたまま床に倒れた。

 遠く……凄い遠くで、へんてこりんパーティーたちが騒いでいるような気がした、が……もう何を喋っているかなんて分からなかった。

 俺が油断したから?バカ力だけだと思って勇者もどきに背を向けたのがいけなかったのか?修道女なんか放っておけば良かったのか?いや、あのままじゃ修道女はきっと命の危険があったんだ。だから……放っておけなかったんだ。

 へんてこりんパーティー。たぶん、めちゃくちゃ自分たちの力を誤解していて「自分たちなら魔王を倒せる!」とでも考えていたのでしょう。大したレベル、経験値も無いままに乗り込んできた奴らが、まさか魔王を倒しちゃった!?

 え、もう、話は終わり!?いえいえ、ここからがスタートです!!


 へんてこりん……異世界から現代へ、という謂わば『逆転生』モノになりますが、興味を持っていただけたら嬉しいです。良ければ『ブックマーク』や『評価』などをしていただけると嬉しいです。そして全ての読者様に作品を書いていくことで愛と感謝をお届けしていきます!!

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