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マンノーラン伯爵家の落ちこぼれ次女〜人に誇れる才能のない私が、第一皇子様の専属護衛に!?〜【第二章開始】  作者: 綾丸湖


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18. 休暇?

本日二話目の投稿です。


 北部への訪問を終え帝都に戻り、しばらく経った。

 冬が近づいている。


 帝都は北部ほど厳しい寒さではないが、それでも準備は必要となる。サラマリアも護衛を務めながら、準備をしていた。


(うーん、フィナは大丈夫かしら)


 殿下の専属護衛になってから、実家には帰っていない。フィナとは手紙でのやり取りをしており、文面では元気そうだが心配ではある。特に、誘拐事件のあった冬は不安定になることが多かった。


「サラマリア、ちょっといいかい?」


 事務仕事をしていた殿下から声がかかる。


「なんでしょうか?」


「そろそろ、サラマリアには休暇を取ってもらおうと思ってね。護衛についてもらってから、家には帰れていないだろう?」


 ちょうどそのことを考えていたので驚いた。

 殿下はたまに心を読んでいるのではと思う時がある。


「そうですが、護衛の任務がありますし……」


 最近、コソコソと嗅ぎ回る輩が増えてきたように思う。ほとんどはサラが対応できるが、一人では無理がある時もあった。


「いや、そこは私が悪いんだよ。本来、専属護衛は二名任命できるのに、現状サラマリア一人しか任命できていないからね」


「新たに専属護衛を選ばれるのですか?」


「適任がいればそうするんだけどね。まあ、一人考えている者はいるんだけど、今ちょうど忙しいみたいで、返事がきていないんだよね」


 候補がいることに安心した。

 だが、その人が来るまで護衛はサラ一人だ。


「それならば、今は護衛を離れるわけにはいきませんね」


 ここは譲れないところだ。

 もし万が一、自分がいない時にもしものことがあったら悔やんでも悔やみきれない。


「お気遣いいただき大変ありがたいですが、実家の方は問題ないでしょう。私は護衛を全うしたく思います」


「うーん、君に休んでもらいたいんだけどね……」


 困ったようにこちらを見ているが、殿下の護衛を放棄する気などない。


「……ああ、そうか。私がマンノーラン伯爵家を訪ねればいいのか」


 名案を思いついたように殿下が笑った。

 ……たしかに、それなら帰ることになるが。


「……その、よろしいんですか?」


 殿下は多忙だ。

 そんな中、サラのために時間を割くというのはどうにも申し訳なかった。


「ああ、もちろん構わないとも。ヘルマ夫人にお願いできないかと考えていたこともあるからね」


「お願い、ですか?」


「ノーゼント家に取りついでもらえないかと思ってね。夏頃に、もう一度北部に向かおうと思っているんだ」


 ノーゼント家とは、ヘルマお義母様の実家だ。最近は顔を出せていないし、行ってみたいと思う。お祖父様とは久しく会えていない。


「私からもお願いしてみますね!」


「うん、よろしく頼むよ。では、近日中にマンノーラン邸に向かうとしようか」


 フィナの様子を直接見れるのも、ヘルマお義母様に会えるのも楽しみだ。殿下に感謝しなくては。


「殿下!ありがとうございます!」


 しっかりと働いていることを、家族にみてもらうのだ。


 

***


 

 サラマリアの笑顔が眩しい。

 このためならいくらでも働けるし、時間の都合などどうとでもなる。


(しかし、専属護衛が一人ではやはり問題があるな……。あいつが早く家のゴタゴタを片付けてくれるといいんだが)


 西部戦線で出会った人物に、専属護衛にならないかと声をかけている。少し特殊な事情で帝都に来れていないが、おそらく来てくれるはずだ。


(他に、適任がいれば良かったのだが……)


 スーザニア家のレイバルは適任ではあったが、引き抜けるわけもない。それに、ああいう人間は自らの活躍できる場所を自分で選べるはずだ。それが帝都ではなく、北方軍であったのだろう。



 仕事を再開する。

 北部から戻ってからは、定期的な剣の訓練も再開したおかげで、体の調子がいい。せっかくマンノーラン邸に行くのならば、ヘルマ夫人に稽古を付けてもらうのもありかもしれないな。


「殿下、カーデン様がいらしたようです」


 サラマリアの声に顔をあげる。

 すぐに扉が叩かれた。


「殿下ー、カーデンですー」


「入れ」


 失礼しますー、と言いながらカーデンが入ってくる。なにか急用だろうか?


「定期報告ですねー。……サラマリア様には、お伝えしているんでしょうかー?」


 定期報告か、忘れていたな。


「ああ、まだ言っていなかったな。というより、サラマリアが着任してから一度も報告がきていなかったが……」


 定期報告といいながら、不定期にくるという意味のわからない報告だ。とりあえず、カーデンから書類を受け取る。


「サラマリア、周囲に他の人はいるかな?」


「……いえ、いませんね」


 サラマリアの言葉に頷く。

 せっかくなので説明しておこう。


「私の味方は数人いると言っていたが、そのうちの一人からの報告を定期報告と呼んでいるんだ。ハリというんだが、帝国各地を巡って情報を集めてくれているんだよ」


 ざっと報告書に目を通す。

 西部の物価が上昇傾向にあるという重要な情報から、南部の魚料理が美味かったとかいうどうでもいい情報まで様々なことが書かれている。


「うーん、そろそろ一度戻ってきてもらいたいんだが、どうも冬は南部で過ごすらしいね」


 なんともハリらしい。

 これでかなりの情報通なので、重宝している。


「まあ、いずれ戻ってくるだろうから、その時に紹介するよ。……戻ってくるよな?」


「さー、どうですかねー。気まぐれですからねー」


 まあ、流石に大丈夫だろう。

 南部での災害復興支援にいち早く駆けつけられたのもハリのおかげだ。何かがあった時には、やる気を出してくれるはずだ。


「残りの者も早く紹介したいのだが……。モルテスはまだ帰ってきてないのかい?」


「あー、モルテスは東の隣国に買い付けに行ってから音沙汰がないですねー。なにかいい商品でも見つけたんですかねー」


 味方が全然近くにいないな。


「モルテスは商人でね。私が密かに出資している商会を任せている人物なんだ。普段は帝都にいるんだが、ちょうど出ていてね……」


「まあ、商会を?」


「ああ、そうなんだ。お金はあった方がいいからね。それに、商人達は世の中の流れに敏感だ」

 

 助かっている部分は大いにあるのだが、こうも連絡が途絶えると心配になる。なにかしらの連絡手段があればいいのだが。


「さて、私は定期報告を読むことにするよ。ああそうだ、カーデン、近日中にマンノーラン家を訪問するから、準備をしておいてくれるかい?」


「はーい、わかりましたー」


 そう言って、カーデンが退室する。


 マンノーラン家に訪問、か。なにか手土産を用意するべきだろうか。サラマリアに何が喜ばれるか聞いておこう。



 


明日も投稿するので、もしよければ読んでいただけますと幸いです。

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