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残念ですが陛下、スローライフはお預けです。  作者: ヒガツキ
第四章 陛下、大臣ゲームは危険です。
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先着順


 スピネルが、ギントとジョウカの密会に気付かないほど集中し、昨日から徹夜して準備していたのはこれ。壁を抜けることの出来る《遊走》で映像用宝珠、音声用宝珠を盗み出し無断で場内に設置。会議が始まる直前に隠れてスイッチを押し、国全体に向け宝映を開始したのだ。

 国民は普段通りの定例会議だと思い込み、空に映しだされた映像や噴水に反射して映る像を眺めるが、本音を隠さない大臣たちの様子を見て戸惑いの輪が広がり始めていた。

 

 「なんだなんだ?」

 「やっぱいつもと様子がおかしいよな」

 「陛下のお声かー。初めて聞いたな、オレ」

 

 だんだんとそれがタダごとではないことに気付いた人々が足を止め、注目度が増す。家から出ず、習慣事の一つとして宝映を聞いている老人でさえ、足が悪いにも関わらず杖を携えて王様の顔を拝みに行くほどに。

 

 「じいさん、寝てなくて大丈夫なのか?」

 「よく見とけ若いの。国が疲弊してる今だからこそ、あの人の声には大きな意味が生まれる。ここいらがワシらと陛下の、踏ん張りどころじゃ……」

 

 肝心のその議会場では、議会の内容が筒抜けだったことが王から告げられ、大臣たちが様々な形で困惑を示した。

 

 「な、何を勝手な!」

 「冗談じゃ済まされませんぞこんなコト!」

 

 ギントはどんな顔色にも流されることなく言葉を紡ぐ。

 

 「先ほどまでの会議。国民にはどう映っただろうな? 普段のような耳ざわりのいい言葉もなければ、白熱する議論も、好感度欲しさの安っぽい寸劇もなしと来た。中にはこれまで作り上げてきたイメージとはかけ離れた態度を取っちまった自覚のある奴も居ることだろう。今なお苦しんでる地域を顧みない発言をした奴も誰とは言わんが居たはずだ」

 

 ギントが目を配ると、心当たりある者がそれぞれ反応を示す。赤髪短髪の両目の下にバツ印の傷がある男はバツが悪そうに睨んだり、扇子を持つ上品な女はひたひたと笑ったり、白いアイマスクの男は宝珠に向かって手を振っていたり、チャイバル大臣が目を逸らしたりした。

 

 「なぁ、きっと今ごろ国民はこう思ってるんじゃないか? 王様の意見も、少しは聞いてみてもいいんじゃないかってな」

 

 ありのままの議会の様子を国民の元に晒し上げ、大臣たちだけで行う定例会議に不信感を持たせるのがギントの狙いだった。

 彼は定例会議のこれまでを知っている訳じゃない。ただ、緊急時ほど人は隠していたい不都合な部分を覗かせるので、この作戦の成功を確信していた。

 

 「ガ、ガ。ガハハ、ガハハハハ!!」

 

 またしても益荒男は快活に笑う。

 

 「味方を増やすためにそこまでするか陛下よ! しかぁーしッ! 人生の掛かったゲームには変わりない。ハッキリ言って条件がキツすぎるのではないかなと諫言(かんげん)いたすところ。このままでは誰も挑んではくれないぞ?」

 「他人のことより、お前はどうなんだ」

 

 ギントにそう切り返されると、驚いたように眉を上げて難しい顔をする。

 

 「我か? 真っ先に手を挙げたい所だが、万が一にも負ければ妻に殺されてしまう! それに、大変失礼ではあるが、今の陛下にそれほどの魅力(かち)があるかどうかが疑わしい。何とかして条件を緩和する方法はないか? 我としては、何も賭けずに殴り合うとかしてみたいぞ!」

 

 益荒男の右手首にはゲームを挑まれた証である赤い光帯が浮かび上がっている。他の大臣たちも同様にそれはあるが、やはり条件の厳しさからゲームの参加を渋っている。

 

 「ゲーム自体をナシにすることは出来るぜ? ただし、その交渉は持ちかけた時点でソイツの負け。まーオレは非道な王ではないからさぁ、そのヘンは恩情で軽めの主従関係で打ってやるからさ。軽ーくね。ほら、自白した方が軽くなるってゆうだろ? 刑罰とかって」

 「わっちらは、罪と同義であると?」

 「いやいや例えだよ、例え話。一人一回、ゲームして勝敗を決めるだけ。簡単じゃーん。お願いっ、この通り!」

 

 ギントは必死に両手を擦り合わせる。目もギュッと瞑っているので大臣たちの冷めた視線には気付かない。

 

 「今回は第三者もなしでいいからー!」

 「「「「「「!!?」」」」」」

 

 その言葉に大臣たちの本気度が跳ね上がる。(みやび)な言葉遣いの女がまたしても口を挟む。

 

 「よろしいのでしょうや? ルーダーは挑まれた側がゲームを決めていいルール。第三者を介さなければ、わっちらが絶対に負けないゲーム(・・・・・・・・・・)を組む可能性だってありましょうや?」

 「それでいいんだ。それでいいからやろーよー」

 

 第三者を挟まないということは、ゲームの内容を校正されずに済むので、賞罰に合わせたバランスを考えずに済む。それはすなわち、自分たちに完全有利なゲームを選ぶことが可能ということ。そこまでの想像に至ると大臣たちは一気に表情を“迷い”一色に染めた。

 そこに、ニヤける口元を必死に隠す、ギントお得意の追い打ちが始まった。

 

 「……わぁったよ。それでも無理だってんなら、末代までって条件も無くそう。己が身一つを懸けて、玉座争奪戦とシャレこもうぜ?」

 

 既に支配者の貫禄が出てきたギントに無言の視線が集中する。

 誰から行くのか、誰が始めるのか、もはや動く前提での牽制が始まる。

 

 「先着順だ。最初に玉座に手をかけるのは誰かな?」

 「「「……。」」」

 

 辺りが沈黙に包まれる中、その人物は最初に手を挙げた。

 

 「ん? どうしたチャイバル。質問か」

 「いえ。最初にワタクシが挑むというのは可能でしょうか?」

 

 トレジャーランド・イキノコール・チャイバル。補佐大臣の任を務める大食漢にして、唯一の王族派。

 

 

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