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残念ですが陛下、スローライフはお預けです。  作者: ヒガツキ
第三章 陛下、襲撃のお時間です。
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屍のジョウカ


 『必要なら殺しを(いと)わない人間は、

 可能な限り人を生かすことの出来る人間である。──元傭兵トレジャーランド・ウレレラカムイ』

 

 

 ━━

 ━━━━

 ━━━━━━

 

 

 

 「狙いは……私?」

 

 昼と夜の境い目がない鬱屈とした森の中で、ギントと爺やはアサシンズのジョウカを囲んでいた。

 理由は簡単。国の混乱を利用して彼女を粛清するためだ。

 

 「お前がイズオーと結託し、水面下で反旗を翻そうとしていることは既に調査済みだ。弁明の機会は、ちなむとねぇぞ」

 

 既に一度、ギントに反抗する意思を見せたことのあるイズオーに対し、

 「私も肝心な記憶は奪われてないの。一緒にあの王を倒さない?」

 とそそのかし、陛下暗殺計画を進めていたジョウカ。服従する素振りを続け、暗殺したのちに五人で逃げる腹積もりだった彼女だが、俯瞰でモノを見れる《千里眼》持ちの大国主には筒抜けで、逆に消されることが決定した。

 この時このタイミングで実行されたのは、ジョウカ殺しの罪を野盗や火事場泥棒、四天王に擦り付ける絶好の機会だったからだ。ギントはそのために七人同時に戦火に飛び込むという派手な演出をしてみせた。

 

 「上手く隠してたつもりだけど、バレていたなんてね。勘だけじゃ回避できないことがあるなんて初めてよ。私の完敗ね」

 

 ジョウカは抑揚の少ない声であっさりとそれを認めた。

 

 「今回の処分は運がなかったと思って受け入れてくれ。ま、イズオーでもどっちでも良かったんだが」

 

 イズオーでも良かった。そんな風に仲間の命共々まとめて軽く見られたことが、ジョウカの殺る気に火をつけた。

 

 「財宝よ。その手に馴染め!」

 

 出来うる限りの抵抗を見せようと、腕を組むみたくスーツの二の腕部分に触れる彼女だが、いくら待っても擬似財宝は現れない。それどころか重くすら感じる肉体に明らかな能力の制限を感じ取る。

 

 「……ご丁寧に、セーフティーまで用意してたのね」

 

 流石に焦りが顔に出る。完全に詰まされた。

 

 「抵抗されちゃ話し合いにならないんでな」

 

 パステル博士の開発したスーツには魔力を封じ込める効果も備わっている。微弱な魔力をも読み取る『感知系魔法』にも対応しているので、ジョウカの居場所が誰かにバレることも万一になかった。

 

 「ふざけないで。話し合いだなんて、未だに自分が慕われてるとでも思ってるの? 師匠を殺した貴方たちに頭を垂れて生きるくらいなら、 私は……」

 「いっそ潔く戦って散るか?」

 

 感情的になるのを必死に抑えようとするジョウカに、現実が壁となって立ちはだかる。武器も防具ない状態でどう戦えというのか、どう逃げろというのか。

 訪れるのは死。

 確実なる死。

 途端に死を意識すると足腰に力が入らなくなる。ペタリと座り込み、絶望に肩を震わせるとスルスルと涙が流れ始める。

 

 「いっそ私も、忘れられたら良かったのに……。なんで? なんでこんなことに……」

 「泣くな。別に殺そうってんじゃないんだから」

 「他人の記憶を平気で奪えるクセによくもヌケヌケと! 生きていたってどうせ弄んだあとに売り飛ばすつもりなんでしょ!? そういうのあれよ、非人道的っていうのよ! ……うわぁぁあん」

 

 涙が洪水ようにあふれる。お日さまの元なら虹が掛かっていたことだろう。

 ギントが厄介そうに顔をしかめる。

 

 「爺や、代わりに説明してくれ」

 「ジョウカ様、落ち着いて聞いて下さい。しばらく貴女様には、密偵に出てもらいます」

 「うぅ……密偵?」

 

 ドサ──!

 

 ギントが何かを投げ捨てた。

 

 「な、なにこれ、人形?」

 

 低反発だが、どこかスーツと似た質感をした顔のない人形がジョウカの前に横たわる。ジョウカが不思議そうに眺めていると、爺やが続ける。

 

 「自分が嬲り殺された時のイメージをしながら、それに触れてみて下さい」

 「こ、こう?」

 

 全長三十センチほどの人形にジョウカが警戒しながら触れると、人形はみるみるうちにデカくなり、ジョウカと瓜二つの姿に変わった。唯一の違いは、傷だらけでボロボロという点だ。

 

 「わ、わわわ私……!?」

 「スーツの技術を応用して作った、代わりの効かない(レジェンダリー)変わり者(ダミー)と言うらしい。原理は聞いてもワケ分かんなかったが、本人が触れることで見た目や身長、ニオイや臓器まで完全再現できるんだと。あと、ひとりでに動くことはないらしい」

 

 そう言うとギントはしゃがみこみ、スーツから破れて露出する下半身の方を見て、青ざめた。

 

 「お前、マワされる想像でもしてたのか? ここすんごいことなってるぞ」

 「しょーがないでしょ! それくらい怖かったんだから!! それとあんまり見るな!!!」

 

 顔を真っ赤にして半泣きになるのでギントはすぐ謝った。精巧な偽物の死体にひとまず布を掛けておくと、彼女は冷静さを取り戻した。

 

 「それで、わざわざニセモノの死体を用意するまでの偵察って何かしら」

 

 それについてはギントが口を開く。

 

 「二重スパイを頼めるか」

 

 

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