疑似財宝スーツ
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パステル博士は試作スーツに搭載されている機能について、いつもの気だるそうな感じをやめて科学者のプライドを持って説明した。
「トレジャースーツ零壱号は地肌の上に直接着ることで使用者のイメージをスーツを通して宝物庫とリンクさせ、財宝魔法の疑似展開が可能となる。まあ、プロトタイプであるからして一種類しか造れないのはご愛嬌だけど。要は一つだけ想像通りというか、それに最も近い武器を自分の運命力でたぐり寄せているに近い状態。科学者に運命力を説明させるくらいにはまだまだ神秘の領域だけど、使える技術は盛り込ませてもらったよ。是非君たちの手で私と私のスーツの崇高さを発揮してくるといー」
それぞれの身の丈に調整されたスーツを試着するアサシンズ。言われた通り、下にはなにも履かない。目のやり場に困ったギントは欠点が他にあるのか聞いてみた。
「欠点? うーん、強いて言うなら財宝化の際リソースとしてスーツの素材を利用しなくちゃならないから、あんまり大きなモノ造っちゃうとハダカ同然になっちゃうよってコトくらいかな」
ビリ──ッ!
「も、もう少し早く言ってよ!! もう……!!」
黒髪黒目の地味めのジョウカが裸同然の格好で座り込み叫ぶ。両手で抱えるように持った〘アヒルのぬいぐるみ〙で辛うじてギントに裸を見られるのを防いたが、周りのみんながそれを見て爆笑するので顔が真っ赤になる。どうやらそのぬいぐるみが、ジョウカの武器のようだ。
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時は再び『鬼人のフジエ』とルーシーの舞台に戻る。
「二刀の……カタナ?」
呆然とするドゥークは、やけに長い刀と驚くほど短い刀を持ったルーシーを背後から見上げた。
「一種とは言ってたけども、二本がダメとは一言も言ってなかったからねぇ。やらせてもらいましょーかね。大太刀〘土俵熊〙、小太刀〘雀〙」
熊が間合いを恐れるあまり土俵際から近寄って来なかったとされる刀身一メートルの青の刀〘土俵熊〙。嘘をついた罪人の舌を切り落とすために使われたという刀身十センチの緑の刀〘雀〙。ルーシーの生まれ里に古くから伝わる最強の大太刀と小太刀がここに顕現する。
アンバランスな二刀にリソースを割いたことで、左肩が露出したドレスのような着こなしをするルーシーは不敵に笑う。大太刀を肩に乗せ、小太刀の先端を鬼人に向ける。
「おい溌剌ババア! 私と命、かけようぜ?」
「ダメだ! 彼女を煽ってはいけない!」
ドゥークは悲劇のトリガーを知っている。軽く煽ってしまったがために、幾人もの部下が無惨にもプレスされた末路と未来のルーシーの姿が重なって見えた。
「ハツラツ、ババア……? おいそれ、褒め言葉じゃあ、ねぇかよ! 気に入っちまった、のよ」
「なんだ? 機嫌がいいぞ……」
予想外な反応にドゥークは困惑するが、ルーシーは更に口角を愉しそうに上げる。
「カタナってのはさぁ。斬ってもヨシ刺してもヨシの、近接万能最強有能万能武器だと思うんだよね。じゃあそのカタナがさ、もし遠距離もイけたらマジ最強じゃね? って昔の人は考えたわけ」
「あ?」
「アンタは今、死の土俵際だって言ってんだよ。このカタナが見える範囲が私のテリトリーだ。タレ乳オーババオバケ」
「誰が……、好きこんで、垂れるかボケがぁぁあ!!」
これまでの比ではない、まさに鬼のような形相で鬼人はくねくねしたデタラメな走りで急接近してくる。それをルーシーは逃さない。
「隈取り一本松屏風」
大太刀を地面に向かい深く突き刺さすと、地面から無数の青い棘が突出。それが一直線に波を打って突き進み、鬼人の足元に突き刺さった瞬間、打ち上がる花火のように爆発して剣山で出来た松の木を形取った。串刺しに処された鬼人の血で、松の木は赤っかに染まり上がる。
「ガふっ……!」
全身をカタナに貫かれた鬼人は、肺に溜まった血を我慢できずに吐き出した。
「あれ、効いちゃった? 流石に効いちゃった? 言ってみ大した御手前ですねって、言ってみぃ?」
「ナマ……言っちゃ、いけねぇよ。俺は負けない。オンナに負けちゃいねぇのよ……」
「嘘切り雀」
意地や強がりは雀の前では嘘となる。嘘をついた時点で、近かかろうが遠かろうが必中の一撃として雀は振りかざされる。
「うぶっ! かっ、かは……!」
顔下半分が二つに裂けると鬼人は全身を強く痙攣させ、やがて絶滅した。
役目を終えた大太刀小太刀は、バラバラに砕け散る。
「ばあさんゴメンよ煽ったりなんかして。でも勝負は私の勝ちだから」
ルーシーは誇った顔をした。
☆
時を同じくして、小さな老人ゴブリンと戦っていたアマゾネスのモナはあっさりと勝利していた。
「……。」
頭に矢が突き刺さったそのゴブリンは、自分がお手玉して遊んでいた頭たちと仲良く並んで倒れており、既に絶滅している。それをやったのは紛れもなくアサシンズいちの武闘派モナ。
彼女の手には自分の身長ほどもある大鷲の弓が握られていた。弓はスーツのリソースの大部分を持っていったようで、下着姿のような状態だ。ガッチリと無駄のない筋肉を付けた手足と、八つに割れた健康的な腹筋があらわとなり、暗殺者よりも女戦士としての貫禄がより一層強まった印象を受ける。それなのに彼女が想造した武器は剣でも斧でもなく弓だった。
「ありゃー、こりゃまたナイスぼでーなアマゾネスさんで」
男の若干高い声が、教会内にこだまする。
「眼福、眼福。重畳、僥倖。サイコーのコーですよ」
「誰だ。姿を表せ」
ピュン──ッ!
背後から首元めがけて放たれた矢を、モナは素手で掴む。
「あん、殺気を纏うと読まれると。困った困った」
そう言って現れたのは耳の長い褐色肌の少年。いわゆるダークエルフという森に住まう美形の種族だ。
「ガキに用はない」
用事を済ませたモナは少年にまるで興味がなく、受け取った矢を折って踵を返した。
「ガキではないぞ? ワシはそこに倒れてるのと同じ氏族長。ダークエルフの氏族長ムサカじゃ」
男は愉しそうに名を名乗り、矢筒から矢を取り出した。モナは事務的に男を処理に掛かる。
分からない単語とかありましたら質問してくださいね。




