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残念ですが陛下、スローライフはお預けです。  作者: ヒガツキ
第三章 陛下、襲撃のお時間です。
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出撃


 下界を見下ろす七人の男女。

 うち五人の女は体のラインが以前よりはっきり見えるパワードスーツを着用。伸縮性と速乾性に優れた紺色のスーツはパステル博士の開発したアサシンズ専用の『着る兵器』の訳だが、制作期間の都合上これらは試作品タイプに限られる。いきなりの実戦投入だが彼女たちはようやく表立って戦える力を得られたことで、自信に満ち溢れた誇らしげな顔をしていた。

 

 「状況は?」

 「重軽傷者、五百八名。死亡者行方不明者合わせて十二名。王都内のみの数値ですが」

 

 ギントの質問に対して足で稼いだ情報を丁寧に説明したのは白藍髪のイズオー。順調にデータキャラの地位を確立しつつあるアサシンズのリーダーは、赤メガネをクイっともち上げ意識を高める。

 

 「最も戦火の激しい地点から七箇所のマッピング、完了しましたです。参考までに……です」

 

 そう言ってボードをギントに手渡したのは、小柄だが胸は誰より大きい銀髪サイドテールのミタマホ。ギントにブランディングを意識するよう言われたので普段より多く『ですます』使うのを心掛ける。

 

 「大国主さまより伝言です。厳しいと感じたら、無理せず帰ってくるんだよー?」

 

 五人の平均を地で行く黒髪のジョウカ。ジミだが清潔感と人一倍の鋭い勘をあわせ持つ彼女は大国主の声真似をしながら伝言を伝えた。スピネルは万が一にも戦火に巻き込まれないように遠くに避難している。

 

 「あと何でもいいからジュース買ってきてー。とのことです」

 

 ギントは次にモナに確認する。

 

 「今作戦の概要は」

 「今作戦は七人七箇所それぞれで戦火鎮圧の任にあたります。一斉に動くため、誰かが四天王とぶつかる可能性が高く、ひとりでは勝てぬと判断した場合速やかに逃げるか、救難信号の狼煙を上げて戦いを即切り上げること。武器は調整段階につき一種類のみの使用を許可するものとする。以上です」

 

 体格が一回り大きい褐色肌のアマゾネス、モネは簡潔にこれから行うことを説明した。

 

 「なんだかすんげーワクワクしてきましたな。誰が当たりを引くか、今から楽しみだ」

 

 右手をミット代わりに左手のコブシを突き立てたのは、金髪碧眼のルーシー。後ろ髪が腰の高さまである彼女だが、邪魔にならないように今回は結んでいる。そこに両手足を鎧で覆うギントと細身の剣を持つ爺やが加わり以上七人が出揃う。

 

 「四天王は残り三人。お前たち、準備はいいな?」

 「「「「は!」」」」

 「出るぜ、オークニ様」

 

 ギントはニヒルに笑うと、崖先から身を投げ出した。それに続けとばかりにアサシンズも爺やも頭から真っ逆さまに落ちてゆく。

 死を待つだけだった七人は地面に激突する直前、それぞれが大きなシャボン玉に包まれて地面の中へとするりと潜って消えてった──。

 異能《遊走》を使っての移動。壁や地面を通り抜けられる大技を七人同時に掛けた大国主スピネルは、今は安全な場所で全ての民の安全をひっそりと願うのだった。

 

 

 ☆

 

 

 「どうして……どうして見捨ててくれないんだお前たち!」

 

 カムイ聖騎士団団長トレジャーランド・ドゥークは叫んだ。

 既に立ち上がることも出来ないほどの深手。頭から多量の血を流し、ボヤけた視界で次々と部下が肉塊に変えられる姿を見続ける彼女は、外傷より心傷を深くえぐられた。

 

 「リネゴラ。……トラマ。フーディオ……。ネルフセン……」

 

 辺りに散らばる原型を留めていない死体は、全て自分を守るために散っていった大切な団員たち。見捨ててくれれば助かったはずの命が次々と散っていく中で、なぜ一度体制を立て直さなかったのかとドゥークは激しく後悔した。しかし部下たちは彼女を前にして口を揃えてこう言うのだ。

 

 「生きてくれ。団長は俺らロクデナシの希望だから──」

 

 また一人ぐりゃりと潰された。缶詰めがスクラップにされるが如く血肉がブシャッと吹き出す。

 

 「あ、……ああ」

 

 運が悪かった。

 

 「もう、やめてくれ……お願いだ……」

 

 運が悪かった。

 陣形を再編成し、救助班と討伐班に別れた直後に落雷を纏ったサル三匹に襲われた。追い払うことは出来たがその時点で既に半壊。直後、四天王クラス『魚人のハクム』と接敵。王と協力し辛くもそれを打ち破るも、別れた途端またしても別の四天王クラスと遭遇し、全滅寸前まで追い込まれ今に至る。

 実力はここ数日続いた王との鍛錬で確実に伸びてはいたが、ツキに見放されてしまってはどうしようもなかった。

 

  「て、テメェら青二才が……、しなびたバアさんとか、ナマ、言ってんじゃねえ……のよ」

 

 頭に一本、角が生えるヨボヨボの老婆はシワシワの顔を震わせながら怒りに任せ、次々と団員をすり潰していく。

 如何にも折れてしまいそうな痩躯(そうく)から繰り出される信じられないほどの膂力(りょりょく)は、老婆が鬼人の首魁(しゅかい)であることを証明する。

 『鬼人のフジエ』

 若かりし頃は世界三大美女に数えられたその傑物は、口だけの男を必要以上に毛嫌いしその拳ですり潰す。

 

 「すまない……みんな。僕ももうすぐ、そっちに行くよ……」

 

 最後の部下が潰され、遂に一人きりになったドゥークの心がポキリと折れて、目の前に老婆がにじり寄る。

 

 パンっ──。

 

 シャボン玉の弾ける音がした。

 

 「あれ、あれれ。もしかして当たり引いちゃった感じ? ラッキー」

 

 ヘラヘラした金髪の女が歩いてやって来る。窮地に飛び入り参加したのはルーシーだ。

 

 「隠れていたのか……? 僕のことはいい。危険だよ、逃げてくれ」

 「けが人がゆーと説得力が違うねぇ。でも安心してよ。いざという時はちゃーんと一緒に逃げてあげるからさ」

 「ナマ、言っちゃァ……いけねえのよ」

 

 老婆が標的をルーシーに切り替えた。

 

 「いまごろ私の仲間たちが、他の四天王と対峙してる頃だと思うんだよね。もしくはもー戦ってたりして」

 「仲間……?」

 

 

 ☆

 

 

 「クビが足らんクビが足らん。六つじゃ手玉にならん。お前のクビを置いていけニンゲン。そのクビ置いてけニンゲン」

 

 色違いのドワーフかと見違えるほど口髭をたくわえた小さなゴブリンが、壊れた教会内で人のアタマを使ってお手玉をしている。その目の前にシャボン玉を割って現れたのは薄ピンク髪のアマゾネス、モナ。

 

 

 ☆

 

 

 「こんこからから。人も花も燃ゆる時が一番美しい。ヌシもそうは思わんかえ?」

 

 『妖狐のプレレシア』

 着物に身を包んだお淑やかな一面からは想像も出来ないほど残忍な殺しを得意とする九尾のキツネ。燃える花畑の中で焼死する人間の悪臭を嗅がまいと口元を扇子で覆っている。

 そんな妖怪の前にシャボン玉を割って現れたのは小さな巨乳、ミタマホ。

 

 

 ☆

 

 

 「「「財宝よ。その手に馴染め!」」」

 

 三者三葉。それぞれの戦場でそれぞれの財宝が、四天王クラスに牙を剥く。


 

公開は明日の18じ

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