表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
残念ですが陛下、スローライフはお預けです。  作者: ヒガツキ
第二章 陛下、補佐大臣は厄介です。
24/77

ネプラントナイト⑪


 「私の正体を語らないという約束。忘れずにお願いいたします」

 「もちろんだとも。賭事遊戯(ルーダー)

 「契約完了(ルーダース)

 

 爺やが成立の掛け声を合わせると、お互いの右手の甲に大きな目玉が現れ、契約者をじっと見つめてくる。これはゲームの成立を意味し、終わるまで決して消えない参加者のマークとなる。しばらくすると目は閉じ、腕に巻き付くように光っていた光帯はいつの間にか霧散していた。

 

 

 ☆

 

 

 「ルーダー」

 

 その掛け声はあまりに突然だった。

 

 「日に二度、同じセリフを聞くことになろうとは」

 「おせーよバカタレ。もしかして、オレの実力を測ってたとかじゃねェよな? 爺や」

 

 宝物庫の前で魔力切れになり、倒れて動けなくなった少女ギント。それと会話をするのは先ほど大国主と大きな契約をまとめたばかりの爺やだ。

 爺やが《遊走》に乗って目の前に現れると、ギントはそれを予期していたかのようにノータイムでルーダーを宣言した。執事はその宣言に目を丸くし、暗殺者らもシャボン玉を割って現れた新たな刺客に目を丸くした。

 

 「召喚魔法か……?」

 「護衛を呼んだだけかもしれない。油断はするな」

 

 暗殺者たちは警戒を強める。

 ギントに背を向け暗殺者と向かい合う爺やは続ける。

 

 「助けを乞い、万一に断られた時のルーダーですか。とことんまでヒトを信用出来ない性格のようで」

 「生憎とオレは、オークニ様以外信じないつもりでね……。理解してくれて助かるよ」

 

 爺やの手にはレイピアのような細長い剣が握られていた。剣身がギントの前で怪しく光る。

 

 「悪いが特別ルールで行かしてもらう。今回ゲームはナシだ!」

 「はぁ……」

 

 またしても特殊ルールかと嘆く爺やの声は届かない。

 

 「ンか……言ったか?」

 「条件の交換のみを行うと云うわけですね」

 「そうだ。互いの目的を知ってるなら擦り合わせる必要もないしな」

 

 ギントは額に汗を浮かべながら、鉄より重い身体を持ち上げ宝物庫の扉にもたれかかる。

 

 「それで、条件とは?」

 

 ルーダーとは強力な契約魔法だ。それ故にゲームをせず利害一致に向けて互いに譲歩し、擦り合わせ、約束を取り付けるなんてことも珍しくない。

 しかし過去には子供同士がふざけてルーダーをし約束が守られなかったがために死亡したケースもある。破った時の『絶対の死』というリスクだけは変わらない。それを踏まえた上で二人は続ける。

 ギントの右腕と爺やの左腕には赤い光帯が輝いている。爺やは全身で向き直り、暗殺者らに背後を晒す。

 

 「オレの仲間になれ爺や! その代わり、オマエの言う理想の王様ってやつにオレがなってやるよ……ッ!」

 

 吐き捨てるような宣言に、爺やはひっそりとした笑顔で返した。

 

 「断ります」

 「んでだよぉぉ!?」

 

 ルーダーはお互いの右手に紋章を刻み込む。既にその紋章(めだま)を抱えていた爺やは腕を巻くってそれをよく見せる。目玉がギョロっと開いた。

 

 「貴方に関する契約は、既に結んでありますゆえ」

 「誰と……ってオークニ様か」

 「とは言え貴方を救う理由は増えました。理想の王様を目指すという言葉、ゆめゆめ忘れなきようお願いいたします」

 

 爺やは露を振り払うかのように細長い剣を振った。剣から飛び散る露は真っ赤な色をしていて、暗殺者のひとりが後から首を飛ばした。

 

 「……まじか」

 

 それはまるで血のオーケストラ。

 タクトを振るうとそれに合わせたように、一人また一人と首と胴が切り離され倒れてゆく。露払いは明らかに切りつけた後の行為なので、ギントは分かりやすく戦慄した。

 斬る瞬間が全く見えないのだ。正直ここまで強いとは思わなかった。

 

 ──オレの目でも追いきれないなんてコトがあるのか……? 魔法も使ってる感じがしない。とにかくスゲー速さだ。

 

 仲間に出来たことを心底喜びたい反面、あれに今後も命を狙われる可能性があるのかと思うと夜も眠れなくなりそうだった。心の中でマジメに王様やろーっと、と死なないための誓いを立てる。

 

 「やべぇわ。オレなんかあっちゅう間に殺されるわ」

 

 とにかく笑うしかない。

 おそらく剣士としては世界で十番以内に入る実力者だと実感する。

 

 ──こんなに強えのに、なんで執事なんかやってんだよ! 覇権取れるって。

 

 愚痴をこぼしてる間にその場にいた暗殺者全てが死んだ。

 悲鳴も、逃走も、反撃も、一切ゆるすことなく爺やは全ての首を切り落とした。歩いたのはわずか四歩。明らかに剣の範囲外の首も飛ばして。

 

 「大臣たちを……まずは手中に収めなさい」

 

 爺やが振り向きもせずに理想の王様への指針を示した。

 

 「やれなかったら?」

 「殺られます。私に」

 「冗談に聞こえねぇ……な!」

 

 ギントはそう言いながら、爺やの先にある暗闇に向かって最後のロウソクを投げた。

 火のついたロウソクは回転しながら飛んでいき、何も無いところで細切れになる。そこから風が舞って大きなローブがうごめいて見えた。ローブは闇に溶けて消えるとまたスグどこかの空間に移動した。

 

 「出てこい! いるんだろ?」

 

 今までのアサシンとは別格の何かがいる。

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ