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残念ですが陛下、スローライフはお預けです。  作者: ヒガツキ
第二章 陛下、補佐大臣は厄介です。
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ネプラントナイト⑨


 二刀を落としてよろける金髪に、数発のジェット殴打を食らわせ卒倒させたのち、盾代わりとしたギントはアマゾネスの広範囲火力をものともせず近付く。

 

 「攻撃を辞めるです、モナ!」

 

 ですです知識が指示すると、火魔法を止めたアマゾネスが「卑怯者め……!」と激しい嫌悪に顔を歪めた。

 

 「ほらよ」

 「な……っ!」

 

 その盾を惜しむことなく投げ渡すと、ギントは事前に投げておいたソレに触れた。火魔法に溶けたロウソクのかたまり──。

 

 「財宝よ、形を成せ──」

 

 右手で持ったもはや無価値(・・・)に等しい歪なロウソクは、形状変化の魔法でその右手を包み込む。

 

 「鋳造 “ジェット” ガントレット」

 

 形状変化からの材質変化で黒く染め上げた篭手を、有無を言わさず褐色女の腹に突き刺す。

 

 「グ……、ァハ!」

 

 アマゾネス特有の強靭な腹筋のおかげか出血は免れたようだが、えずきながら女が後ずさる。

 すかさず追い討ちを掛けるギントは背後に回ると、膝裏を蹴って付かすように転ばす。その後の殴打は止まらない。

 

 「肘当て甲(エルボ)すね当て甲(グリーブ)甲冑指(リング)踵鎧(スプール)

 

 縦横無尽の速さで更なる追い討ちを続け、正面に戻ってきたギントは仕上げに入る。

 

 「 “ジェット” 膝当て甲(ポリン)!」

 

 ギントのヒザが女の顎に入ると、衝撃は脳天にまで達し、その威力はひと回り以上大きな体躯を宙に浮かせた。アマゾネスはたいして何も出来ないままドサッと仰向けに倒れると白目を向き、そのまま地面に伸びた。

 またひとり敵を打ち負かしたというのに、ギントは憂いを帯びた目で自分の手のひらを見つめる。

 

 「女を殴って心が痛まねぇとは……」

 

 ──なんとなく気付いちゃいたが、精神面でもこの身体の影響をだんだんと受け始めてやがる。このままだと本当に、男が恋愛対象に……。そうなる前に戻んねぇとマジにヤバそうだな。

 

 「「おおおおおりゃぁぁあ」」

 

 感傷に浸っているところに、ジミ聡い黒髪とリーダーが同時に斬り掛かる。

 

 「はう!」

 「ぐでぅ!」

 

 怒りで正常な判断が出来なくなっていたのか、ギントに対して不利な接近戦を挑むふたりは、床に転がったロウソクに足を取られたりして容赦なく返り討ちにあった。

 

 「お前ら冷静に一度引いてみるとか、しろ」

 

 注意するも地面に突っ伏した四人がもう反撃してこないと知ると、ギントが残るひとりをロックオンした。

 

 「いいよな? 覚悟は問わなくて」

 

 防具が壊れて丸腰になった少女が、溶けて固まったロウソクから新しい篭手を再度造り出す。

 

 「ど、どうしてでありますか! ジェットは他者から記憶を奪うと同時に、使用者からも記憶を奪い続ける! アナタはそれに耐えられるでありますか!?」

 

 小さな女は後ずさりながらも、怯えた目を逸らすことなく疑問をぶつけてくる。だがその答えは決まっていた。

 

 「生憎と、忘れたい過去なら幾らでもある」

 

 自分を嘲笑うかのように言った王様は、両の拳に力を溜めた。今までにない連撃の予感にですです女が待って待って、と震える声で静止を呼び掛かるも──。

 

 「財宝よ、“ジェット” ミニガン・トレットォォォ!!」

 

 小雨のような弱々しいパンチの嵐に打たれ、一際小さい女の子は大の字にぶっ倒れた。

 

 

 ☆

 

 

 十数分後。

 ギントはひとり、長い長い地下の廊下をうだうだ言いながら歩いていた。

 

 「はぁ、手足おっも! つかれたー」

 

 階段は包囲されて使えない。ならば隠し通路を探そうとあらゆる壁の出っ張りを押し込んでみたりするも、槍が飛んできてからは二度と押さないと誓った。

 

 「いたぞ!」

 

 罠の発動音は敵まで呼び寄せた。複数の暗殺者に追いかけられながら、ギントはついに角部屋へと追い込まれてしまった。

 

 「ぜぇ、ぜぇ……おっと?」

 

 やけに大きく荘厳な扉が突然、目の前に現れた。両開きの黄金の扉は古今東西あらゆる宝石と装飾に彩られていた。

 

 「これあれだわ。宝物庫だわ」

 

 雰囲気からそう断定する。

 巨人すら悠々通れそうな扉の先に、この国の宝が眠っている──。そう思うだけで、だんだんと少女化する心も踊るというもの。

 しかし今はそれ所ではない。

 

 「うん……行き止まりだなこりゃ」

 

 冷静になると自分がピンチなのに気付く。振り返ればほら七、八人。鋭い殺気がギラっと光る。

 

 「まーでも、あると分かればそれで(・・・・・・・・・・)いい(・・)

 「そのままこっちを向き、ひざまずけ。何もしなければ楽にしてやる」

 

 言われるままにしたギントは、おもむろに口角を上げると赤い絨毯が敷かれた床の上に手を置く。降参するように見えたその直後、青い雷がギントを中心に激しくうねり渦を巻いた。

 

 「貴様、何を……!?」

 「降参? するかよ。ここで諦めるのだけはねーっての!」

 

 何十年にも渡る財宝魔法の研究で、財宝とは『イメージ』であると男は結論付けた。

 宝物庫(ハコ)の中身など結局どうだっていい。確かにハコが存在し、自分の所有物であると周りに認識させさえすれば──。その条件さえ整えば、中身なんていくらでも(・・・・・・・・・・)想像できる(・・・・・)のだから。

 

 【財宝魔法三つのルール】

 ③財宝を呼び出す場合、確実に所有しているまたは所持している可能性(・・・)があること。

 

 中身を知らない宝物庫=無限の可能性。

 あると認知する心が、最強の財宝魔法を創り出す。

 

 「人類はふたつ史実はひとつ。価値と価値を知る者は理を謳歌し、想像は時に勇気と試練を呼び覚ます──!」

 

 マズいと気付いたアサシンたちが一斉に距離を取った。だがおそらく間に合わない。

 

 「──顕現解放、ボス部屋(コロッセムウ)!!」

 

 

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