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残念ですが陛下、スローライフはお預けです。  作者: ヒガツキ
第二章 陛下、補佐大臣は厄介です。
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ネプラントナイト⑧


 「な、なにを言ってるんだこいつは……」

 「アナタが仲間? アナタは仲間じゃなくて、ターゲットよ?」

 

 ギントが舌なめずりをすると、女たちはたちまち顔を引き攣らせて一歩退いた。

 

 「お前たちの正体を当ててやろう。半人前だろアサシン。待ち伏せ、奇襲、そのどれもが中途半端。たったそれだけの役割すら果たせない新米──。それがお前たちだ」

 「ひどいです!」

 「それ、悪口って言うのよ?」

 「なんだ。素性がバレたかと思ったぜ」

 

 各々勝手に喋り出す女たちを無視してギントは続ける。

 

 「別にお前たちが悪いわけじゃない。いくら暗殺者と言えども組織化しちまえば育成の手間ってのが掛かる。だからこそ『欠点』になってしまうのも仕方がないことなんだ……。組織の弱点。汚物。足でまとい。おまけに暗殺者としての覚悟が足りないのも、全部仕方のないことなんだ……」

 

 ギントは彼女たちの弱さを全面に押し出し、鉄格子にハマっていたはずの女に慈悲ある眼差しを嘘っぽく向けた。

 

 「助ける暇があったなら、もっと早く追いつけただろうに……」

 

 任務より仲間の命を優先してしまうその優しさ(おろかさ)こそ、半人前の証であると暗に示しながら。

 

 「言わせておけば貴様……」

 「どうどう。安い挑発に乗るなって言ったの誰でしたっけ?」

 

 今度はさっきと逆。挑発に乗っていた方が仲間をいさめる。

 

 「ねえ、このヒトの言葉は何も信用出来ないわよ? 今も時間稼ぎしてるみたいだし、やっぱり影武者よ」

 

 またしても奥に縮こまる黒髪女が意表を突く。見た目にも地味めな聡い女だ。

 

 「どう思おうがお前たちの勝手だが、持ち場には戻っておけ。そしてオレと会わなかったことにしろ。そうすれば “また” 見逃してやる」

 

 ボケたフリして賢い金髪、ジミ聡い黒髪、リーダーの白藍、ですです言う銀髪。他にも新しい女がひとり増えているが、バランスのまとまった良いチームだと思えた。

 それだけに惜しい。

 敵にしておくのは。

 粗さは目立つが将来的には使える逸材の香りがする。そう思ったギントはしばらく腕を組み彼女たちの答えを待った。

 

 「そんな風に罵られて、おいそれと下がれるもんですかです」

 「そうよ。悪口はいけないわ」

 「よーし珍しくまとまった所で掛け声ちょうだいなリーダー。やっちゃうよ?」

 「我々で王を仕留めるぞ! 戦闘準備!」

 

 暗殺者たちはギントの忠告を無視して各々宝石を輝かせ始めた。

 しかしその行動がむしろ気に入ったのか、ニヤリと口を歪めるギントはおもむろに腕組みを解除した。

 

 「こい。遊んでやる」

 「エレメンツ──」

 

 ひとりが詠唱を始めるも、ギントのが速い。

 

 「女子パーンチ!」

 

 既に、別の女目掛けて拳が放たれていた。

 

 「ぐは!」

 

 吹き飛びうずくまるジミ聡い黒髪。

 拳を繰り出し残心決め込むギント。

 愕然とし言葉を失う暗殺者たち。

 

 「大丈夫、殺さない。それ以上のモノを奪い去るがな」

 「その宝石、まさかジェット……!?」

 「目がいいな。正解だよ」

 「みんな離れろッ! そいつの宝石は、触れたぅ──グッ」

 

 眼識(がんしき)のあるリーダーが何かを伝えきる前に足裏が飛んできて、全身を強く壁に打ちつけた。

 

 「“ジェット” 足鎧(サバトン)踏襲(スタンプ)

 

 またしても残心決め込むギント。

 その足元にはリーダーが掛けていたメガネがぐにゃりと曲がって落ちている。どこを蹴ったのかが一目瞭然だ。

 

 「タマちゃん、ジェットについて教えて!」

 「黒の悲劇ジェット! ヒトから記憶を奪う最悪の宝石であります!」

 

 グラマラスであるが他より頭一つ小さいですです女が知識タイプだと分かってギントは嬉しそうに何度も頷く。いってしまえばリーダーも知識を有していたっぽいが、自分の都合のいいようにギントの中では解釈が進んで止まらない。

 

 「うんうんそうかそうか、お前は知識タイプか。それぞれがしっかりと役割分担しているわけだな気に入った。じゃあ最後のキミ、キミの長所はなにかな?」

 「……。」

 

 面接ごっこを始めたギントが指をさし向けると、未だ語らずの女がゆっくりと歩み寄る。

 その女は他と比べても一際大きな体格を有していて荒々しい闘気を纏う、いわば武闘派の風格を成していた。その体格の良さゆえに一度目の奇襲の時には参加していなかったのも頷ける。

 

 「女性民族(アマゾネス)か。あんた、待ち伏せのメンツに居なかったよな。新人の放っていい圧じゃないぞ、それ」

 「こっちだクズ野郎」

 

 気迫に呑まれまいと集中していたギントの背後から、小ボケの得意な金髪が斬り掛かる。刃渡り四十センチの二刀が死角から振り込まれるが、彼女の前髪に付いたヘヤピンに気を取られ、気付くのが若干遅れた。

 ひとつ目は避けた。だがふたつ目がひとつ目の影から伸びてきて、ギントの篭手を叩き割った。

 

 「あっぶねっ! なぁ!」

 

 砕かれた右篭手。それを庇うように地面に右手を付いたギントは逆立ちしたまま二人を同時に蹴り上げる。

 攻撃直後で動けなかった金髪はもろにその蹴りを食らい吹き飛んだが、褐色アマゾネスが足ごとそれを受け止める。まずいと感じたギントがブカブカの足鎧からすばやく足を引き抜く。

 すると直後、アマゾネスの手からティッシュのように丸められた足鎧がこぼれ落ちた。強靭な握力に鎧が耐えられなかった形だ。

 

 「エレメンツ “ルビー” フレイムストーム!」

 

 アマゾネスはすかさず広範囲の火魔法を放った。ギントはそこ目掛けて何かをバラバラと投げ込むと、範囲外に逃げる。

 それは何の変哲もないロウソクだった。

 

 

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