1話 ダンジョンが出現したらしい
僕は千紗 ゆい。
苗字も名前も女の子っぽいけど実は男の子です。さらに言うと顔も中世的で女性とよく間違われるが、これでも立派なポコ◯ンがついてます。
現在は19歳と高校を卒業したばかりだが、就職もせず、進学もせずに自宅警備を主にしている。
両親は大手企業の役員をしているが、そんな出来すぎた人間から生まれ落ちたのは顔しか取り柄のない男と遺伝子をしっかり引いた無敵の妹が1人。
毎日引きこもって…いや、自宅を警備ついでにアダルトビデオを親のパソコンで見ている。
(至福だぁ)
このパソコンは宝庫なのだ。
父の閲覧履歴にはそれはもう素晴らしいものがいっぱいあった。
『おねショタ、レ⚪︎プ』
『オバショタ、爆乳』
『JD淫乱痴女』
『潮⚪︎き、無修正』
『銭湯、混浴痴女』
『女魔物、二次元画像』
などなど。
子は親に似ると言うが、ここまで性癖がガッチリと合わさる親子はなかなかいないのではないか。
この親のもとに生まれることができたこと、
ゆいは神に感謝をした。
ピコーン
手を上下に高速で動かしている時、それは急に頭に響いた。
《地球にダンジョンが出現しました。これにより、全人類のステータスが解放されました。繰り返します……》
ダンジョン。
それはあれだろう。
異世界やファンタジーな要素に出てくるあの洞窟みたいなやつ。
魔物とか、宝箱があって、人々が夢を求めて死にに行くところだ。
みんなも想像したことはあるんじゃないか?
一度は異世界転生を、転移を、超能力を。
僕だってもちろんある。
つい昨日なんて、女魔物相手にどんな触手プレイをしてやろうかぁ?とか日本の伝統的な玩具たちを魔物に試したらどれほどの快楽で堕ちるかなどと考えていた。
やはりロマンがあれば男はそういう妄想をしてしまうのだ。
今回の頭に響いた声もそう。
「女性の声だった」
それははたして女神か、悪魔か、天使か。
僕の想像ではJカップ以上の爆乳でお淑やかな雰囲気、だけれど戦いが始まれば淫乱な女神様。さらに…お尻は超絶プリティでまるでグミのような弾力にえっちな匂い…
《殺すぞ貧乳だカス。グミよりも柔けぇに決まってんだろ》
「…………何も聞こえなかった」
うん。ただの幻聴だ。
今のは、自宅警備による極度の疲れから想像してしまった幻。
「……ちょっと科学技術を確かめよう」
まずは情報の収集と身の回りの安全の確保。
パソコンはずっとえっちなビデオが流れているため電気関連は問題はなさそう。
それに水道も撚れば出るし、ガスも使える。
「テンプレじゃなさそう」
科学技術が壊滅し、代わりにダンジョンや魔法が…なんてことではなかった。
スマホを起動したゆいはツブヤイターというアプリを開き、トレンドを確認する。
上位全てがダンジョンやステータスについてで埋まっており、いいね数の高いツイートを見てみると、
「俺様の時代きたー!」
「どこだダンジョン!」
「モンスター娘ハーレムを作るぞー!」
などとさまざまなことが呟かれていた。
それに僕も便乗して、
「天の声は貧乳で尻はグミよりも柔ケェぞ!」
と呟いた。
なお、謎パワーによりそのツイートは数秒後削除され、ゆいは何か悍ましい気配を感じた。
「…冗談冗談、多めに見て?」
自分でも何を言っているのかわからないが何もいない空間にそう溢した後、命が握られているような感覚は消え去った。
「ふぅ…」
スワイプしながら他のツイートも見ていると、
「ダンジョンみっけたわ!」
というツイートに写真が貼られて掲載されていた。
その場所がどこかはわからないが周囲にはカメラを向けた人々で溢れかえっていた。
その洞窟のようなものは音もなく急に現れたそう。
他の人のツイートにも続々と「ダンジョン発見」の文字と写真が載っていた。
確認できただけでも50箇所以上。
「ん?」
最新のツイートにはこんなことが書かれていた。
『ステータスオープンって唱えると色々見れるぜ!』
厨二病くさいが僕の部屋には誰もいないし来ないため小さな声でそれを唱えた。
「ステータスオープン」
すると目前に半透明の板が出現した。
「本当にでた…」
そこには
2555768899
千紗 ゆい
そう書かれていた。
ゆいは続々と更新されるツイートと自分のステータスプレートを見比べる。
「…情報少なくない?」
名前と変な番号しか出てないんですけど?
みんななんか職業とかスキル欄とかあるのに僕だけ名前のみなんですけど!?
「なんで!?!?おかしくない!?」
一体…僕が何をしたと言うんだ!!
それは天の声のみぞ知る。
セクハラまがいのことをした唯一の人類なのだ。
こいつのステータス見れなくしちゃえ⭐︎
的な軽い感じで弄られたなど誰も思わないだろう。
「これはバグ…!貧乳神様!!僕のステータスバグってます!直してください!」
《誰が貧乳だコラ》
(さっき自分で言ってたじゃないか…っ…!?)
幻聴などではない。
はっきりと聞こえるその声は、さっきアナウンスをしていた女性の声。
どうやって言葉を飛ばしてるのかは知らないが会話ができるならせめて…!
「詳細はいらないです!ど、どんなことができるかだけでも教えてください!」
せっかくダンジョンという未知のものができたのだ。少しは堪能してみたいじゃないか!
それから返答はなかったが、その代わりステータスプレートが名前以外にも追加された。
スキル
馬鹿力
「とてつもない悪意を感じるんだけど」
絶対天の声僕のこと嫌いだろう。
こんなにも美少女顔でかっこかわいいのに。
どうにかその唯一のスキルの詳細でも確かめれないかなと色々と念じてみるが…ステータスプレートは変わらず名前とバカ力のみ。
スマホを触る要領で半透明の板、バカ力と書いてあるところに触れると、説明が出てきた。
馬鹿力
バカみたいな力を使える。
「バカバカうるっさいなぁ!!もういいや!」
ゆいはふて寝するためにベッドへと潜り込んだ。
(何がダンジョンだ。かわいいモンスターいなきゃ絶対にいかねぇ!)
思い通りになる人間がいてもその逆だっているんだ!
チリも積もれば山になるんだ!
(僕のチリ魂みせてやる!)
こうしてダンジョンが世界に出現した日、皆がわれ先にと入っていく中、ゆいは家でぐーすか寝て終わった。
☆☆☆☆☆→★★★★★
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