目標
3兄弟との違い・・・気付いた時には遅かった。」
ある日打ちに行った帰りに3男に飲みに誘われた。 いつもみんなで行くんだが・・・
なぜかその日は二人だった。
ちょっとさびれた居酒屋で行きつけの喫茶店のウェイトレスについて話してた。3男は
ウェイトレスの事を気に入ってるようだった。 そんな話で盛り上がってそろそろお開き
の頃に3男は切り出した。
「おまえいつまで俺らの汁すする気でや?」
何の事だかサッパリ解らなかった。「いや、そんなつもりは・・・」
「そう言う事なんじゃげや!!! ナメとんか?」
「・・・」
「もう独り立ちせんけや。充分勉強したろが?」
「・・・」
「2度と店に来るなよ」
そういい残して3男は店を出た。
3兄弟との違い・・・それは自力勝負をしようとしない事だった。同じようにしてるつもりでも抜ける台を自分で見つけ出す事の出来ない自分はただのハイエナにすぎなかった。 それをやろうとしない自分を3兄弟は見切ったのである。
後悔した。もっと早く自主的に意思表示をしてればこんなミジメな思いする事もなかっただろう。
3兄弟とも付き合いは出来たかも知れない。 情けなかった、ただ情けなかった・・・後悔先に立たず
重くこの言葉が背中にのしかかった。
いやがおうにも独り立ちしなくてはいけない状況になってしまったが・・・逆に熱が冷めてしまってた。
何となく打ちたくなくなってしまっていた。パチンコに?いや、人間関係に嫌気が刺したのかも知れない。
そんないいかげんな日々がどれほど続いたのだろう? ある日仕事仲間が大変なミスを犯してしまい、会社や
お客さんに多大な迷惑を掛けてしまう。 どうすればいいか解らず相談してきた仲間をかばって上司に掛け合ってみた。
あろう事かそこから話が発展して全ては私の責任になってしまった。私は仲間をかばっただけなのに・・・
仲間は? そうなったら知らぬ顔。さらには陰口まで叩く始末。人間なんて信用したらロクな事にならん。悔しかった。
クソ!クソ!クソ!クソ!クソ! やり場のない憤りに気が狂いそうになる。甘かった。生き馬の目を抜くリーマン社会
に対しても自分は甘かった。 3男の忠告はパチンコだけじゃなく人生の忠告でもあったんだ・・・
ムシャクシャして向かった先はパチンコ屋だった。 釘を見る訳でも何でもなく、意味なくカド台に座る。いったいいくら
使ったのだろう? 気が付けば足元にはドル箱の山。どうしてこうなった? さっぱり解らなかった。が、体中に電流が走った。
ここは出した奴が一番偉い世界。身分も社会的地位もまったく関係のない「出せば偉い」解り易い世界だった。
「ここでやって行こう!」 涙が止まらなかった。自分の居場所を見つけ、そして目標を見つけた私は嬉しかった。
「勝つ為の努力は惜しまずやって行こう」
今日の勝ちは神様に与えられたような「運」だけの勝ち。 こんな勝ちは今後なくしていかなくては先に繋がらない。
勝ってやる!俺は勝ってやる! そう心に固く誓った21歳の春だった。