貴賓室での王子達
晩餐も終わり、各候補者達は割り当てられている貴賓室に戻っていった。
セージは気の置けない家臣に囲まれて、“シロン姫対策会議”と言う名のティータイムを過ごしていた。
「今日一日、シロン様と楽しく過ごされたようで、宜しゅうございました」
生まれた時から側にいてくれる年嵩の家臣達は今日一日、セージとシロンの動向を、やきもきしながらも、孫を見つめる祖父のように暖かく見守っていた。
「ご家族の反対を押し切ってまで、来られた甲斐がありましたね」
「無理を通した事に後悔はないんだ。会ってみて改めてシロン様は本当に素晴らしい方だと感じた」
シロンの事を話す時は嬉しそうだったのに、ふとセージの顔が曇る。
「何か不安なことでもございますか?」
「私の我が儘を聞いて送り出してくれた父上に、腑甲斐ない報告をする事にならなければいいと思って」
セージは他の候補者を思い浮かべ。自分の年齢を考えため息を吐く。
「今の所、セージ様が一番シロン様の好感度が高いように感じますが」
「確かに、仲良くはしていただいているが、今のままではダメだと思うんだ。もっと異性として意識してもらわないと。私はあの方の信頼を得たい!」
セージが力強く宣言すると、家臣達は感動に打ち震えた。
「セージ様、ご立派でございます!」
「よし、皆んな、自分がプロポーズした時の事を思い出すんだ! 参考になるかもしれん」
家臣達のシロン姫を振り向かせるための提案は夜遅くまで続いた。
◇◇◇
アゲートの滞在する貴賓室では衣装選びが行なわれている。
「アゲート様、明日のお召し物はいかがなさいますか?」
アゲートの前には色鮮やかな衣裳を掲げた従僕がずらりと並ぶ。
「これだな。それと、装飾品は姫の瞳の色に合わせたものを」
「ご用意しております」
侍女は視線で合図を送り、宝飾品を並べたトレイを持ってこさせる。
「そうだな、これが一番姫の色に似ているか」
侍女はアゲートが指したピンクトルマリンとグレームーンストーンが連なった首飾りを手に取り、さっとアゲートの首にかけると、控えていた従僕が姿見の鏡をアゲートに向けた。
「やはりこれがいいな」
アゲートの確認が終わると、首飾りや衣装は素早く片付けられる。
「明日の舞台の準備はどうなっている?」
「はい、楽師、踊り手ともに準備は整っております」
「そうか、構成はどうなった?」
「他国の使節団とも打ち合わせ。協議の結果。ラストリア国は三番目となっております」
「他の演目の兼ね合いもあるのだろうが、三番目か、中途半端だな。まぁいい、出演者にはやる気が出るように追加で報酬を渡しておけ」
「畏まりました」
報酬を上乗せしてもらった楽団員達が張り切ったのは言うまでもい。