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一日目 候補者との初対面

 まず最初にやってきたのはプラト国。長身の青年が無駄のない動きで礼をとる。それに合わせて後ろで一つにくくっているチェリーレッドの髪が揺れる。


「プラト国 第三王子 ケルビン・ハートレーです。シロン姫、お会いできる日を心待ちにしておりました。シロン姫は研究に興味がおありと聞き及んでおります。我が国でも多種多様な研究が盛んで、私はすべての研究結果に目を通しております。私と過ごす時間は、シロン姫にとって有用な知識を得られる機会となるでしょう」


繊細な装飾が施された銀の片眼鏡が彼の知的さをより印象付けるのに役立っていた。


「プラト国ではどんな研究をされているのか……大変興味があります。是非お聞かせください」


ピートの視線を感じて、シロンは色々聞いてみたいのを我慢しつつ、にこりと微笑んだ。


 次にやってきたのはラストリア国。金の髪に褐色の肌の青年。ジャラジャラとたくさんの宝飾品を身にまとっているのが印象的だ。高貴な彼の雰囲気にはよく似合っていて、センスが非常に良い。シロンの前に片膝をつくと、さっとシロンの手を取り手の甲に口付けを落とす。


「ラストリア国 第六王子 アゲート・アーカンサスだ。アゲートと呼んでくれ。それにしても、噂に違わず女神のごとく美しいな。国より貴女に捧ぐ数々の宝飾品を持って来たのだが、貴女の前ではどんな素晴らしい宝石も霞んでしまうだろう」

「……」


シロンが免疫のないアゲートの言動に固まってしまった所で、ラカがシロンの手をアゲートから取り戻す。


「は~い、アゲート様。シロン様へのこれ以上の接触は禁止とさせていただきます」

「なんだ、ラカではないか、久しいな。俺の物になる件は考えてくれたのか?」


アゲートがラカへと向ける熱い眼差しに、ピートとシロンは思わず目を見開く。


「誤解を招く様な言い方はご遠慮くださ~い。専属空艇操士になる件は丁重にお断りしましたよね? さぁ、次の方がお待ちですので席にお戻りくださいね~」

「俺はお前が頷くまで、諦めないからな。いつでも俺の元に来るがよい。もちろんシロン姫、貴女の訪いも大歓迎だ」


アゲートはいい笑顔をシロンに向けると、マントを翻しその場を後にした。ラカは遠い目をしつつその後ろ姿を見届ける。


「ハァ~。困ったお人だ」

「アゲート様はラカの事、相当気に入ってるのね」

「その話はまた後でゆっくりと聞かせてもらいましょう。さぁ次の候補者がいらっしゃいますよ」


ピートの言葉にシロンは気持ちを立て直した。


 次にやってきたのはサギーナ国。がっちりとした体躯の青年が業務報告でもするように、言葉少なに挨拶を行う。


「自分はサギーナ国 第二王子 グロム・ギベリという。母国では騎士団に所属し副団長を務めている。よろしく頼む」


武人らしく短いダークグレーの髪をかっちり固めて後ろに流している。銀の翼の紋章が刺繍された濃いグレーの正装はサギーナ国の騎士団のもののようだ。


「今まで、サギーナ国とラヴォーナ国は限られた交流しかありませんでしたが……これを機にお互いの国の良さを伝えて行ければ良いですね」

「……そうなれば良いな」


グロムは神妙な顔で一つ頷くと、足早にその場を去った。


 最後にやってきたのはサルト国。まだ幼さの残る顔とは裏腹に、大人顔負けの向上を述べる。


「シロン・ラヴィターニア様、お初にお目にかかります。サルト国 第四王子 セージ・トロープと申します。どうぞセージとお呼びください。候補者の一人としてこの場に参加できたことを光栄に存じます 。年下は頼りなく思われるかもしれませんが……貴女の笑顔を僕に守らせて頂けたら嬉しいのですが」


ミルクティーのようなふわふわの髪に利発そうな瞳。シロンを見つめる瞳は緊張からか、うるうるしている。


(ハァ~小動物みたい……撫でたい)

「……シロン様」


ピートの咳払いで思わず出かけた手を握りなおして、にこりと微笑む。


「セージ様は国民の健康を守る為に、薬草栽培を研究されているとか。滞在中に、我が国の薬草園も是非ご覧になってください」

「ありがとうございます。ラヴォーナ国の貴重な薬草園を見学出来るなんてとても嬉しいです」

 

シロンは候補者達との初対面をなんとか無事終えることが出来た。

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