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朝の準備と完璧貴公子

 ついに、候補者との顔合わせの日となった。


「おはよう~姫さん。準備はできてるか?」

「ラカ、準備中の女性の部屋にノックも無しに入って来るなんて礼儀がなっていませんよ」


いつものように飄々としたラカに、マーサのお小言が炸裂する。


「おっと、すみません。入室してもよろしいでしょうか? 姫様」

「おはよ~ラカ、入って。貴方は今日も元気ね」


早朝から長時間、マーサと侍女’sのされるがままになっているシロンは既に疲労困憊気味だ。


「朝食食べる時間無いだろうからって、これ差し入れ」

「ありがとう~ラカ。マーサ、食べてもいい?」

「シロン様、今しばらく我慢してくださいな。あと少しで完成ですからね」


ラカは軽食が入った籠をテーブルに置き、持っていたもう一つの箱をマーサに渡す。


「マーサ、これ、ピートから渡してくれって」

「まぁ、綺麗。頼んでいた生花ですわ」


箱の中にはシロンの瞳の色に近い、小ぶりの薔薇が敷き詰められている。今朝摘み取ったものを瑞々しさを失わないようにピート特製の薬剤に漬けて加工がされているようだ。マーサはそれらの薔薇を丁寧に一つづつ、シロンの髪に編みこみながら緩く結い上げていく。


「さぁ、できましたよ」


 マーサの言葉に、侍女’sがさっと姿見の鏡を向ける。鏡の中にはラヴォーナ国の紋章が銀糸で刺繍された淡く輝くアイボリーカラーのドレスを身にまとう、いつもより少し大人っぽいシロンの姿。


(素敵、私も少しはお母様に近づけたかしら)


鏡に映った自分の姿を見つめ、儚く美しかったタリス女王を思い出し、少ししんみりする。そんなシロンの視界に四方八方ぐるぐるシロンの周りを回っているラカに気がついた。


「ラカ、何してるの?」

「うん? いや、今日の姫さんは、キラキラ輝くお花の妖精さんみたいに可愛いなって思ってさ。目にしっかり焼きつけてるとこ」

「ふふふ、なぁにそれ?」


ラカの言動に自然と笑みがこぼれる。


「さぁ、シロン様。お茶が入りましたよ。軽食を召し上がったら、お化粧直しいたしますからね」


 マーサに促されて席に着く。フルーティーな香りを楽しみながら、爽やかなお茶を口にすると、緊張が和らいでいく気がした。軽食を口にしながらふと疑問に思ったことをラカに問いかける。


「そういえば、ピートは今日どうしてるの?」

「ん? 姫さん聞いてないのか。彼奴も朝から準備してるよ」

「準備?」

「そそ、心配しなくても、そのうち姫さんとこに来るよ」


 お化粧直しも終わった頃、ラカが言ったようにピートがやってきた。


「シロン様、お迎えにあがりました」


いつも見慣れた王立研究室の白衣ではなく、ブルーグレーの正装に身を包んだ完璧な貴公子がそこに居た。


「ピートが広間までエスコートしてくれるの?」

「はい、シロン様。本日のドレス、よくお似合いです」

「あ、ありがとう。ピートも」

「さぁ、遅れるといけません。参りましょう」


 貴公子ピートのスムーズなエスコートにシロンはドギマギしつつ、必死で取り繕った。


(流石、冴え渡る氷の君。姫さん気をしっかり)


ラカは空挺師団の儀礼用の制服を、襟元までしっかり留めながら、二人の後に続いた。

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