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近隣諸国と四人の候補者

 この世界には五つの大国が存在する。


 南西には、広大な国土を有し自然豊かで、農業、酪農などが盛んなサルト国。北には、険しい山脈が連なり広大な森林を有し、一年のほとんどが雪に閉ざされるサギーナ国。海峡を挟んだ東には技術者が多く住み、学術・産業都市であるプラト国と、鉱石などの地下資源が豊富なラストリア国。国土はさほど広くないものの、四つの大国に囲まれるようにしてあり、古くから交易都市として発展してきたのがラヴォーナ国である。


 過去には領土を巡って幾度かの戦が起こったが、この百五十年ほどは五カ国の平和条約の元、ある程度友好な関係が続いている。


 王都の郊外にある飛空船ドックに各国の飛空船が次々と降り立った。飛空船を見ると国ごとの特徴がよく出ている。


 プラト国は希少金属を貼りめぐらせ軽量化を図っており、速度が出ると噂の最新式のもので、流石は匠の国といったところか。ラストリア国は一見地味で古風な飛空船だが、使われているのは貴重な素材ばかりの絢爛豪華な飛空船。王子自ら操縦している。サルト国は国内で大活躍しているという、沢山の物資が輸送可能な、とても実用的な飛空船だった。サギーナ国は黒光りする重金属で堅牢に作られていて、武を尊ぶお国柄らしく、まさに要塞のような飛空船だ。


 飛空船は各国間を長距離移動する為に使用される空飛ぶ船だ。貴重な蒼輝石(そうきせき)を燃料にして空を行く。


 ラヴォーナ国の紋章がついた空挺師団の小型飛空船が出迎え、各国の王子と外交官らが乗り込み城へと向かう。各国の使節団はディオ国王に謁見し挨拶を交わした後、城内に用意された貴賓室に落ち着く。それぞれの国の思惑のもと、シロンとの顔合わせの日まで外交に励んだ。


 他国に先駆けて、少しでもシロンに会えぬものかと各国が問い合わせたが、どの王子も期日までシロンに出会うことは叶わなかった。


 そして迎えたシロンとの顔合わせの日、広間に集められた王子達は世話役からの話に耳を傾けていた。


「皆様にはこれから七日間、シロン様との交流を深めていただきます。最終日、シロン様が真に望まれるものを提示出来た方が、シロン様の成人の儀にエスコートを行って頂くことになります」

「なるほど、その栄誉を受けたものがシロン姫の伴侶となるわけですか」


候補者最年長、プラト国の第三王子 ケルビン・ハートレーは眼鏡を煌めかせ小さく呟く。


「シロン姫はいったい何をお望みになるのでしょうね。楽しみです」


サルト国第四王子 セージ・トロープは幼さの残る顔でニコリと微笑む。


「財力で何とかできるものであればいいんだがな」


ラストリア国第六王子 アゲート・アーカンサスは首に下げた宝飾品に触れ、思案顔だ。


「…………」


サギーナ国第二王子 グロム・ギベリは特に言葉を発することなく瞑想するかのように静かに目を閉じた。

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