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とある貴族のありふれた結婚

作者: 椿

 とある王国に住むとある貴族の男性がいた。

 彼は遠い親戚筋である貴族の女性と結婚した。珍しくもない家柄の結びつきのためだけの決められた結婚。ありふれたものだ。

 結婚から一年半程経ち奥方となった女性は子を孕んだ。これが男なら安泰。だが万一のことがあるからもう一人はほしいところだ。そう考えながら当主となった男性は椅子に座っている妻の大きくなった腹を見る。

「女というのは不思議な生き物だな。こんなに腹が大きくなるものなのか」

「御気分を悪くしてしまったのなら申し訳ありません」

 謝罪と共に頭を下げる妻に当主はいや違うと頭を上げさせる。

「驚いたが不気味とは思わない。俺もお前もその大きな腹から出てきたのだからな。聞いていると思うが母は俺を産んですぐに死んだ。馬車の事故で死にかけとなりながら産んだという。抱きしめることができたのはせめてもの幸せだったと父は言った。そしてお前はそんな誉れ高い母から産まれたのだと、それを忘れるなと何回も言われて育った」

 男尊女卑は当たり前のこの国では妻は子を産む道具。娘は家の利益のために嫁がせる道具。そう扱われていた。もちろん妻も娘も愛する貴族はいるにはいるが少数派なのだ。妻は愛していないが道具扱いには眉をひそめる。この当主はそういう考えの男だった。



 それから更に時は経ち、妻は無事男児を出産。後継となる男児の誕生に屋敷は祝福ムード一色となる。

 ベッドで横になっている妻とその横で寝ている息子。母子共に無事なことにホッとしながらもそれは顔には出さず、口を開いた。

「無事男児を産んだか」

「見舞いにきてくださりありがとうございます。後継となる男児を産むという役割を無事果たすことができました」

「だがこれからだ。息子を後継に相応しい男にするために教育をしていかなければ」

「心得ております。これからは妻として母として励んで参ります」

 我が子を起こさぬようにゆっくりと優しく抱きしめる妻。その顔には今まではなかった、母としての表情が含まれているのに気づいた当主の胸が大きく高鳴った。

 それが、初めて妻を愛したきっかけだった。



 後日それを聞いた妻は母の愛情がほしかった貴方が母となった自分にそれを求めているのだと、貴方の言う愛は親に対する愛だと、勘違いしているのだと冷静に諭そうとする。

 それに対し当主はきっかけはともかく、今俺はお前を愛している。妻に対して可笑しい感情ではないだろうと開き直って愛を告げるのだった。

 たしかに可笑しくはないですが母となってから惚れるだなんて、他の貴族の方に聞かれたら笑われますよ。と呆れたように返す妻だがその顔はほんのりと赤くなっていた。

(え?俺の妻、可愛すぎないか!?)

 さらに愛しさが募る当主だった。



 その家は子宝に恵まれ、試練と言えるような出来事もいくつかあったが無事乗り越え、夫婦仲睦まじく生涯を過ごしたという。

お読みいただきありがとうございました。

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