エクストラ 「暗躍」
暗き夜、二人の姉弟は言葉を交わす、一人は影に身を委ね、一人は光の元にあるソファーに腰を掛ける。大きな欠伸は疲労した身体の表れであり眠たげだ。マッサージするも自力では限界があった。
「サクラはどうだ?結局学舎には言えなかったらしいが……」
「うん、あの体調で動かすなんて鬼畜でしかないからね♪」
女性はソファーに手を置いて招くも拒否される。
「戦士としてはどうだ?」
「ちょっと謎が多いね、二重人格も気になるけど本当にハルカが言う通りならあの娘も【禁忌の力】を持ってることとなるね」
「何故そう言える?」
「ハルカは死ぬ前に子供の頃怪我をした自分の指をユカリちゃんが口で止血した話があったから多分そこで感染したんじゃないかなってさ」
「【呪血】か……サクラの父親から遺伝された物らしいな」
「そうね、でも何故数百年前に滅ぼされたモノが今になって出て来たのか不思議ね」
「何かあったんじゃないのか?例えば呪血を生み出した子孫や一族とかさ」
「いいえ、あの家族と呪血は全くもって無関係よ?研究施設にあった資料を見てそれが証明されているし恐らくは……」
女性の推測が正しければものすごく厄介なことなる、それを発言するには恐怖すら感じてしまう。一呼吸を置いて口を開く。
「【作った】か、或いはその血を帯びた武器を拾ったか」
「確証は無いのだろう?」
「いいえ、ハルカの武器からは実際その太古の血液が生きていた。それにハルカは飲み込まれて犠牲者となった」
「掘り起こしたのか?」
「聞く限りだと冒険した先の地下に大鎌が封印されてあってハルカはそれを知らずに持ち去って武器にしていたらしいの」
サクラの姉は不運にもその力に苛まれ命を落としてしまった、だがそこには不自然さも目立った。
「そこって地星だよな?あの場所に地下は奴隷だらけで大鎌なんざ見つからんだろう」
「それが連れて来られて独り立ちした後すぐ近くにあったらしいの、まぁ恐らくは人工的に作ってハルカにわざと拾わせたんでしょうね」
「ってことは両親は何者なんだ?聞いた話によると呪血の後継者を探しているのか?」
「さぁ?確かなのは壮大な企みがあるってことね」
「だがそうなるとサクラは何故捨てられた?産まれて早々に捨てられてサクラハルカが拾って隠れて育てていたってのは聞いたが」
「恐らくは魔力じゃない?両親のどちらかは元々こちらの人間で魔力を持つ子どもが欲しくて産んで結果がハルカが継承されたってことかな?」
魔力、本来なら地球という星には存在しない力、それが所持してるとなると自ずと両親のどちらかが黒ってことになる。
「それで魔力の無いから要らないサクラは捨てられたってことか」
「可哀想よね……」
女性の言葉には確かな重みを感じる、子どもが好きだからこそ両親のやり方に嫌悪感を抱いているのだろう。唇を噛み締めれてももう時は戻って来ないことには変わらないのだから。
「お姉さんはその両親を見つけたら殺してやる……腹の中にある臓物を引っ張り出して一体どんな汚いモノがあるのか楽しみね」
「復讐が二重になってるな」
「勿論よ、お姉さんはどんなヤバい病気を抱えても子どもでも変えられる未来は変えてみせる。お姉さんの騎士団はその為の拠り所だからね」
「俺達全員病を患っているからな、姉さんが精神崩壊者、俺が記憶障害、ノアが精神疾患と脳の欠落。プレアが人喰いに最後のサクラは二重人格者か……」
「きっとこれからも増えると思うし皆を治療しながら家族として生きていかないとね♪」
女性はガッツポーズを決めながら大きな欠伸をする。
「お姉さん眠くなっちゃった……今日はもう寝ようかな?」
「姉さんの負担も大きいからしっかり休めよ?ガキを守るのは俺の分野じゃないからな」
「大丈夫~お姉さんに任せて~♪」
女性はもう我慢の限界なのか手を振りながら自室がある二階を上がっておやすみと挨拶する。
男性は頷きながらも言葉は交わさなかった。




