「悪夢に抵抗する」
「はっ!!」
長い夢を見ていた、だが何処からか平手打ちをされて覚醒した、起きて早々頬に手を当てると熱かった。
気が付けば家に居て、窓は真っ暗でもう夜になっていた。私はどうやら気絶してしまったのかベッドに安静に眠らされていたらしい。足と頭に違和感がある、それに腕が折れたような痛みがあった。
「あっ、ユカリちゃん起きたのね♪」
私が起きた後ゆいゆいがココアとクッキーをトレーから私のテーブルに置いてくれた。事情を聞くとどうやら私は急に暴れて家族を傷付けてしまったらしい、それも私でなく【もう一人の私】が、二重人格という一つの私の存在を明らかになった。その話を聞いて色々と思い出した。そうだ、ずっと心の中にあるシコリみたいなものはこれだったのか。空白の数十年間はほぼ全て裏の私が戦っていたんだ……
本当なら治すべきなんだろうけど二重人格はどうやら心にストレスという負荷が掛かり過ぎて自分を卑下し、その疲労を溜め込みか守る為にもう一人の心を宿してしまう自己防衛が極まった病気らしく本来なら治せる病なはずが私はとても特殊で施設でどんなに治療しても悪化が激しくなってしまいどうすることも出来なくなってしまったらしい。
裏の私は【私】と違い攻撃的で暴力を振るい、道徳心や理性の欠片もない危険な人物らしい。
私には全く自覚がないが現に家族が被害に遭ってしまったから全て事実だろう。
「施設の人はそれが耐えられなくなってユカリちゃんを迫害して監禁し、蹴ったり叩いたりしたから二重人格は最大レベルで悪化したらしいね、それで私がユカリちゃんを育てると聞いて満面の笑みで様々な書類や学校や育児費と言った生活に必要な費用を一年間施設で払う代わりに預かってくれってお願いされちゃったの」
ゆいゆいは微笑みながら私の頭を撫でてくれた。こんな私をそれでも育ててくれるのだろうか?
「あっ、言っておくけどそんなんでユカリちゃんの育児を止めるつもりは無いよ?だって元々は環境や人が誰もユカリちゃんを考えなかったし、誰も手を差し伸べなかった臆病で卑怯者に成り下がった大人にユカリちゃんを育てる権利なんか無いから。ユカリちゃんはお姉さんが死ぬまで幸せにする、二重人格だって治すから安心してね♪大丈夫よ!ユカリちゃんは本当は甘えん坊で優しい女の子だった知ってるからね♪」
ゆいゆい……嬉しいのに涙が枯れて流れない。
それでも私は感謝の為に目一杯抱き付いた、身体の節々の痛みなんか忘れてしまうくらいに。
だけど今の言葉で少しゆいゆいの事が分かった気がする。あの全てを飲み込むような至極色の中には狂気すら宿っていたことを。




