「私と皇帝とユイ」
走り疲れて倒れ込む男性に私は肩を貸す。
男性が言うには風星の方角から突然不明なロボットが街に進行しているのを見た、初めは光星から生まれたロボットだと思い込んでいたがその見た目は蜥蜴の骨格に毛皮を無理矢理着せられたような血塗れのロボットが一人の男性を噛み砕いていたではないか。
男はこれを襲撃だと見て急いでレヴィアサンに報告してきたようだ。逃げてる直前にはまた一人誰かの悲鳴が聴こえ全速力で逃げてきたらしい。
「だからレヴィアさ――― 」
瀕死の彼が死物狂いで経緯を話していたその時レヴィアサンの槍が男性の首元を払い切り“それ”を斬り落とした。
「えっ?」
ユカリはその男性の頭がポロリと落ちて唖然とする。
「下らない、そんなことの為に私に助けを求めたの?男ならその場で闘うことすらしない弱者が何で助けないといけないの?」
切り落とした男性の頭を蹴り上げレヴィアサンは溜め息を吐いた。
「ひ、酷い」
私はついに口に出してしまった、男性はただ生きる為に逃げてきたのに、情報を提供しただけなのにレヴィアサンの思想だけで殺すなんて酷すぎる。
「ここは私の星、私に服従し、私を讃え、私の思想で動かなければその場で死刑よ。私は全員にそれを伝えたと言うのに愚か者め」
男性の死体を取り上げその場で死体を蹴る。その光景に私はただ怯えて見つめてるだけだった。
「皆!改めて理解しなさい、私に歯向かった者は全て死刑よ!役立たずは要らない!私の役に立てるなら喜んで死になさい!」
レヴィアサンは絶対王政を唱え男性を蹴るのを止めた。耐えられなくなった私は隙を見てゆいゆいに抱きついた。
「ユイ、アンタはこの星の民でなくて良かったわね♪」
「ふん、私ならロボットなんざその首ごと持ってきてやるのにね」
「だからアンタ達に依頼したのよ?お金、欲しいんでしょ?」
ちっ、舌打ちを鳴らしながら私を抱えていない手でデバイスを取る。
「ノアちゃん、お姉さんだよ♪目標のロボット見つかったからプレアちゃんと一緒に挟み込むからお願いね♪うん、うん、ユカリちゃん?大丈夫!やっぱりここに来ちゃったみたいだからすぐに帰すよ、またね♪」
プツっとゆいゆいは連絡を終えて肩を掴む。
「ユカリちゃん、分かったかな?この星だけじゃなくて住む世界は危険でいっぱいだからもう二度と勝手に来ちゃだめよ?お家に帰って明日の用意をしなさない」
「で、でも!」
「それとも……悪い子だから付いて来る?」
ゆいゆいの悪びれた言葉にドキンと胸を打つ。その表情には禍々しさを捉えた。
「ゆいゆい……血とが出ない?」
「お姉さんの心配するの?分からないな~♪」
「だ、だって!ロボットなんでしょ!!?兵器を積んでるかもしれないのにゆいゆい死んじゃうかもしれないよ!?」
「そうね、死ぬかもしれない。けどねそんなんで怯えていたら叶うものも叶わないの♪お姉さんは復讐者だからね」
堂々とした表情に揺るがない意思、余裕満々のゆいゆいだが私は決して離れなかった。
「駄目だよ!ゆいゆいは私の!私の大切な人だから!!死なせないよ!」
「戦場でお荷物を担ぐ方が怖いと思うけど?」
「お荷物にならないから!私、ゆいゆいの為なら頑張る!」
「威勢を吐くことすら出来ない子どもは何の役にも立たないよ?ユカリちゃんが本当にお姉さんを守りたいなら行動で示して貰わないと……」
震えていた、私は恐怖に負けていつも心の中に閉じ籠って逃げた。だから知らない間に別の誰かが戦っていた。だがあの時の自分とはもう違う、怖くても大切にしてくれる人を守りたい、大好きな人をもう二度と失いたくない。
だから私はゆいゆいの腕を掴んだ。
「ゆいゆいは私が守る」
私の決死の覚悟のその表情にゆいゆいはふっと笑った。きっと馬鹿にされるだろうと思ったが頭を撫でられた。
「んじゃあ行こうか♪果てしない戦場にね♪」
ゆいゆいは許してくれた、私の手を引いてその手を離さないように震えた脚を動かして作戦地へと向かうことにした。




