89.第四試合
異世界転移をしたパーフェクトガール、北大路ナミことナヴィ。
職業『村人A』
仕事『駆け出し冒険者に、最初のダンジョンの情報を与える』のみ。
王都公認 『案内人適性試験』に臨むナヴィ。
試合開始の合図とともにザクレーの必殺技が炸裂!
「先手必勝ぉぉぉ!」
<疾風斬!>
振り上げられたザクレーの大剣から巨大な風の斬撃がナターシャに襲い掛かった。
「そのまま吹き飛べ!」
「っく」
ナターシャに斬撃が当たり、大爆発を起こした。
「ナヴィさん! さっき言ってたやばいかもって……」
観客席で見ていたルナがナヴィに問いかける。
「えぇ。あたしも彼がフィールドに登るまでは気づかなかった……」
ナヴィはしてやられたような顔をしながら爪を噛んだ。
「獣人族はその高い身体能力と優れた五感で戦っていくタイプだけど、その反面魔法関係の能力はヒューマンに比べて劣ってる。特に魔力感知に関しては……」
多分だけど魔力を練り始めたのはサルミラと話し始めてからだった。ということは一応サルミラにも作戦があってそれを実行した形っぽいけど。
まさか、ここで負けるなんてないわよね……ケビン。
観客には大爆発の残音とザクレーの笑い声のみが聞こえていた。
「ふ、ふははははは、この煙が晴れるのを待たずとも結果はもう決まった! さぁスーザン殿、私の勝利を高らかに……」
「はぁぁぁ!」
「なに! 後ろから……?」
声のする方向を向くと背後から一瞬で距離を詰め大鎌で斬りかかるナターシャの姿があった。
「くっ間に合わないか……おらぁぁっ!」
ザクレーの大剣がナターシャの攻撃を間一髪のところで防いだ。
「あら、ザクレーさん。王宮騎士の長男とは思えない乱暴な言葉遣いね」
「ナターシャ。貴様どうして私の奇襲を……」
「ふふ、そりゃもうあたしには『天才上級ガイド様』がついてますからね!」
試合開始前の作戦会議中のことだった。
「ナターシャ。お前は獣人族だ」
「む、ケビンさんなぜそのことをそんなにはっきりと……」
「別に悪く言うつもりは全くない。むしろ俺達にはない可能性が獣人族には秘められているからな」
「ケ、ケビンさん好きっ!」
両腕を広げ抱き着こうとするナターシャの顔をケビンは片手で止めた。
「あーうぜぇ、抱き着こうとするな。時間の無駄だ」
「そんなぁ」
「それでナターシャ、獣人族のお前だから聞くがお前ら獣人族とヒューマンは何が違う?」
「うーんそうですね。まずは見た目、この可愛い耳とかフリフリの尻尾とか!?」
「そういう話をしてるんじゃない。能力的なところだ」
顔に手を当てため息を吐きながら問い続けた。
「あぁ、あたし達獣人族は感覚の鋭い種族です。特に嗅覚や聴覚、あとは反射神経とかはヒューマンよりも優れている点と言えますね。逆に頭を使ったり魔法関係のところは劣っています」
「うん。よく分かってるな。基本的には昨日教えた通り戦えばお前はまず間違いなく勝つことができるが、一つだけ。相手の初動に注意しろ」
「初動……ですか」
「あぁ、相手は首席だ。ある程度頭を使って戦いに来るだろ。特に今から試合開始までの間。おそらくだが獣人族の魔力感知の疎さを突いてくるだろう」
「確かに魔力感知は苦手ですが魔法を打つには基本時間がかかりますし……あっ!」
「気づいたな」
「今こっそりと魔力を溜めておいて試合開始と同時に……?」
「あくまで可能性の話だ。そのくらいのことがあるかもと警戒しながら戦闘を始めていけ。それさえ避ければ後は近接戦闘で戦ってけばお前なら楽勝だ」
「そろそろ試合始めますよー!」
「さぁ、スーザンさんが呼んでる。行ってこい」
一度フィールドに上がろうとするナターシャだったが振り返りケビンに近づく。
「ケビンさん。なんか急に震えが……」
「なんだ、緊張してんのか?」
「わ、わかりません……」
ケビンは震えるナターシャの手を取った。
「け、ケビンさん!?」
「ふ、ナターシャ違う。これは武者震いだ。大丈夫だ俺が後ろにいる。お前は七位の実力なんかじゃない。観客にそれを知らしめて来い」
ケビンは空いている手でナターシャの頭をぽんと撫でた。
「は、はい! じゃあ行ってきます!」
あははは、後半は関係ないけどまさかケビンさんの予想通りの行動をしてくるなんて!
「お前顔が赤くなってるぞナターシャ!」
「は! な、なってないし!」
「隙あり!」
拮抗して交わっていた大剣と大鎌が一度離れ、ザクレーがナターシャ目掛けて突きを繰り出した。
「ちっ、なんて卑怯な!」
「隙を突くことのどこが卑怯なんだ獣人族! あぁこういうのはお前らの専売特許だったか?」
「てめぇ。あたしを怒らせるとどうなるかわかってんのかぁ!?」
「ナターシャ! 落ち着け!」
「は、ケビンさん!?」
ケビンの声に反応し振り返るナターシャ。
「ふん、馬鹿かそのタイミングで呼んだら後ろががら空きになるともわからないのか! 低能な案内人め! そのまま場外に吹き飛ばしてや……えっ」
そのまま大剣を振りかざそうとした瞬間、ザクレーの眉間にナターシャの踵がめり込んでいた。
「ぐあっ!」
踵蹴りをくらったザクレーは一回転し背中から地面に落ちた。
「くそっ、振り返ったと思わせてその回転を使ってすかさず回し蹴りか。いかにも獣人族らしいこすい戦い方だな」
「は、あんたが言ったんでしょあたし達の専売特許だって」
ザクレーはふらつきながらも立ち上がる。
「それに、戦い方云々、今倒れていたのはザクレーあんただよ」
「もっと必死で掛かってきた方がいいんじゃない? 首席殿」
人差し指をくいくいと動かし挑発するナターシャ。
「き、貴様ぁ!」
最後までご覧いただきありがとうございました!
第八章 十四話 いかがだったでしょうか。
少しでも面白いと感じていただけたら、評価、レビュー、感想、ブックマーク、ぜひお願いいたします!
こちらの作品は毎日2000~3000字ほどで朝7~8時を目安に更新しています!
ぜひ次回もご覧ください!
ナターシャが首席ザクレーを圧倒!




