85.勝ち方
異世界転移をしたパーフェクトガール、北大路ナミことナヴィ。
職業『村人A』
仕事『駆け出し冒険者に、最初のダンジョンの情報を与える』のみ。
王都公認 『案内人適性試験』に臨むナヴィ。
第二試合はブランとダリウスの勝利……?
「ミ、ミミィ選手、戦闘不能。勝者、ブラン、ダリウスペア!」
「救護班! 早く、タンカを! 急いで!」
「うそ……」
観客席で見ていたサテラの声が震えていた。
「まさか、ここまで圧倒的な試合になるなんて……」
その隣で見ていたナヴィは眉間にしわを寄せる。
気絶していたミミィの顔はダリウスに何度も殴られた跡があり、見るも無残な姿となっていた。
「ダリウス……どうしてあんな惨い戦い方を」
「うん。あたしもさっき廊下で会ったあの気弱そうな子がこんなことするなんて思えなかった」
会場からも不穏な空気が流れ始めていた。
「それにダリウス君だっけ?」
「はい、どうかしましたか」
「あの子、勝ったのに全然うれしそうじゃない……」
サテラがダリウスに目を向ける。
そこにはフィールドの中心で立ち尽くし下を向いていたダリウスがいた。
「……めんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」
「よくやったねダリウス」
「ひっ!」
ダリウスの背後からパートナーとしてバックにいたブランの声が聞こえてきた。
ダリウスはその声を聞くと反射的に振り返りブランに駆け寄っていった。
「ブ、ブランさん。僕、か、勝ちました」
「あぁそうだね。よくやった」
「あ、ありが…」
その瞬間フィールドからパンッと大きな音が鳴り響いた。
「えっ……」
ダリウスの頬が一瞬で赤く染まり、そのまま膝から崩れ落ちていった。
「彼女の息はまだあったよ。どうして最後まで仕留めなかった」
それまで微笑んでいたブランの表情が一変し、鬼の形相となっていた。
ダリウスは赤くなった頬を抑えながら、ブランを横目で見る。
「そ、それは、あれ以上やったら、し、死んじゃうと思ったから……」
「だからぁ! そういうのが甘いって言ってんだよ! 容赦するな、やるなら殺すまでだ!」
ブランはダリウスの胸ぐらを掴み、右腕を思い切り後ろに引いた。
「わ、わかりました! 次は、次は必ず。だからもう殴らないでください!」
その言葉を聞いた瞬間、ブランの表情が再度微笑みへと変わっていった。
「分かればよろしい。約束だぞ」
引いた右腕を優しくダリウスの背中に回し、小さい体を抱きしめた。
「僕の言う通りやれば、君は望んだとおりに強くなれるんだよ、だから僕を信じてくれ」
話し方も先ほどとは変わり、ナヴィと出会ったときのような優しい声でダリウスの耳元に囁いた。
「は、はい。ブランさん」
「じゃあ行こうか。次はナヴィさんたちのペアの研究をしないとね」
「はい」
「待ってブランさん」
ダリウスの手を引き、フィールドを後にしようとしていたブランをスーザンが呼び止める。
「何か?」
「それがあなたのやり方なの?」
「勝った方が正義です、スーザンさんも勝利宣言してくれたじゃないですか。何か問題でも?」
「ルールでは勝ったかもしれない。でも私はあなたのやり方は嫌いよ」
「試験官が私的感情を持ち込むのはどうかと……」
「っ!」
「トーナメントで優勝すれば公認の資格は確実なんでしょう? そのためにあらゆる死力を尽くしているのに。それじゃあ僕は公認の案内人なるなって言っているのと同じことですよ?」
「あなた……」
「何もないならこれ以上何も言わないでください。試合の結果が全てです。では僕らはこれで」
そういい放つと、そのまま二人は退場口へと歩いていった。
「「……」」
会場が二人のやり取りの空気を感じ取り、静まり返っていた。
「皆様お騒がせいたしました。フィールドの復旧作業もあるため第三試合は今から一時間後に設定させてください!」
「ふぅ次まで一時間後かぁ。僕トイレ行ってくるね」
サテラの隣で観戦していたハンナが立ち上がった。
「あ、あたしも!」
「「行ってらっしゃい!」」
サテラとエンフィーがナヴィとハンナを見送った。
「ハンナ。近くのトイレは込んでるから控室近くのトイレに行きましょ!」
「お、流石選手名だけあるね!」
「ふふ、それにルナも応援しに行きたいし! ハンナは先にトイレに向かってて」
「りょーかーい」
ナヴィはトイレの前でハンナと別れ、控室へと向かった。
「ルナ! 応援に来たわよ!」
「ナヴィさん! わざわざ私のために?」
「あぁ、あとついでにケビンもね!」
「俺はおまけか……」
「ナヴィ。見てたぞ。やるな、あの子……」
「ケビンさん当然ですよ! サテラはあたしの友達なんですから」
ケビンの背後からオレンジ髪の少女がひょこっと顔を出した。
「おい、ナターシャ勝手に……」
「いいじゃないですかぁ。あたしの友達のパートナーということはもはやあたしのパートナーと同じことです」
ナターシャはケビンの方をみてにんまりと笑う。
「理屈が分からん」
あきれ顔で頭を抱えるケビン。
「あら、仲良さそうにやってるのね! ルナのペアの子は?」
「おいらだよ」
「あ、この子、ロイ君っていうんです」
「あらこれまた小さい男の子ね……」
ナヴィは自分の体に手を当てロイと身長を比べた。
「あたしよりも五センチくらい低いから大体……」
「あぁ、それ以上言うなぁ!」
「ロイ君、だめですよ。ナヴィさんの子と叩いちゃ!」
ロイの背後からわき腹に手をまわしナヴィから引きはがすルナ。
「あはは。可愛い子ね。その子が六位の子よね?」
「はい、とてもそうは見えないですよね」
「む……またルナはそうやって」
ロイは顔を膨らませた。
「まぁ、でもこの子の力は本物です。そしてきっと私とペアになることでさらに真価が発揮されると思います」
「お、自信満々ね」
「はい、ナヴィさんもぜひ私たちのこと応援してくださいね」
「もちろんよ! あとケビンも」
「また俺はついでか!」
三人とそれぞれのペアのアカデミー生が他愛もない話をしていると鐘が鳴り、スーザンのアナウンスが聞こえた。
「復旧作業が完了しました。只今から第三試合を行いたいと思います! 選手はそれぞれ入場口までお願いいたします」
「では行きましょうかロイ君」
「任せてよ! ルナ!」
そのまま二人は控室を出て入場口へと向かっていった。
「ねぇケビン」
「なんだ?」
「あんな自信満々なルナあたし初めて見たわ」
「俺はあって間もないから何とも言えんが。そうなる理由がきっとあのアカデミー生にあるんだろ」
「そうね、いずれにしてもどんな戦い方するのか楽しみね!」
二人は控室についていたモニターで観戦を始めた。
「では只今から第三試合を始めていきたいと思います! 選手入場です!」
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第八章 十話 いかがだったでしょうか。
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ルナとロイのペアの戦い方とは。




