55.噴水
世界転移をしたパーフェクトガール、北大路ナミことナヴィ。
職業『村人A』
仕事『駆け出し冒険者に、最初のダンジョンの情報を与える』のみ。
『村人』→『ガイド』→『上級ガイド』へとクラスアップしたナヴィ。
デニス、テリウスとの一件があり、ナヴィは仕事を辞め心を閉ざしてしまった。
ナヴィを元気付けようと『幸運の聖水』を求めエンフィーとコイルの冒険が始まる!
ついにレアアイテムゲットか……?
「うわーすごい綺麗な水ですねぇ」
エンフィーは噴水から出た美しい水しぶきに目を奪われていた。
「確かに綺麗ですよね……この水面も濁りのない真水というか……」
コイルもエンフィー同様その水の美しさに見惚れていた。
「確かにこの噴き出た水が溜まってるこの水もすごく綺麗ですね……ん? コイル様」
呼びかけに応答しないコイルに違和感を覚えたエンフィー。
「本当に綺麗で……本当に綺麗で……この水本当に綺麗で……」
「ちょっ、コイル様!? どうしたんですか?」
水面から目を離さないコイルの姿は、感情の無い人形のようになっていた。
エンフィーはコイルの前に立ち、両肩を持った。
「コイル様! 目を覚ましてください! 本当にどうしちゃったんですか?」
肩をガシガシと揺らすもコイルは水面から目を離さなかった。
コイル様……どうしたら。……え?
コイルは刀に手を添えた。
「綺麗な水……」
え、うそ……。
「きゃっ!」
エンフィーを振り払うかのように抜刀した。そしてすぐさま刀を鞘に戻し、噴水に手を伸ばす。
斬撃を左に間一髪で避けることができたエンフィーだったが、上体を崩し尻もちをついていた。
いたたた。ここまで来るとさすがに怪しい……あれはきっと、モンスターか何かがこの噴水にコイル様を誘ってる……。ってこうしてる間にもうコイル様の手が!
「ああんもう、迷ってる暇ない!」
持っていた杖をコイルに構える。
「本当は冒険者様にこんなこと絶対にしちゃいけないんだけど、こうするしかない!」
「コイル様ごめんなさい!」
<エアシュート!>
エンフィーは水面に伸ばしていたコイルの手を狙ったが、威力があったのかコイルごと吹き飛ばしてしまった。
「あ、焦って威力のコントロールするの忘れてた……、コイル様!」
壁際に飛ばされたコイルの方に向かった。
「ん……いたたた。あれ? 僕噴水の前にいたはずだけどなんでこんな壁際に?」
「良かった……。コイル様。先ほどまでこの噴水か何かに洗脳されていたかもしれません」
「え、そうなんですか? 確かに見惚れてしまっていたのは事実ですが……」
「はい、それが多分洗脳開始のサインのようなものだったのです。私も正直危なかったです……洗脳されていたコイル様を見て正気に戻ったので助かりました。」
「ん? それってなんか複雑ですね……」
「そんなことないですよ。助かったんですから」
「あはは、じゃあそういうことで。エンフィーさん、ということはあの噴水……」
「ええ、多分あれは『幸運の聖水』なんかではなく、冒険者をはめるための何かしらのトラップのようなもの。そしてこの部屋でそれがあったってことは……」
「このダンジョンのボスの仕業……」
「ということはここからは嫌ですが話が早くなりますね。」
「……ボス戦」
その会話を聞いていたかのようにタイミングよく噴水を中心に水色の魔法陣が展開された。
「や、やっぱり!」
「エンフィーさん。一旦噴水から離れましょう」
「はい!」
二人は噴水から十メートルほど距離を取った。
展開された魔法陣がその場で回り始め、そのスピードに比例するかのように噴水から湧き出る水の量が増えていった。
「水がどんどん出てきてるけど!」
「コイル様! 溢れ出た水には触れないように、何があるかわかりませんから!」
数秒その時間が続くと、今度は噴き出た水が上に登り続け、噴水の上には大きな水の玉ができていた。
「ふふふ、危なかったなぁ少年」
「だ、誰だ!?」
「コイル様。あの水の玉の方から聞こえます!」
「わしの噴水とその水しぶき、そして光り輝く水面。どれも美しかったであろう?」
「しゃ、喋ってる?」
「知能指数の高いモンスターは言語処理能力を持っていると言われています。そしてそのモンスターは決まって……」
水の玉が少しずつ圧縮され、大爆発を起こし、大量の水しぶきとともに水で形成された龍が二人の目の前に現れた。
「戦闘能力の高い上級モンスターばかりです」
「あれが海龍リヴァイアサン……」
大爆発による大量の水しぶきを浴びる二人だったが、しっかりとその姿を目に焼き付けていた。
「やるのぉ娘。ほとんどがそこの少年みたいに、わしが用意した噴水に目を奪われてそのまま入っていき溺死していくんじゃがの……」
「まさか魔法で攻撃して少年の手を止め、洗脳まで解くとは……なかなか肝が据わっておるじゃないか」
「え? エンフィーさん?」
「さ、さぁ何のことやら」
エンフィーは反射的にコイルから顔を逸らした。
「ふん。だが主らは胸のタトゥーを見るとレベル二十クラスとただのガイドじゃないか。そんな中級者とも呼べない二人で果たしてわしを倒せるのかな……?」
「それは何も準備をしないでお前に臨んだ冒険者たちの話をしているのか?」
コイルがエンフィーの一歩前を出た。
「……なんだと」
「コイル様の言う通りよ。トラップの噴水のままでいたらまだわからなかったけど姿を現した時点で私たちの勝利は九十九パーセント決まったわ」
「……。無知というものを恐ろしいと感じないのが弱者の特権ということか」
「いいだろう。そんなお前らには最初から本気で相手をしてやる」
「ふっ。ありがたいな。それを倒せば『幸運の聖水』が手に入るってことだろ?」
「そういうのはまずわしと対等に渡り合ってからいうものだぞぉ! 小僧ぉ!」
「ギシャァァァァ!」
大量の水しぶきを上げ、口を大きく開けながらリヴァイアサンが二人目掛けてを突進を始めた。
「コイル様!」
「ええ、作戦通りです!」
このために丸一日潰してたくさん考察して、たくさん作戦を練ってきたんだ。絶対に負けられない。
コイルはゆっくりと刀を構える。後方には杖に魔力をすでに溜め切っていたエンフィーがいた。
二人はお互いを見つめ合い、無言で頷いた。
「「行くぞ! 海龍リヴァイアサン!」」
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第六章 十話 いかがだったでしょうか。
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次回 激闘! 海龍リヴァイアサン!




