45.挫折
異世界転移をしたパーフェクトガール、北大路ナミことナヴィ。
職業『村人A』
仕事『駆け出し冒険者に、最初のダンジョンの情報を与える』のみ。
『村人』→『ガイド』→『上級ガイド』へとクラスアップしたナヴィ。
再開を果たしたテリウスとナヴィ。しかし、テリウスが呼んだ最初の名前はナヴィではなくルナだった……
「大丈夫かい? ルナ」
「は、はい、テリウス様」
差し伸べられたテリウスの手に掴むルナ。テリウスは肩を持ちルナの身体を引き上げた。
「君たち二人は大丈夫かい」
「はい。だ、大丈夫です」
「私も……」
「そうか良かった。遅くなってすまなかったな」
無事だったエンフィーとナヴィを見て微笑むテリウス。
「いえ、むしろ助かりました。本当にありがとうございました」
待って全然理解できない。ルナとテリウス様は知り合いだったの? それにあたしよりも先にルナに手を差し伸べた……。テリウス様なんで? それにルナは。
「君たちは回復魔法が使えるかい?」
「あたしは使えますが……今は魔力がすっからかんで……」
「そうか」
<ヒール!>
テリウスの回復魔法が二人の傷を癒した。
「応急処置だがこれで村まで帰れるかい?」
「はい、あ、ありがとうございます」
テリウス様なんでそんなに他人行儀なの……
「それじゃ、俺たちはこれで……」
「え……」
テリウスはナヴィとエンフィーに背中を向け、ルナを担ぎ部屋の出口に向かいだした。
「待ってテリウス様! いっ!」
テリウスを追いかけようと立ち上がろうとするも傷を負ったナヴィは立ち上がれず這いつくばるようにテリウスに手をかざした。
「お姉ちゃんもう少し安まないと」
「待って。あたし分かりません。どういうことですか!?」
「ごめんな、ナヴィ。君はまだ早い」
「早いって……ねぇ、ルナ! 聞こえているんでしょ! どうしてあなたがテリウス様と一緒に……」
テリウスに抱えられているルナも顔だけナヴィの方に向けた。
「ナヴィさん。すみません。またどこかで」
ナヴィは震える声で二人に語り掛けた。
「ねぇ、どうして二人とも謝るんですか? どうして何も教えてくれないんですか? ねぇ行かないで!」
ナヴィは傷口を開きながらも無理矢理立ち上がり、テリウス達に近づこうとする。
「お姉ちゃん! 動いちゃだめ、また血が出始めてる」
「エンフィー止めないで。テリウス様! ルナ! 待って、待って!」
<アクセル!>
テリウスは自分のスピードを上げ、ナヴィから逃げるように部屋を出て行った。
行ってしまった。せっかく仲間ができたと思ったのに。せっかくテリウス様に会えたのに……。
「お姉ちゃん……」
ナヴィは膝から崩れ落ち地面に手を着いた。
あたし、ここに来て何ができただろう。
不在中とはいえ大事な妹を攫われ。このダンジョンに来るまでも来てからもルナのガーディアン頼み。
あたし自身に力がなく関係のないルナにまで戦わせて、エンフィーを助けることもできず。
その後はケビンの時みたいにテリウス様にピンチを救ってもらった。それにテリウス様とルナはきっと……。
何が『勇者パーティーに入りたい!』よ。あたしなんて何の役にも立ってないじゃない。周りを傷つけてばかりで自分は何もできていない。
あたしの存在価値って何なの。あたしって何ができるの……。
「くっ、ぐっ、う、うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「お姉ちゃん、落ち着いて! 私は大丈夫だから!」
ナヴィに抱き着き慰めようとするエンフィー。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! う、うおぇ。ひっぐ」
そこから数分ナヴィは泣き叫び続けた。エンフィーはそれを止めることも励ますこともできず、ただ抱きしめることしかできなかった。
エンフィーごめんね。こんなお姉ちゃんで。あなたにはいつも苦労掛けてばっかりだった。それにあなたを助けることもできずこんな場所で泣き叫んで。こんな情けないお姉ちゃん嫌だよね。
ごめんね。トニーおじいちゃん。冒険者をサポートするはずのこの仕事で、あたしは無力で大切な人も、自分すらも守れなかった。あたしもうこの仕事続けることができない。続ける資格もない。
あたし、今日でこの仕事を辞めます。
「テリウス様」
ダンジョンの出口へと到着したルナがテリウスの手を掴んだ。
「どうしたんだい。ルナ」
口をもごもごとさせながらルナはテリウスに話す。
「あの、良かったのですか? 久しぶりに再会したんですよね? あれではあまりにもナヴィさんがかわいそうです」
「あぁ、君の占いが当たったおかげでナヴィに会うことができた。けど……」
槍使いに受けた傷に手を当てるテリウス。
「こんな力じゃまだ駄目なんだ。あの子を守ることはできない」
「でも、それならもっと違う形の別れ方が……」
「ルナ」
「は、はい」
「必要以上に踏み込まないと最初に決めただろ、察してくれ」
「……はい」
「戻るぞ」
そこからの会話は一切なく、二人は夜の更けきった森の中を静かに抜けていった。
ナヴィ。すまない……もう少しだけ待っててくれ。
とある日の明朝。
爆発魔法で荒れた店内をほうきで丁寧に掃除するエンフィー。
テリウス様と再会してからちょうど一週間くらいかしら。私の傷はだいぶ癒えてきて、少し前から仕事に復帰しています。
デニスの一件も外で待ち構えていた勇者パーティーのライオ様、オネット様、マリア様によって全員王都の監獄送りになったそうです。
また元の日常に戻り始めました。
エンフィーはパンとスープをトレーに乗せ二階に上がる。
ナヴィの部屋の前に立ち、コンコンとドアを叩いた。
「お姉ちゃん。起きてる? 身体の調子はどう?」
「……」
エンフィーはナヴィの部屋の前に置いた昨日の晩御飯が目に入った。
やっぱり食べてない。水は飲んでるみたいだから何とか生きてはいるみたいだけど。それも一週間。もうそろそろ体に異常が出てもおかしくない。
ナヴィの部屋の扉に手を添えた。
「お姉ちゃん。出てこれなくてもいいからご飯だけは食べて。今の私の願いはそれだけ。仕事は私に任せてね」
「……」
「じゃあ私、仕事行くね」
「……」
ごめんね。エンフィー。
どうしたらお姉ちゃんは元に戻るんだろ。私じゃやっぱり駄目なのかな。
エンフィーは机に顔を伏せた。震える吐息と鼻をすする音がカウンターに響いている。
「あ、あの、すみません!」
玄関の外から若い男の声が聞こえた。
……? 誰だろ、まだ始業時間じゃないはずだけど。
エンフィーはゆっくりとドアを開けた。
「エンフィーさん。おはようございます」
「あ、コイル様。おはようございます」
目の前には装備が立派になった駆け出し冒険者のコイルが立っていた。
「朝早くにすみません。あの。突然で申し訳ないのですが、同行をお願いしたいのですが」
「え、同行ですか? すみません、今ナヴィは休業中で……」
「いえ、頼みたいのはエンフィーさんです」
「え、私ですか……?」
第五章 逆襲の『ガイド殺し』 エンフィー奪還編 完
最後までご覧いただきありがとうございました!
第五章 最終話 いかがだったでしょうか。
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ストックは特にありませんが毎日投稿をこの先も続けていく予定です!
また第五章になり、悩んでいたタイトルを改良しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
次回 第六章 開幕!




