255.後姿
異世界転移をしたパーフェクトガール、北大路ナミことナヴィ。
職業『村人A』
仕事『駆け出し冒険者に、最初のダンジョンの情報を与える』のみ。
魔王軍の侵攻により次々と領土を奪われていく人間達。
デンバード山脈も魔王軍との戦闘がさらに激化していく。
占拠されたカレンデュラ神殿へと偵察に向かったディノリアは。
魔王軍のデンバード山脈への侵攻が激化し、グローリア案内所の冒険者たちは徐々に抑え込まれていった。
「ヴィオネット! カレンデュラ神殿辺りの守備が崩壊してそのまま占拠されちまった!」
「何? まずいぞ。あそこのダンジョンを取られると他の場所では裏を、グローリア案内所までは最短ルートで攻めることができる」
「サーティーンプリンスターってのが直々に攻めてきてるらしい。相当な力の持ち主みたいだ」
ただでさえあそこ一帯の守備は他の場所よりも用心してうちでも指折りの冒険者を配置したがやられたということだろう。
「こうなったら俺が……」
「いや、ヴィオネット。お前はここで他の冒険者たちへの指示を続けるべきだ」
「だが、それでは」
「俺がカレンデュラ神殿に向かう」
「……は!? お前、そんなことしたら」
「あはは、いや、流石に戦いはしねぇよ。とりあえず現場がどんな感じかを偵察しに行くだけさ」
こいつまたへらへら笑いやがって。
「本当に任せていいのかディノリア?」
「……あぁ、近くの冒険者には声を掛けてきた。そいつらと一緒に行くから大丈夫だ」
「……でも、万が一のことがあったら」
「俺のこと心配してくれているのか?」
「は!? ち、ちげーよ。ただ、お前だってここにいないと……こまる、人間の、一人……」
ディノリアは俺のその言葉に口を開け顔を赤らめた。
「ヴィオネットからそんな言葉が聞けるなんて」
「うううう、うるさい。さっさと行け!! 事は急を要するぞ!」
「あぁ、分かった。必ず戻ってくる」
「……必ず、戻って来いよ」
「あぁ」
あの時のディノリアの清々しいまでの笑顔、あの時のいつもとは違う頼りがいのある大きな後ろ姿。もっとよく観察しておくべきだった。
そこから一夜が明け。
グローリア案内所にいたレミアと俺に驚くべき一報が届いた。
「ヴィオネットさん、レミアちゃん!!」
「あなたはカレンデュラ神殿前の守備を任せたパーティーの……」
「何があった?」
カレンデュラ神殿はここからの距離はそう遠くはない。もしかしたらディノリアたちのことか。
朗報ならよいのだが……。
「朗報です! 魔王軍が……魔王軍がデンバード山脈から引いていっています」
「え!?」
「何……?」
どういうことだ……? なぜこのタイミングで。
「何を見た?」
「俺が夜が明けて守備に戻ろうとしたき、カレンデュラ神殿を占拠していた魔物どものが神殿内からぞろぞろと出始めてきました」
「……こちらに攻めてきたと?」
「いえ、それが大量の物資を運びながら山を下っていったんです」
「なんだって……?」
何があった……いや、確かに朗報だがそれではこの侵攻は何のために。
ここを攻め落としてデンバード山脈一帯を占拠するのが奴らの目的ではなかったのか?
「……ディノリアは……? おい、ディノリアはどうした!? カレンデュラ神殿に数人の冒険者と共に向かったはずだ!」
俺は柄にもなく慌てふためき、その冒険者の胸ぐらを両手で強く掴んだ。
「ちょっ、ちょっとく、苦しいです!!」
「姉さま落ち着いて!」
取り乱した俺の姿を見たレミアは必死に俺を抑えてくれた。
「す、すまん。それでカレンデュラ神殿の中は……?」
「ゲホッゲホッ。それが、ディノリアさんはいなかったんです」
「は?」
「中にいたのは、というよりあったのはズタボロにされたその数人の冒険者の死体。のみだったのです」
「その死体の中にディノリアの死体は……?」
「いえ、発見できませんでした」
「姉さま。もしかしたら危険を察知して先に逃げたのかもしれません」
「えぇ、自分もそれが可能性として一番高いと思います。魔王軍は山を下っているといってもまだ近くを行軍しています。それが退いてからきっと帰ってくるはずです」
「……そうだな。あいつがそんな簡単にやられたりなんかするものか。俺が鍛えたんだぞ」
「姉さま」
今思うと今すぐにでも探しに行きたいという気持ちが表情に出ていたのだろう。
レミアは俺の顔を心配そうに眺めていた。
「姉さま。ディノリアさんはきっと帰ってきます。被害報告をまとめましょう」
「……そうだな。あいつのことだ。きっとすぐに戻って……」
しかし、魔王軍が完全にデンバード山脈から撤退を完了させても、ディノリアは帰ってこなかった。
いつか帰ってくるだろう。
最初の数日はそう信じ続けていた。
次の日も、その次の日も、その先も。
それでもディノリアが戻ってくる気配は一向にしなかった。
結局俺が最後に見たのはあいつの気持ち悪いほどの清々しい笑顔と後姿となってしまった。
「はぁ、はぁ、はぁ。お前を最後に見たのはあの時の後姿だったはずだが、どうして感動の再開のはずがこんな形でしかも魔王軍となったお前と対面しているんだろうな」
「さぁな。だが俺は感動しているぞ。今お前とこうして対等に戦えていることを。はぁ!!」
「ぐっ!」
ディノールの拳がヴィオネットの脇腹をえぐる。
「どけ、ヴィオネット!! うらぁ!!」
ウルカヌスの炎を纏ったクオードの檄がディノールの腕を切り裂く。
「くっ。クオード」
「忘れてもらっちゃ困るぜ、俺のこともな!」
「ちっ。流石にクオードとヴィオネットの二人を相手にするのは骨が折れる」
「はっ、じゃあどうする。逃げるか!? あぁ!?」
クオードが檄を振り払い挑発した。
「ふー。さて、どうやったかな。たしかこのような感じか」
<バーサーク!! アナザーフォーム!!>
「「な!!」」
ディノールの漆黒の龍の鱗が全身を鎧のように包み込んでいった。
「うそ、だろ。それは俺が何年もかけて作り上げた……」
「ヴィオネット。俺はもうお前より強い」
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第十三章 二十七話 いかがだったでしょうか?
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